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服を返せ

 メロスは老爺に逢い、こんどはもっと、語勢強く質問した。老爺は答えなかった。両手で老爺のからだをゆすぶって質問を重ねた。老爺は、あたりをはばかる低声で、わずかに答えた。

「ワシは時の神と呼ばれている」

「それはなぜだ」

「皆を幸せにできるからだ」

「では、今すぐ皆を幸せにしてみせろ」

「お安い御用」

 老爺は指を鳴らした。たちまち「万歳、王様万歳」と群衆の間に歓声が起った。

 メロスはひどく赤面した。

 次いで激怒した。

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