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『ん? お? ああー、君がフジ・ミノリかな?』

『あ?』

 一度目の虫垂に呼び出された不二美祈が最初に見たのは、化け物でもA.D.でもなく、自分の使い魔であった。

 美祈の前に現れた使い魔は小さなネズミである。そのネズミは美祈を見上げて、口を開いた。

『ああー、なるほど。そうか、そうか。君の願いは――――』

『気持ちわりぃ』

 美祈はネズミを踏み潰した。



 病院のベッドから見る空の城は途轍もなく遠く感じられた。美祈は自分の傍に座る種田を見遣り、息を吐く。

「何? ゆーうつそうだね」

「嫌なこと思い出したからな」

 美祈は、自分の使い魔を踏み潰して殺したことを今になって後悔していた。あのネズミはあの時、何を言おうとしていたのかが気になっていた。

「ねえ、さっきの子さ、あそこにいるの?」

 種田は空を指差す。美祈は小さく頷いた。

「ふーん? ねえ、もしかしてさ、今までもそういうことやってたん? あの子も、あんたも」

「まあ、そうだな」

「ふーん。そっか。よく分かんないけど、あんたたちが守ってくれてたんだね」

「別に。やんなきゃやられるってだけだ。それに、あたしはお前をぶっ殺そうとしたんだぜ」

 美祈は自嘲気味に笑む。

「あー、そうなん? じゃ、殺さないでくれてありがとね」

「……変なやつ」

「で?」

「あ?」

「あんたはもうやんないの?」

 美祈は言葉に詰まった。やれ。そう言われても彼女の足は治っていない。否、元通りそのままなのだ。そうあるのが当然のように美祈の足はまともに動かない。A.D.になってから動いていた方がおかしな話だったのだ。

「あたしは」

 不甲斐ない足を撫でる。美祈は重い息を吐き出した。空が蠢き出したのはその時であった。種田が空を指差して立ち上がった。

「なんか、黒い……?」

 種田に倣い、美祈も空を認めた。雲間の城が震えているように思えてしようがなかった。

 城からは黒い点のようなものが飛び出ているのが分かった。美祈にはその正体が化け物であるとすぐに分かった。スイカたちが押し留めていたのだろうが、その全てを抑えられなかったのだろう。

「種田。すぐにこの街から離れられそうか?」

「ええ? なんで?」

「化け物がくんだよ。この街に降ってきてんだ」

「……化け物?」

 美祈は頷く。種田は困ったように笑った。

「いやー、無理じゃない? なんかもう間に合わないっぽいんだけど」

 黒い点は少しずつ大きくなる。化け物が近づいてきているらしかった。種田は気丈に振舞っているが足が小刻みに震えていた。悲鳴は聞こえない。激しい物音も聞こえない。しかし終わりは確実に忍び寄ってきている。そのことが分かっているから種田は震えているのだ。

「出来る限りでいいから逃げてくれ。そんで、さっきのスイカってやつの家族と一緒に逃げてくれりゃあ、あたしとしても助かるんだけどよ」

「あんたは、どうすんの?」

「ここにいるよ、あたしは」

 種田は眉根を寄せた。

「ここにも来るんでしょ、その、化け物。じっとしてたら殺されんじゃないの?」

「あたしはいいから、お前は逃げろ」

「いや、さすがに。死んじゃうかもしんないってやつを見捨てるのは無理なんだけど」

「あのなあ、お前は……あ」

 美祈の目が驚愕によって見開かれた。窓の外に、化け物がいた。巨大な鳥の姿をしたそれは、室内にいる美祈たちを獲物として見定めていた。

 逃げろ。美祈はそう叫んだ。

 だが、種田は両手を広げて美祈の前に立つ。彼女を庇うかのような所作であった。


 ――――なんでだ。


 美祈は自問する。

 種田はA.D.ではない。ただの人間だ。

「なんでっ、お前は……!」

 殺してやりたいと思った人間だ。お前もそうではないのか。美祈は心中で種田に問いかける。

「たぶん私も素直じゃないんだよね」

 種田は泣き笑いの顔で美祈を見た。

 死ぬ。死にたくない。

 どうしてだ。なぜだ。

 嫌だ。自分はまだ――――。

「あたしの願いはまだっ、叶ってねえのに……!」

 鳥の化け物が嘴を上下に広げた。闇のような口内にはぎざぎざの歯が並んでいる。得物を磨り潰す為のものだ。

 

『後悔しているのかい』


 美祈はハッとした。この極限の状況下で聞こえてきた声を、とてもではないが幻聴とは思えなかった。

『安心しなよ。僕は死んでない。君が死なない限り、僕は僕のまま君の傍にい続ける。そういうものなのさ、僕たちは』

「お前は」

 そうさ。声は答えた。

『フジ・ミノリ。君は自分の願いにようやっと気づいたんだね』

 美祈は心の底からそうだと言えた。今、初めて彼女は自分の願いを。自分の心を。自分という存在を認めることが出来た。

 その瞬間、美祈の体が変わる。

 動かなかった足は時間を巻き戻したかのように動き、美祈の着ていた服は光の粒子と成り代わる。次いで一秒にも満たない時間の後、彼女は新たな服をその身に纏っていた。

「お、あああああああああああああああっ!」

 拳一つ。

 パンチ一発。

 それだけで、鳥の化け物はもんどりうってひっくり返る。反転した化け物は中空で飛行体勢を維持することも出来なかった。

 美祈はぐちゃぐちゃになった窓枠に足をかけ、化け物に向けて掌をかざす。彼女のそこから砲弾が射出され、化け物の翼や胴を抉った。血飛沫を撒き散らしながら、化け物は絶命する。

「……ああ、そうなんだ」

 美祈の後姿を見ていた種田は頬を緩ませた。

 虎と、龍だ。

 美祈の服装は入院着ではなくなっていた。彼女が着ているのはチャイナドレスであった。深いスリットからは生足と眩しいばかりの太ももが覗いている。

「趣味わる」

「動きやすいからいいんだよ」


『ここは一人きりで自分と向き合う場所なんだ』


「……ああ、そうだったな」

 美祈は、自分でも気づかない内に虫垂という世界を、A.D.という存在を拒み続けていた。それは自分と向き合えなかったことと同義であった。

 しかし今、彼女は自分の願いに気づけた。自分という存在と向き合えた。その証明が今着ている服である。日常を脱ぎ捨てて異常を身に纏うことが、A.D.である為の条件の一つだ。美祈はようやくA.D.になったのかもしれなかった。

「そんじゃあ、まあ、行ってくる」

「行ってくんの? ホントに?」

「バケモンはまだアホほどいやがるからな。ここで大人しくしてろよ」

「あー、うん。そうするしかないって感じがする」

 よし。頷き、美祈は目を瞑って手をかざす。今から生み出すものをイメージしたのだ。窓の外、中空に現れたのは車椅子であった。彼女はその椅子には座らず、立って乗る。落ちることはない。

「あたし一人じゃあ飛べねえけど、こうすりゃ飛べる。飛べるって信じてる」

 自らへ言い聞かせるように口にする。美祈は車椅子の上に乗り、空の城を、そこから湧き出てくる化け物どもを見据えた。ここは人の世界だ。星の穢れが闊歩していいような世界ではない。



 病室の窓から見えるのは、城と、化け物。それから――――。

「……ああ、なんだ。今はそういうことになってるのか」

 少女は目覚めて、起き上がる。体に不調はない。長い眠りに就く前と同じく、万全とも言える状態であった。

「しかし、キンパツちゃんは変わったね」



 美祈の能力は痛覚を遮断することではない。欠損した部位を回復することでもない。それらはあくまで副産物に過ぎない。彼女の真の力は自分の世界を修復することである。

 彼女の足は現実だ。親に虐待されたという証だ。だから自分では上手く認識出来ていなかっただけで、美祈は虫垂で足を治すことに拘っていたのである。綺麗な足を取り戻すことによって、在りし日の思い出を、家族を取り戻したかった。

「我ながら甘っちょろいぜ」

 今、不二美祈の世界は元に戻り始めている。それは、彼女が望んだように世界が回るということに近い。故に、城から溢れた怪物は主の許に戻り、地上に蔓延ろうとしていた穢れも空に還る。美祈がそう望んだからだ。それが当たり前だと思ったからだ。

 ただ、それだけではない。彼女の力は、彼女らにとって有益なものを生み出していた。……尤も、美祈がそのことに気づくことはなかったのだが。



 車椅子が空を往く。美祈は、近づいてくる化け物を相手取りながら地上を見下ろした。彼方此方で轟音と閃光。時折、爆風が起こっている。戦っているらしい。地上にもA.D.が残っているのだ。そのことが、美祈に勇気をもたらした。

 ぺろりと、舌で唇を舐める。空の城までもう間もなくだ。美祈は剥き出しになった足を掌で叩き、気合を入れた。



 空の城、玉座の間に残っていたA.D.たちは事態が僅かなりとも好転したのを感じていた。外に出ていったはずの化け物が、何かに恐れるかのようにしてこの場に戻ってきたのである。化け物の主たる、林檎の姿をした少女は目を丸くしていた。

「……どうやら外で何かがあったらしいな」

 シィドが言う。スイカは頷いた。

「あいつにだけ集中出来るってことだね」

 スイカは箒の柄の上に乗り、好戦的な笑みを浮かべる。彼女の傍にいた李は息を漏らした。

「他にも化け物がいるんですけど」

「それは友達に任せるよ」

「良いように使われてる気がします」

 嘆息する李を尻目に、スイカは中空を駆ける。彼女と林檎の間に黒々とした触手が出現した。それはスイカの記憶にも新しい化け物――――石毛瑠子の一部であった。

 触手に触れられれば力を吸われる。床から次々と現れるそれを避けながら、スイカは剣を生み出し、上から林檎に斬りかかった。

 林檎はスイカの剣を素手で受け止めて、薙ぎ払う。スイカは吹き飛ばされて壁面に叩きつけられた。体勢を崩した彼女に触手が群れて向かう。

「飛ぶA.D.をっ、断割彗架の援護を!」

 李が声を荒らげる。彼女の声に他のA.D.が応えた。他の少女らも分かっていた。自分たちでは林檎に及ぶべくもないと。アレに対抗出来るのは現時点ではスイカ以外にない。

 A.D.の攻撃によって触手が削られていく。無論、触手に囚われてしまう者もいた。だが、この場に残ったA.D.は無能ではない。自力で脱出し、化け物どもに対して執拗な攻撃を加えていく。

 起こる爆発。逆巻く衝撃。断続的な閃光が皆の視界を焼く。その中をスイカがぶ。

「やり方を変えるのだ、スイカ」

 剣戟の間隙、シィドが提案する。スイカは林檎の魔力を捌きながら口を開く。

「たとえばっ」

「そうだな。落としてみるのはどうだ」

 スイカは林檎のいる地点を認めた。床を見据えて、視線に力を込める。それだけで大穴が開いた。林檎は呆気なく落下し、暗がりの中に吸い込まれていく。すぐさま彼女の後を追おうとしたスイカだが、穴から伸びてきた触手に阻まれる。

 壁。別の床。天井。三か所に気を配ったが、その全てから触手が伸びた。

「……ちょっと、シィド」

「失策だったか。外から攻撃されているらしい」

「バカシィド! 逃がしちゃってどうすんのさ!」

 スイカが叫ぶ。パイナップル頭のA.D.は地面に手を当てて耳を澄ませた。

「右っ、ええと、スイカちゃんだっけ!? 君の右にいる!」

 少女に言われるがまま、スイカは掌を右方へかざす。同時、彼女の掌から極大の鉄球が放たれた。それは壁に激突し、穴を開けて破片を撒き散らす。その中に林檎の姿があった。

 林檎を守るかのように触手が伸びるが、それらは鹿猫揚羽の一撃によって粉砕された。露わになった林檎に向けて、A.D.たちの飛び道具が一斉に射出される。

 着弾。上がる砂煙。見えなくなる林檎に向かってスイカが駆ける。その時、彼女の小指に何かが絡みつく。

「スイカちゃん。友達だもんね。二人はきっと、そうやって離れない」

 煙の中から林檎の声がした。スイカは自分の小指に絡まっているものを認識した。赤い糸だ。彼女はその糸ごと、自分の指を千切って捨てる。そうして新たに指を再生し、眉根を寄せた。

「気持ち悪い」

 煙が震えた。瞬間、そこから光が差し込む。スイカは避けられなかった。胸に一撃を受けると、そこには穴が開いている。声を上げようとも喉にも穴が開いていて、湿った咳が漏れただけに留まった。

 スイカは見た。林檎の腹に鏡がある。肉の中に埋め込まれたそれは、A.D.たちの攻撃を吸収し、反射したらしかった。

「あっ、ハハハ! アハハハっ!」

 林檎の笑い声と共に乱反射する鏡から光線が舞い踊る。灼熱じみた光は玉座の間のA.D.を悉く焼き尽くす。彼女らが再生する端から焼いていく。逃げ場などなかった。

「私の後ろに!」

 逃げ場などない。李は立ち向かうしかないことを分かっていた。彼女は再生しながらも巨大化の能力を使い、皆の盾となった。スイカは躊躇しない。李の後ろに逃れて肉体を再構成する。

「う、ぐうううううああああああああああああああああ!!」

 李は光線を浴び続ける。魔法陣を展開する余力はないらしく、肉体を維持するのに精いっぱいといった有様であった。

 他のA.D.も体勢を整えるが打つ手がない。李の陰から出ても光線を浴びて焼かれるだけだ。


「スイカァ――――!」


 手詰まりの状況下、大音声が天から降った。

 スイカたちは空を見上げる。そこにはチャイナドレスのA.D.がいた。不二美祈であった。彼女は林檎の攻撃で焼かれるが、この場にいる誰よりも、それこそ穢れの王、林檎よりも再生能力に優れている。焼かれながらも攻撃体勢を崩さず、決して怯まない。

「死にやがれェ!」

 美祈の飛び蹴りが林檎の腹に突き刺さる。彼女の腹に埋め込まれていた鏡が割れて、光線の勢いが数段弱まった。

「美祈ちゃん!」

「こいつを! あたしごとぶっ殺せ!」

「分かった!」

 スイカが地面を蹴り、宙に飛び上がる。彼女は中空で加速し、空気の壁を突き抜けた。迎撃の為に触手が伸びるが、スイカを捕まえられるモノはいなかった。

 スイカはイメージする。殺すことを。殺すものを。

 シィドの感覚が歪む。スイカの感情が、思考が、次々と流れ込んでいるのだ。

「剣を。鎌を。刃を。断頭台を。斧を。太刀を。銃を。銃弾を……」

 中空に剣が生まれる。シィドは思いつく限りの『殺すもの』をスイカに伝えた。あらん限りの凶器が現れて林檎を襲う。彼女は逃れようとするが、美祈が掴んで離さない。

 スイカの放出した凶器イメージは標的の急所だけを狙い続けていた。

「アアっ、イヤ! イヤだ! スイカちゃんはそんなのイヤだ! そんなことしないでよ!」

「うるせえぞ!」

 美祈は悲鳴を漏らさなかった。それどころか、体を再生させながら林檎の顔面を殴りつける。

「クソがキリがねえ! もっとエグいのを出せ!」

「じゃあ退いて!」

 のけぞるようにして美祈が退く。林檎の体が自由になったが、スイカは彼女が反撃するよりも早く、巨大なぬいぐるみを生み出す。茶色いテディベアだ。それは林檎の体をぎゅっと包み込み、慮外の膂力で締め上げる。ばきべきと骨の折れる音が鳴り止まない。テディベアは林檎を抱いたまま、壁を蹴って跳躍し、天井に空いた大穴から外に出る。そうして呆気なく、何の前触れもなく爆発した。

「……スイカ。アレに何をさせたのだ」

「自爆させた」

「そうか。……いい手だ」

 テディベアと、林檎だったものの残骸が雨のように降ってくる。スイカは降ってくるそれを鬱陶しそうに手で払った。が、林檎はまだ絶命していない。破片の状態ながら笑い声を上げて攻撃をしてきた。

 数百を超える林檎の欠片がそれぞれに声を上げて、玉座の間にいるA.D.にエネルギーの弾丸を撃った。一つ一つの威力は大したことはなかったが、A.D.らに残っている体力、精神力を容赦なく奪い取る。


「あ、ハハハ……!」

「ハハハハハッ!」

「ああああああああああっ、スイカ! スイカちゃん!」

「友達だった! 友達だったのに!」

「どうして! どうして!?」

「どうして私を見捨てたの!?」

「どうして私を見殺しにしたの!?」

「どうしてスイカちゃんだけ助かったの!?」

「そんなの」

「そんなの絶対」

「許せない」

「そんなの絶対に許せない!」


 特にスイカに対する攻撃は執拗を極めた。執念深いそれは歪な愛にも近かった。

 スイカは攻撃を防ぎ、避けながら隙を窺う。しかし状況は変化しない。彼女の力だけが削がれて抉られていく。殺す力が奪われる。

「……どうして、どうして、どうして……?」

「スイカちゃん! スイカちゃんがいけないんだから!」

 だが。

「どうして、見捨てたかって。そんなん決まってるじゃん」

 生きる意志までは奪えない。

 スイカは林檎をねめつけた。

「友達だからだよ」

 その言葉を受け、林檎たちが動きを止めた。スイカは尚も続けた。

「わたしの友達だから見捨てたんだよ」

「……スイカ、ちゃん?」

「わたしの友達はわたしの足を引っ張らない。わたしの友達はわたしを助けなくてもいいんだ。ただ、わたしの隣にいられる人ならそれでいいんだ」

 ぴきり。ぴきり。

 空気が凝って空間が歪む。

「そうでないなら、わたしの友達じゃないから」

 絶叫が周囲に迸った。それは裏切られた者の慟哭か。あるいは――――。

「アっ、ハ! スイカちゃんが言ってくれた! 私をっ、私を! 友達だって!」

 林檎の体が一所に集まって、四散した。膿のような肉からは化け物が産声を上げる。化け物は皆、啼いていた。

 A.D.たちは慄いた。これまでにない数の化け物が出現したからだ。削りに削られた力で対抗出来るかどうか……誰もが己の行く末を悟った。

「心配すんなって」

「……何が」

 スイカの隣に美祈が立って、そのすぐ傍に李がいる。スイカは彼女らの方を見ようともしなかった。

「この状況が結構やばいってのは、わたしにだって分かるよ」

「鈍いな、お前。紛れて来てる。あいつらがな」

 美祈は口の端をつり上げて笑った。強がっているような笑みではなかった。



 穢れは地球に戻れない。

 星のゲートを通って虫垂に流されて、A.D.に駆除されるのを待つだけだ。穢れに取り込まれた者も同様だ。一度穢れたのならば門を通って地球に戻ることはない。

 だが、今は違う。ここは違う。

 ここは地球でも虫垂でもない。この城は、この玉座の間は別の世界だ。地球と虫垂が、日常と非日常が入り混じった世界だ。

 故に。

 穴は開く。

 隙は生まれる。

 鍵はなくとも僅かな綻びから門は開く。



 一番最初に気づいたのは美祈だった。彼女は別に、何かを狙ってやったわけではなかった。ただ、自分の能力がこの場においても機能しただけだ。

 美祈に次いで気づいたのは林檎である。彼女は忙しなく周囲を見回していた。

「行くぜスイカ、スモモ。あたしとはぐれねえようについてこい」

「どうすんの?」

「何がどうなったって、誰がどうしたって、やるこたあ結局のところ変わらねえ。だろ?」

 美祈は、部屋の中央にいる林檎を指差した。スイカと李は彼女の問いに頷いて返した。

 三人は同時に地を蹴った。前方からは大口を開けた、巨大な魚が迫る。美祈はその化け物を殴って、蹴り飛ばした。

 魚の背後からは別の化け物が走り寄る。スイカと李はエネルギーの弾丸を放ち、化け物を粉砕した。

 地を蹴る。駆ける。駆ける。

 前方。斜め前。壁面。足元。数え切れない箇所から触手が伸びる。

 一瞬間、スイカと李は足を止めかけた。スイカに至っては一人だけ箒に乗って中空へ逃れようとした。

 だが、そうはならなかった。

「ほうら、戻ってきやがった」

 立ち並ぶ触手。その内の一本が内部からの爆発によって砕けた。スイカたちはその爆発を通り過ぎて駆け抜ける。

「来たって、誰が」

 美祈は背後を指し示した。

 黒々とした触手の中から這い出るようにして現れたのは、返り血に染まった天使である。スイカは彼女の存在を認めて、流石に目を見開いて驚いた。

「……夢みたい」

 もう会えないと思っていたから、スイカの目から涙が溢れてきた。彼女自身にさえ制御出来ないそれが、頬を伝って地面に落ちる。李はふと、鬼の霍乱という言葉を思い浮かべた。

 スイカたちは立ち止まることなく駆ける。彼女らの後姿を認めて、天使は微笑を湛えた。

「だっ、スイカ、ミノリ! スモモも! ちょっと待ってくれてもいいじゃないか……」



 触手が立ち並ぶ。

 だが、その内の何本かは霧散、爆発、四散する。それをしたのはA.D.だ。捕えられていたA.D.だ。……かつて石毛瑠子は星の穢れと同化した。彼女は穢れの力を使い、A.D.を吸収した。

 吸収されたA.D.は死に絶えることのないままに穢れの中に閉じ込められていたが、完全に混ざる前に彼女が死んだ為、混ざり合うことはなかった。しかし捕えられていたA.D.は今の今まで抜け出せなかった。

 何故か。虫垂にいたからだ。そこにいる限り穢れは穢れでしかない。そうとしか認識されない。A.D.とはいえどうすることも出来ない。だが、今は違う。ここが虫垂――――星と地球の混ざり合った場所であるが故に、不二美祈の『自らの世界を復元する』能力により、隙が生じた。玉響にも満たない時間で、もう二度とは訪れることのない機であったが、A.D.はその機を掴んだ。

 A.D.たちはこれを奇跡と呼ぶかもしれない。

 しかし奇跡とは違う。魔法が行使されたのでもない。この場にいる少女たち自身の力によるものだ。各々の信じる『自分』という存在がそうしたに過ぎない。



 光の線が玉座の間に奔る。その線に触れた者の手足が消し飛ぶ。少女たちの悲鳴と怒号。鮮血が散って血煙が上がる。

 林檎は笑いながら、くるくると、踊るようにして床を踏む。彼女の動きに合わせるかの如く化け物どもも動いた。

 一ミリ先が地獄か、一秒先が死か。分からないままスイカは戦い続ける。

 スイカは光線を掻い潜って中空を往く。活路を見いだせない。ならば自らの手で切り開くのみ。

 加速するスイカに光線と化け物の腕が追いすがる。頬を掠める獣の爪牙も気にはならなかった。彼女は軌道を変えて真上から林檎を襲撃する。渾身の体当たりは空を切り裂いて玉座の間の床を粉々に砕いた。

 林檎は、攻撃を空ぶったスイカの服を掴んで床に叩きつける。スイカは内臓が潰れて血を吐きながらも意地悪い笑みを作ってみせた。

「つかまえた」

「アッ――――ハ……!」

 シィドが糸を伝ってスイカから離れた。彼女は即座に重力の力を使う。自分諸共林檎を潰す勢いだった。体中の骨が軋み、柔らかな部位は苦痛を訴える。

「こ……ろして。ころして。ころしてっ、こいつを! こいつを殺してええええぇえええええええええええっ!」

 スイカの、悲鳴にも似た訴えを聞き届けたシィドが、A.D.に向けて叫ぶ。

「ここしかないぞ!」

 シィドは玉座の間の天井付近に陣取り、部屋中を見回した。

「この機を逃せば先はない! これで最後だと心得るのだ! タチワリ・スイカが押さえているのはかつてない力の穢れだ! これを除けば君らは解放される! 元の世界に戻られる! 君ら自身の手で生還を勝ち取るのだ!」

 化け物を相手していたA.D.たちは、それらを片づけて、打ち斃して、応と叫んだ。

 スイカの体から力が抜ける。彼女と林檎、二人を捕らえていた重圧が弱まり、林檎がその場を脱する。

「死ぃぃぃねええええええええ!」

 ざん、と。林檎の後背に回っていたA.D.が彼女の右腕を斬り落とす。そのA.D.は即座に反撃を受けて四散するも、パイナップル頭の少女が取りついた。次いで爆発が起こる。取りついた少女が至近距離で何かを爆発させたのだ。その少女は力尽きて落下し、体を強かに床にぶつけて動かなくなる。

 ダメージを受けた林檎も落下するが、体勢を立て直して着地した。そこに巨大な槌が迫る。揚羽の一撃だ。彼女のそれは林檎の頭を上から圧し潰す。が、すぐに再生されて、揚羽の両腕が消えて失せた。

「……また」

 右。復活したオリヴィア。

 左。車椅子に乗って飛行する美祈。

 左右から迫るA.D.を認めて、林檎は口を大きく開いた。口内から化け物の手が伸びてオリヴィアの体を掴む。彼女は掴まれている部位を自らで切り離し脱出し、化け物の腕を両手で握り締める。

 オリヴィアに引っ張られて林檎の動きが止まった。美祈は彼女の顔面を殴りつけると、車椅子から降りて接近戦を挑む。林檎は無表情だった。

 獣のような吼え声を放ちながら、美祈は林檎を殴り続ける。化け物を駆逐したオリヴィアも美祈に加勢した。だが、林檎はその場に固定されたかのように動かない。何度殴られてもびくともしなかった。

「アァ……! アァアアアアアアアアァァァ!」

 林檎の平手打ちが美祈の頬に突き刺さる。彼女の顔半分が弾けて飛んで、すぐに巻き戻ったかのように再生する。オリヴィアは闘牛士が使うようなエストックで林檎の頭部をぐりぐりと抉る。すぐに巻き戻ったかのように再生する。

「糞がっ、キリがねえって!」

「ミノリだめだっ、離れろ!」

 林檎の腹と背から人間の腕が生えた。計六本。その内の二本が美祈の拳を掴み、別の二本が彼女の頭を掴んで握り潰した。

 オリヴィアは頭を失くした美祈の胴体を抱いて逃げようとしたが、林檎の腕が彼女の足を軽く千切る。二人は床に転がった。

「いけぇぇぇぇナツゥゥゥ!」

 しかし、その隙を蔵加夏の泥人形がカバーする。林檎の足を掴んだ泥人形は一秒後に霧消するも、李が巨大化するだけの時間を生み出していた。

 巨大化した李は剣を振るって、その場で一回転する。林檎だけでなく、周囲にいた化け物も壁も彼女の一撃で薙がれた。

 上半身だけになった林檎は腕を伸ばして、床に倒れたスイカを見る。その時、林檎の眼球に一本の矢が突き刺さった。黄金色の矢を射たのは城の外にいた来光雫である。A.D.として再起し、病院から城まで来ていたのだった。

 矢は刺さった。

 下半身は斬り飛ばされた。

 だが死に絶えてはいない。

 林檎はよろけながらも、スイカのもとへ歩こうとした。四方からA.D.の攻撃が間断なく襲い掛かる。彼女は喚きながら、何度でも起き上がってくる少女らを粉砕した。



 スイカが入城してから、どれほどの時が経過しただろう。

 城の周りの空間が、歪み始めていた。長時間に及ぶ戦いの末、林檎は、城の維持が難しくなるまでに力を消耗していた。



「スイカ。……スイカ」

 使い魔の声で、スイカは意識を取り戻す。彼女は自分が立っていることに気づき、目の前に林檎がいることに気づき、自分以外には誰も立っていないことに気づいた。激しい戦闘でほとんどの者が力尽きたのだ。

 玉座の間はボロボロで、荒れ放題だった。もう修復されることはないのだろう。それだけ林檎の力が失われているのだ。

 スイカの右目を何かが覆って塞いでいたので、彼女はそれを手で払った。ぼとりと音を立てて地面に落ちたのはシィドの前脚だった。

「……シィド?」

 シィドは前脚一本だけを残して消えていた。彼の眼も、いつも伝って降りてくる糸も、たくさんあったはずなのに、もうどこにも見当たらなかった。

 ああ、と、スイカは息を吐く。思い出したのだ。シィドが自分を庇ったことを。林檎の攻撃を受けて、脚だけ残してくたばったことを。

 悲しくはなかった。ただ、胸にぽっかりと穴があいたような喪失感を覚えていた。次に疑念が湧き上がる。何故、シィドは自分を庇ったのか。スイカにはそれが分からなかった。

 悲しくはなかった。シィドの仇を取ってやろうとは思わない。だが、だが――――この体を震わせているのは何だ。細胞が。血が。心が。魂が。断割彗架を構成する要素全てが震えているのは何故だ。

「スイカ、ちゃん……」

 目の前の何かが口を開けて音を発する。

「その蜘蛛、何? 友達なの?」

 スイカは、ふと顔を上げた。高都林檎の姿をした化け物がいた。彼女の腕はちぎれかけて、顔の半分は潰れている。もはや自身を回復するだけの力が残っていないのか、回復することに頓着していないのかもしれなかった。

「友達……?」

 シィドの残骸を見下ろして、スイカは息を吐く。

 これは自分にとって何だろう。友人か。敵か。隣人か。

「違うよ」とスイカは林檎を見据えた。

「これもわたしなんだ」

 この場にシィドがいたなら、彼は狂喜していたことだろう。今、スイカには前例のないほどの力が溢れつつあった。

「ねえ、スイカちゃん」

 林檎がよろよろと近づいて、手を伸ばす。スイカは彼女の手を払った。

「わたし、心のどこかで手加減してたんだと思う。どうにかしなきゃいけないやつだって分かってたはずなのに、林檎ちゃんの顔してたからあと一歩だけ踏み込めなかったんだと思う。でもね」

 林檎は小首を傾げた。

「わたしに触るな。化け物」



 一陣の風が吹いた。

 林檎は目を開ける。体の自由が利かないことに気づいて、彼女は視線を巡らせた。

 ここは玉座の間だ。だが、先とは違う。床も、壁も、天井も、玉座も壊れてなどいない。荒涼としていた空間ではなくなっていた。真白で真新しい。窓は一つもなく、妙な圧迫感は牢獄のようで、漂う厳粛さは礼拝堂にでもいるかのようだった。華美な装飾品は一つもなく、ここにあるのは鉄で出来た玉座だけだ。

 声を発することは出来ない。

 こつん。

 かつん。

 玉座に座る人物が、持っている箒の柄で床を叩いた。

「……スイカ、ちゃん」

 スイカは玉座から林檎を見下ろしている。

 こつん。

 かつん。

 スイカは何も言わず、床を叩く。

 林檎はスイカに駆け寄ろうとしたが、前方を二対の長物によって塞がれた。その長物は林檎の首を引っかけて、彼女を無理矢理に跪かせる。

 中身のない西洋の鎧が林檎を見下ろしていた。そのうろに睨まれた林檎は息を呑む。

「ここは、何なの?」

 スイカは足を組み替えて頬杖をついた。

「ねえ、スイカちゃん。私のお城は?」

 スイカは答えなかった。……以前、スイカたちは奇異な場所に呼び出された。鹿猫揚羽の記憶や感情に引っ張られて作り替えられた虫垂である。今回の城もそうだ。星の穢れによって創り上げられた場所である。そうして、今の真白で、質実な玉座の間はスイカが創った。穢れの城をスイカの世界が上書きしたのだ。

「わたしって案外子供っぽかったんだ」

 独り言つとスイカは箒の柄で床を突く。その音を合図に空っぽの衛兵が林檎の首に槍の穂先を突きつけた。彼女は困惑し、涙を流す。どうして自分がこんな目に遭っているのかが分からなかったのだ。

「さようなら」

 スイカの顔面に微笑が張りつく。

 さようなら。さようならりんごちゃん。さようなら罪悪感りんごちゃん。さようなら昔日りんごちゃん

「さようなら。友達だった人」

「イヤァ! スイカちゃ――――」

 ばつん。

 鈍い音がして林檎の首が飛んだ。彼女の首は血を振り撒きながら中空を踊り、落下してころころと転がる。それはスイカの正面に止まると、黒い霧と化して消え失せた。

 スイカは一人きりとなった玉座の間で息を吸い込む。もはや何の感情もなかった。ただ、終わったのだと確信する。

「いるんでしょう。シィド」

 呼びかけの声は反響し、スイカの耳の奥でわんわんと響いた。ややあって、彼女のものではない声が降ってきた。

「ああ。ここに。ここにいるとも」

 いなくなったはずのシィドの声だった。彼は姿を見せないが、口は利けるようだった。

「穢れの大部分は駆除出来た。地球から星に来た穢れだが、後は我々だけでも対処可能なレベルになった。完全に終了した訳ではないが、A.D.の役目はこれで終わったと考えてもらって間違いはない」

「そう」

「君が初めて星に来てから三か月といったところか。よくやった、スイカ。君のお陰で、君の星は平穏を得られたぞ」

 実感は湧かなかった。スイカは冷めた目で玉座の間の暗がりを見つめる。

「これで、終わりなの?」

「ああ、そうだとも。君らの役目は終わりだ」

「そう」

 スイカは押し黙った。沈黙を切り裂くようにして、シィドが玉座の間に声を放った。

「今、この城は君のものだ。ここは貫木のゲートだ。本来は目に見えないが、強い穢れの影響で貫木市の人間にもゲートが見えるようになっている。分かるかスイカ。この城を介して二つの星が繋がっているのだ」

「ここから、穢れが?」

「ああ。どうする、スイカ」

「どうする?」

 スイカは眉根を寄せて天井を睨んだ。

「貫木のゲートを残せば、再びこの地が、この地に住む人間が星に呼ばれるかもしれない」

「ゲートを消せば、もうこんなことは起こらないの?」

「……すまない。それは、無理だ。貫木のゲートを封鎖したところで地球にはまだいくつものゲートが残っている。この仕組みを完全になくすことは我々にも出来ない。ただ、貫木市だけは戦いを免れる」

 だろうな、と、スイカには何となく分かっていた。

「次はいつ呼ばれるの?」

「それも分からない。ただ、君たち地球に住むものの心がけ次第だろうな。穢れが増えれば増えるだけ、またこのようなことが起こる」

「じゃあ、お願い。この城を消して」

「了解した。私の全権限を用いて貫木のゲートを封鎖することを誓おう」

 それからと、シィドは付け足した。

「駆除はいったん終了した。今回の件に関わった者の記憶から、駆除に関しての記憶を消すことになる」

「出来るの?」

「我々はいつもそうしてきた。そうやって我々の星をひた隠してきた。だが、完全にではない。オリヴィアの母のように思い出す人間もいるはずだ。そういった人間が『魔女』だの『魔法』だのを信じて世人に伝えてきたのだろう」

 記憶を消去する。スイカはそのことをすぐに信じた。実際、自分たちもそうやってA.D.として虫垂に呼ばれていたのだ。

「記憶がなくなれば、辛いことを、悲しいことを忘れられる。スイカ。最後の選択だ。君は、どうする?」

「……どういうこと?」

「既に君以外の人間の記憶の消去が始まっている。城で戦っていたA.D.も地上に戻っている。だから、君だけなのだ。君の記憶を消すかどうかは、君自身が選べるという状況にある」

「わたし、だけ……」

 スイカは自分の胸に手を当てて、服をぎゅっと握り締めた。

「私は記憶を消すことを強く勧める。日常に戻るのだ、スイカ。全て忘れられるぞ」

「手を斬られたり、顔を焼かれたり、髪の毛が抜けちゃったりしたことも」

「ああ」

「お父さんが死にかけたり、知ってる人が殺されたり、わたしが化け物を殺したことも」

「ああ。君の手が血で汚れた事実は消えないが、その事実を忘れることが出来る」

 それは、とても素敵な提案だった。スイカにとって魅力的な提案だった。

「美祈ちゃんと会ったことも。オリヴィアちゃんや李ちゃんと出会ったことも。宵町さんや来光さん、色々な人たちと出会ったことも」

「ああ。友達のことも忘れる」

「空を飛べたことも……わたしの願いが、ここでなら叶ったことも忘れちゃうんだね」

「ああ」

「わたしの外の世界で、こんなことが起こってることも。未来で、また戦いが始まるかもしれないことを」

「ああ」

「シィド。あなたと出会ったことも」

「ああ。忘れてしまう」

 長い沈黙が続いた。スイカは天井を見上げたまま、体の力を抜く。

「シィド」

「ん?」

「今までありがとう。『あなたのせいで』って思ったこともあったけど、今だけは『あなたのお陰で』って思えたから」

「そう、か。スイカ。タチワリ・スイカ。こちらこそありがとう。君の口から今の言葉が聞けたのは望外の喜びだ」

「うん。有り難く思ってよね。……じゃあ、シィド。わたしの記憶を――――」

「いや、皆まで言うな、スイカ。君の――――我々の最後の願いを叶えよう」

 スイカのいた空間が歪んで、割れて、変わる。玉座の間は波が引くように消えていき、真っ白な世界が彼女の前に広がった。

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