ガールズトークは巫女さんと。
こんばんは、粒コショウです。
少し長くなってしまいましたが、最後まで楽しんで下さい♪
*粒コショウ*
「いや・・・え??あれ、君、さっきの・・・。」
自分の状況が分からなくなってきた。
そもそもここが夢なのか現なのかも分からない。
というかあなたは誰ですか?
「ここは現実だよ。で、私はまぁ、うん。その、ね。」
いや、全然分かりませんね。
というかなんで私が思った事を分かっているんだ?
「全然わからないなんて失礼だな!
それにあなたの考えてる事なんて全部分かるに決まってるじゃない!」
「え?なんでですか、そんなに顔に出てますか。」
「ん?いや、うん。分かりやすいね、うん」
なんなんだ・・・。いきなり戸惑い始めた。
よくわからないし、そもそもなんでここにいるんだ?
「あの・・・」
「なに?なんか悪い?」いや、まだ何も言ってません。
「なんでここにいるんですか?そもそもあなたは誰ですか?
なんでそんな格好してるんですか?」
「うーん。なんでかっていわれても・・・。私もよく分からないけれど。
誰かって言うとね、私は君を“守る者”だよ。」
はぁ?何を言ってるんだこの人は。
守る者?私はなにから守られなきゃいけないんだろうか。
それに自分の事も分かっていないなんて、うーむ。
「あの、“守る者”の意味が分からないんですけど・・・。」
「・・・。まぁ、そうだよね。んー、ま、守られていれば良いんだよ!」
いや、そんなにこやかな笑顔で言われても・・・。
「一体何から守られていればいいんですか?」
「ま、ざっくり言うとあなたに降りかかる不運とか、
災難、呪いとかからかな。」
「へぇ・・・。」そりゃどうも。
「なによ、もっと感謝を表せないの?それってすごく失礼だよ!」
「あ、ごめんなさい。でも、まだよく分かんなくて。
あの、なんてお呼びすればいいですかね」
「むー。よくわかんないかぁ。
うん、ま、そうだよね。詳しく話せる日がきたらもっとしっかり説明する。
名前は好きなように呼んで。」
「えっ。名前ないんですか。」
「あるけれど言えないから適当につけてね。」
「はぁ・・・。」なんて人だ。
「なんでもいいんですか?」
「うん。私に似合ってそうな名前なら。」
それは何でも良いって言わない・・・。
「うーん、じゃあ、ミナコさん?」
「却下。」
「・・・。」何でも良いって言ったじゃん!
「じゃあ、えーと、ミカさん?」
「却下。ミがつく名前が好きなの?」
いや、偶然です。
「ノアさん、モカさん、ルアさん。」
「んー、なんかの漫画の名前みたいね。」バレました。
「シャルさん、ルカさん、カレンさん。」
「可憐?良い名前だね!私にぴったり」
「はぁ・・・。そうですね。じゃあカレンさんで。」
「うん!よろしくね!」
「あ、よろしくです。」うーん、やっぱりよくわからない。
なんなんだこの人は。
「あ、そういえば帰らなくていいんですか?」
「え?何言ってるの、帰るも何もここが私の家だよ。」
「えっ。ここは私の家ですよ?」
「うん、だから私の家。あなたを守るなら一緒にいないと駄目じゃない。
それに、まぁ、色々あるし。」
「え、じゃあ親に言ってこないと。」
「ああ、大丈夫。あなたの親は私が見えないから。
というかあなた以外の人は見えないの。例外もいるけれど。」
「えと、てことは、今までカレンさんは私とずっと一緒にいたってことですか?」
「うん、まぁそうなるね。」
「はー、そうでしたか・・・。」
それってどうなのさ!ずっと一緒ってことはもしかしたら
私の記憶にないこともこの人は覚えてる可能性もあるし、
小さい頃の羞恥心にまみれた思い出さえも知り尽くしているってことも・・・。
「ま、そうだね。結構覚えてるよ。
例えば、あなたが幼稚園のときにこのベッドに
挟まって起きられなくて一日中挟まっていたこととか、
小学校のときに机に落書きしていたら・・・」
「うぎゃああぁぁあぁあ!!!やめて下さい!
ストップ!そういうのはアカンですよ!!」
なんてこと言い出すんだこの人は!
「人の思い出をあさるなんて趣味悪いですよ!
今すぐわすれてください!」
「見ちゃったもんはしょうがないじゃないか。
ま、いいじゃんいいじゃん。仲良くいこうよ!」
「そんな弱み握られているのをいいじゃんの一言で
片付けるのはどうかと思いますけど!」
「気にしない気にしない」
なにを笑っているんだこの女ぁ!
ひ、人の過去を笑い者にしやがって・・・。
屈辱だよそんなもの!
「ま、硬い事言わないの。
ほら、寝るならちゃんとベッドで寝なって。」
ち、ちくしょう・・・。
誰のせいで肩を痛めて床で寝ていると思ってるんだ・・・。
あんたのせいだぞ、あんたが穴に落としたせいだぞ。
「ん?穴に落としたのは私のせいなんかじゃないわよ。
穴に落としてって頼んだのは私だけど、実行したのは私じゃないわ。」
「でも頼んだんですね・・・。じゃあ、誰がやったんですか!
滅茶苦茶肩痛いんですけど!」
「んー、ま、話せば長くなるんだけど、」
「完結にまとめて下さい完結に。」
「夢に出てきたもう一人の男の子分かるかな?」
「ん?ああ、着物着てた男の子ですか?
戦国ドラマに出てきそうな人。」
身体に必死にしがみついてきたあの人か。
セクハラ行為で警察に訴えてやろうか。
「そうそう、その子だよ。でも、警察には行かれないわよ。」
「私を落とした人ですか。その人も私以外には見えないんですか?」
「そうそう」
「その人は今どこにいるんですか?」
「うーん、ちょっと待ってね。」
そういうとカレンさんは目をスッと細めた。
「!!」
カレンさんの目が白銀色になったのだ。
「な、なに・・・?何をやっているの・・・?」
そういうとカレンさんはふっと息を吐いた後、
目を閉じながらこういった。
「今はね、あいつ達のいる場所を確認していたんだ。」
「あいつ達・・・。複数?
私を穴に落とした以外の人もいるんですか?」
「うん、覚えてるかな?穴に落ちている時に
あなたの足にしがみついていた子。」
ああー、いたねぇそんな子も。
「もしかして、その子も、」
「そうそう、私達と同じで他人には見られず、
そしてあなたを“守る者”よ。」
・・・・・。
ああ、そういう・・・。
「そうですか。で、その子たちは今どこに?」
「そろそろ帰ってくるわ。」
ふうん。あ、そうだ。
「ツッコミどころが多すぎて忘れてましたけれど、」
「あらら。健忘症かもね。」
「うるさいです、黙って聞いてて下さい。
さっき、目が白っぽくなったのは、その、
彼らの居場所を突き止めるための、なにかの能力ですか?」
「そうだよ、あ、ほら、帰ってきた。」
なにぃ、帰ってきたんかい!
オラオラ、穴に落としたおとしまえをつけたるぜ。
「そんな物騒なこといわないの。
ほら、この子たちも頑張ってきたんだから。
それに顔を見るのは初めてでしょ。笑顔で挨拶してあげて。」
そういいつつカレンさんは窓の外を指差した。
窓から入ってくるんかい。
「むぅ・・・。」
そして窓の外には。
フサフサの小麦色の尻尾をなびかせ、
獣の耳をぴくぴくとうごめかせて窓のふちに手を掛ける美青年と、
グレーのキャスケットを目深にかぶった栗茶色の髪の毛をした
男の子が朝日を背に立っていた。
わーお。