彼女の幸せの為に悪役になりました。
お久しぶりです!
のんびり書いていたらこんなに遅くなってしまいました。
今回の作品は悪役を主人公としたものですが、ただひたすらに妹の幸せだけを望む姉の姿を書いてみました。
まぁ、実際にはここまでの人はいないと思いますが笑
ジャンル別ランキング2位!?
うぴゃぁぁぁああ!
夢かな?
ぐきゅぅう(頬をつねる)
痛いいいいい!全力でつねりすぎた!!
ブックマーク、ポイント評価……このお話を読んで下さり、とても嬉しいです!
※注意
「あ!ここの世界は乙ゲーの◯◯!?しかも悪役令嬢!?死亡フラグを回避しなきゃ!」
というお話ではありません!
私が小学3年生の時に可愛い可愛い妹、アリアが生まれた。
今までずっと独りぼっちだった私はとても喜んだことを記憶している。なにせ何をするのも独りで寂しかったから……。
1人で食べる夕飯は味がしなかったし、遊ぶとはいっても1人で出来るものは限られているから私はひたすら本を読んでいた。
そんな日々とおさらばできると思うと浮き足立った気持ちであった。
生まれた妹はとても可愛いらしい容姿をしていた。
青空のように澄んだ露草色のこぼれ落ちそうなほど大きな瞳を持ち、影を落とすほど長く天を向いた睫毛は太陽の光を浴びてきらきらと輝く、髪とおなじ金色であった。そして薔薇のように赤い唇と頬をしている自体ですでに可愛いのに物語のお姫様のような可愛いらしい笑顔をこちらに向けたらそれはもう、ノックアウトですよ。
「なんて可愛い子!私のお姫様!」
ぎゅっと思わず抱きしめた。
それからというもの、目に入れても痛くないというほど可愛いがった。周りからオディアンはシスコンと言われるほどに。
─────────しかし、それはもう過去の話。
******
妹が生まれてからちょうど4年がたったとき、とある夢を見た─────。
「ねぇ、貴女はアリアのことをどう思う?」
緩やかに波立っている黒曜石の色をした髪を撫でながら困った顔で私に問いかけた。
黒の髪を持つものは、最高位の神である《グラン》様しかいない。
グランとは全ての神の母であり、それと同時に人類の母でもあるし、動物、植物……つまり全ての母なのである。
なぜ、そのような存在が私の夢の中に……?
そんな疑問を抱えながらもグラン様の質問に緊張で震える唇を動かし、答えた。
「アリア……私の妹でございましょうか……?」
そうよ。
とグラン様は頷く。
「今日は足し算の勉強をしておりました。頑張る姿は誠に可愛いらしくて、可愛いらしくて……もう天使だわ!!と思いましたわ!こんなに可愛いから私は悪い虫が付かないか、心配でしんぱ…」
緊張も消え、つい熱く語ってしまった。
妹について聴かれると、周りが見えなくなってしまうのが私の最大の欠点である。
「ストップ!もう分かったわ!!アリアが好きなのね!もう十分分かったわ!」
手をぶんぶんと振り、少し大きめの声で私の言葉を遮った。
私はまだ喋り足りなかったのだが、しょうがない。
ふぅ。
グラン様は短く息を破棄、続けた。
「それでは物語は成り立たないわ。アリアはヒロインで、貴女は悪でなくてはならない。」
物語……?
言っている意味が分からない。
頭がぐるぐるしてきた。
「そう。ここは物語の世界。ヒロインは悪……つまり貴女に苛められながらも健気に生きるというものよ。そして、ヒ……」
「私が妹を苛めるなんてこと……死んでも出来ません!いくら、最高位の神だからといってそんなことは出来ません!」
私はシスコンだ。
愛する妹にそんなことができるものですか!
ぎっ。とグラン様を睨む。無礼だというこということは分かっていたが、興奮状態にあったので構わず睨んだ。
呆れたように…いや、諦めたように笑ったグランは頭をくしゃくしゃと掻くとオディアンに視線をよこした。その顔は先程とは打って変わってにやりと口は弧を描いている。
「ねぇ、
アリアを想うなら悪役にならなきゃね。主人公は誰からも好かれ、辛いこと、大変なことはあるけれども、将来は幸せであると約束される。
かなりの地位にいて、お金に困らず、性格も良い。さらには顔も良い。そんな有り得ないような男をヒロインならば手にする事が出来る。
これでも悪役にはなりたくないと言える?」
グランは勝ち気そうな笑みでウィンクをした。
こくりと頷いたオディアンを見るとほっとしたように笑い宜しくねと言った。
こうして私は悪役になること決意した。
***********
「ねぇ、貴女はどうしてこうも出来が悪いのかしらねぇ。本当に私の血の繋がった妹なのかしら、ここはこうするのよ。そんなことも分からないのね。なんて可哀想な子。ふふふふふ」
さらさらとノートに綺麗な字で答えを書いた。その際、勿論学校の先生よりも分かり易い説明をする。
アリアはあっ。そっかぁ。と気の抜けた返事をして解答を続けた。オディアンが分かり易い説明をアリアにしているおかげで成績は良好である。勿論オディアンに勝てはしないが。
「いくら、主席だからといってそんな口のききかたはないだろう!アリアが許したとしても俺は許さないぞ!!」
ぎりりと歯ぎしりをして怒る。
アリアのとり取り巻きであるリッシュは超有名ブランド会社であるヴゥルリーの一人息子である。つまりは次期社長である。
この人と結婚したらきっとアリアは幸せになれるだろう。アリアを大切に思う気持ちもある。
この人ならアリアを託せるかもしれない。
けれど冷静に判断する力はだ無さそうだ。いずれ身につくであろう。
けれどまだ分かるには時間が必要だ。どんな人間なのか。本性は……?
アリアのため、神経に見極めなければ。
「リッシュ、落ち着け。オディアンは…ほらあれだ…えーっと、ツンデレだ。」
ツンデレという言葉が出なかったらしく、ツンデレという言葉を思い出した時、ぱぁと晴れやかな顔になった。この人はタンドレス。私達の幼なじみである。
幼なじみのせいか、アリアの取り巻きの中で唯一私にも優しい。
タンドレスは優しいから私にも気を使ってくれる。でも、それでは駄目なの。
嫌ってもらわなくては。いや、嫌うなんて甘い。憎むくらいしてもらわなければ。
物語通りにいけば私は破滅の道を進んでいる。私はいずれ家を追い出される。つまり勘当である。
そんなことになる私を好いていてはいずれ悲しくなるでしょう?だから嫌って。私を……
「お姉ちゃん、これ分かんない!」
顔を歪ませ、指差す問題を見る。
するとそこには赤ペンで問題番号に×印がつき、その下に小さくまだ習っていない。と書いてある。
「ちょっと、これは何かしら?」
はぁと溜め息混じりで呟いた言葉にアリアはあっ。と元気良く驚いた声をした。
てへぺろと舌を出し、頭を軽くコツンとたたく。
これは可愛いから許されるもの。ブスや普通な子は許されない。しかし、可愛いアリアだから眼福だ。
うん。非常に可愛い。
にやにやと歪みそうになる顔を引き締める。
いかにも苛ついているように……
「あなたの頭は飾り物?何故こんなにも分かり易いものを見落とすのかしらね?本当の本当に私の血の繋がった妹なの?くくく」
扇子で口元を隠しながら高らかに笑う。
その姿にリッシュは顔を真っ赤にして怒る。
唇を噛みすぎて血が少し滲んでいるのがわかる。思わずくくくっと素で笑ってしまう。なにせ茹でタコみたいだったから。
勿論それは火に油で烈火のごとく怒り狂った。くくくっ。面白い顔っ!
その笑い方も悪役そのもので、人を蔑んだ笑い方であった。普段悪役の笑い方をすると素で笑っても悪役の笑い方になってしまう。
まぁ、直す必要がないからそのままにしておく。
自分で言うのもなんだけど、それなりに美人な顔だし、日頃の努力のおかげで肌はきめ細かい。目はつり目でぱっちりと大きい。唇は口紅を塗っていなくても真っ赤。
これだけでも悪役感満載なのだが、さらに意識的に悪役感のする言葉を使っているせいか、どこからどう見ても悪役である。
けして主人公にはなれない。ヒロインは妹であるアリア。私は悪。主人公の“試練”という存在。主人公が幸せになるための鍵。
私はいつでも
アリアの幸せを願っているよ。
だって
私の大切なたった1人の妹なのだから───。
私は幾ら嫌われようとどうでもいい。
アリア、幸せになって─────。
妹アリアもお姉ちゃんの事が大好きです。
アリア「お姉ちゃん、何だかんだ言っているけど面度見良いんだよねー!みんなお姉ちゃんの事嫌っているみたいだけど、私は好きだよ!!!だってお姉ちゃん、ツンデレで可愛いしね!」
リッシュ「あの悪魔のどこがツンデレなんだよ!」
タンドレス「アリアが熱出した時の泣きそうな顔」