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『研究所の最深部で生物兵器の美少女発見なう。』

※改行等々若干修正しました。

  ☆1


 皆さんこんちゃっすー。

 俺の名前は竜之神誠たつのかみまこと

 自分で言うのもなんだけど、

 ごくごくフツーの高校二年生だ。

 もちろん男ね。

 期待しちゃった人、ごめんね?

 今はちょっとしたバイト中なんだ。


 ……あ、そうそう、聞いてくれよ!

 最近俺、スマホでつぶやき始めたのよ。

 そしたらわりとウケが良くてさ、

 結構なフォロワーがついたんだ。



 あー。

 そういや、前のつぶやきから

 そろそろ一時間が経つわ。

 忘れてた。なんせバイト中だし。

 就業中とはいえ、

 楽しみにしているフォロワーを

 待たせるわけにはいかないよね。

 新品のスマホでピピピッ……と。



『北米の生物兵器研究所に潜入中なう。』



 俺のつぶやきは電波系で割と有名。

 人気の秘密はここにあるの。

 ウケが良かったのは

『闘牛と喰うか食われるかなう。』

 とか

『妹が宇宙人と交戦中なう。』

 とか、あの辺かな。

『大陸間弾道ミサイルをキャッチなう。』

 ……は、ぶっ飛び過ぎててさすがに黒歴史認定されてしまった。

 面白いと思ったんだけどなぁー。


 お。

 そうこうしているうちにレスがちらほら。




『@MAKOさん、さすがっす!

 スニ―キングミッション頑張って!』

『ヤバスwww

 今日こそ@MAKO死んだwww』

『この人実生活ニートじゃねぇの?』

『つまんね。3点』




 いやあ、賛否あるけど、

 やっぱり反応があるって良いよねー。

 みんな冗談としてそれなりに評価してくれる。バイトでしばらく人と口きいてないから、すげー癒されるんだわ、これが。



 さて……と。

 遊んでばかりいないで、仕事に戻ろう。



「うーん。

 この赤外線センサーの網、

 どう突破したもんかなー……」

 俺が今居るのはテキサスにある、とある軍事企業が極秘に運営している研究所。厳密にいえば、その地下二階の通風孔の中だ。

 俺の今日の仕事は、この先にあるラボからカプセルに入った最新のバイオ兵器を持ち帰る事。埃っぽいしキツイバイトだけど、日当はわりと良いのよ?



 しっかし、ダクトの中にまで防犯設備とは恐れ入るわー。

 赤いフィルムを張ったゴーグル越しに、大量の光線が見える。

 触れたら警報が鳴る、映画とかでよく見るあれだ。ここの人たちはここをネズミが通るたびに大騒ぎするのかね?

 ……まあ、向こうの電撃トラップ近くにネズ公の死体が大量にあった気もするが。



「これじゃあ先進めねぇよな、うーん」

 そう言いながら、俺はスマホでバッテリーを確認する。うわー、あと20%しかない。

 帰りまで持つかな?

「ま、背に腹は代えられないか」

 俺はそう言ってチョンチョンッとスマホをタッチする。



〝光学迷彩アプリ〟をポチっと……。



 すると俺が来ていたスーツが透明になる。

 このスーツは伯父が開発したもので、無数のマイクロスケイルスクリーンと超マイクロカメラでできている。

 スクリーンは常に正反対の情景を映し続けて、ほとんどの光は透過してるも同然。

 フードを被ればほら。

 透明人間になれちゃう素敵スーツ!



 ……だけどねぇ。

 タイト過ぎてピチピチなのが玉にキズ。

 ごくごくフツーの高校生として、

 このスーツは友達に見せらんないわ。



 あともう一つ弱点がある。

 これ、めちゃくちゃ電池喰う。

 スマホに表示された残量がゼロになったら完全にアウト……つまりはもたもたしてらんないってこと。



 俺はほふく前進で赤外線センサーの網に突入した。

 赤外線は俺に遮られるが、カメラとスクリーンが上手に誤魔化してくれて、警報の類は機能しない。


 え、なに?

 集束率の高いレーザー光線がスクリーン如きで誤魔化せるわけないだろって?

 どこのどいつだ。

 インテリぶったツッコミ入れる奴は。

 ちゃんとその辺も対策してあるの!


 このスーツには、

 ……、

 ……あーっと。

 えー……その、なんだったっけ……。



 ……――と、とにかく、

 いろいろ大丈夫なんだ!

 現にほら、ちゃんと無事通過して目的地の上に到着したし!


 俺は通排気口から、

 部屋の様子を確認する。



 真っ白な部屋だった。ホールケーキみたいな環状の部屋で、大きさはたぶん、学校の教室ぐらい。たぶんっていうのは、部屋が白すぎて距離感が鈍っちゃうからだ。




 ラボって聞いてたけど、

 なんにも無いぞ。

 てか、無さすぎだろ。


 まさかスカ?

 ここまできてガセとか

 ちょっと焦っちゃうよ、俺。

 ポケットから超圧縮マットをとりだす。

 ケシゴムか高野豆腐かで形容に迷う手のひらサイズのこれは、投げるとたちまち、



 ――ぼわんっ!



 急激に膨張して、

 床にふかふかのマットが出現した。

 棒高跳びのとき

 受け止めてくれるあれと一緒だ。

 それにダイブして、下に降りる。




 ホントになんにも無い……。

 ああ、いや待て、保護色になってて見えなかったけど、中央になんかある。

 居合切り喰らった竹の切り口みたいな形してるアクリル製の台と、ボタンだ。


 押してくださいと言わんばかりだな……。

 セキュリティーの類か、

 なんかのトラップか。

 ここからじゃちょっとわかんない。

 どのみちこれがスカなら現状諦めざるを得ないわけだし、一か八か。


「あそーれポチっとな♪」


 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ!!



 おおぉっとぉ、なんかヤバい感じに部屋全体が揺れ始めて来たぁ!



 しまった、やっぱり罠か!

 完全に嵌められた!

 これはいかん、

 三十六計逃げるに如かず!

 さっさと退散……ん?



 パニックになって気付かなかったが、

 中央に巨大なカプセルが出現していた。



 部屋の振動も収まってる。

 ……なんだ、アタリじゃねぇか!

 やっぱりね、

 俺は最初からそう思ってたんだよ!!

 よーし、作戦通りだ。

 中に例のバイオ兵器があるに違いない。



 ……って、普通ならそう思うだろ?



 なんとガラス越しに見えるのはめちゃくちゃ可愛い女の子だった。

 金髪でショートボブの、お人形さんみたいな美人で、入院患者みたいな薄手の服を着ている。

 肌は生気を感じさせないほど白いけど、ピンク色の唇が微動しているので、辛うじて生きていることはわかる。


 うわ、もろタイプだわ……、

 じゃなくて、

 女の子がいるとか聞いてねぇよ!



 どうせあの伯父さんが肝心なところをすっとばしたんだろうけど。

 電話して確認しないと。



 とるるるるる、とるるるるる、がちゃ。



『はい、お電話一つで

 あいつのお家にピンポンダッシュ!

 皆様のピンポンダッシュ協会です!』

 このふざけたおっさんが俺の伯父だ。




「ねぇ、

 電話に出る度に一発ギャグかまさないと

 死ぬ呪いでもかかってんの?

 ラボの中央で女の子が寝てるんだけど」

『ぬはははは、存外に早かったな。その子を連れてくれば依頼達成だ』

「じゃあこの子が生物兵器!?」


 確かに、

〝カプセルに入っている〟けどさぁ!


「……もっと細菌試験管とかゾンビウイルスとかそんなのだと思ってた」

『馬鹿め。

 ウイルス開発ラボにダクトがあるか』


 あー、そう言われたらそうだよねー。


「で、この子のどこが生物兵器なのさ。それわかんないとカプセルから出せないよ」

『おおっとー、

 非常に残念だが誠よ、急用ができた!

 なんと俺の開発したシカ煎餅がシカに復讐を企てているような気がするので失礼させてもらうぞ!』



 ぷつ、ツーツー。



「そんな東スポもびっくりの怪事件があってたまるか」

 ツッコミもむなしく、

 回線は既に切れたあと。

 肝心な事は言わないオッサンでしょ? 

 俺の度胸試しのつもりなんだ、これで。



 ちなみにこの電話回線は伯父さん個人が所有している人工衛星『お星さま1号』を使っているので、ハッキングや位置漏れなんて心配はほぼ無い。

 なんとこんな地下でもバリ3確保!




 伯父さんは衛星の設計から製造まで全部一人でやってたけど、打ち上げロケットだけは造らなかった。

 どうすんのかなーって見てると、

 いきなりそれをハンマー投げの要領でぐわんぐわーんと振りまわし、高らかに笑いながら成層圏外まで放り投げてちまった。



 いかれてるよ、マジで。

 閑話休題。女の子をどうにかしないとね。

 ま、とりあえずつぶやいとこっと。



『研究所の最深部で

 生物兵器の美少女発見なう。』……と。



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