item2 虚空の額縁(Ⅱ)
その2です!
彼の日常に変化が……?
――数日後。
「……よし。今から少し痛むぞ」
アルドはいつもと変わらず自身のスキル『万物の聴手』を発動し、戦禍の残骸の声を聴きながら修復作業に勤しむ。
ただ、少し環境に変化があった。
『マスター・アルド。この鉄塊はマスターの魔力が注がれると「温かい」と仰っています』
「……言われなくても分かってる」
そう。レイだ。
作業台横のレイは、アルドの指先から伝わる魔力の脈動を克明に記録していた。『彼ら』が何を求め、アルドがそれにどう応えようとしているのか。レイは興味・関心を持ち始め感想を伝えるようになったのだ。
(……やはり、重いな)
アルドは額の汗を拭いながら『鉄筆』になった織針を棒状の鉄に押し当てた。
以前は丁寧に魔力を縫い合わせるように手を動かしていたが、今は、暴力的なまでの魔力を慎重に、かつ大胆に注ぐように手を動かしている。
じわり、と鉄が意思を持って溶け合い、あるべき形へと再構成されていく。以前よりも力強く、強固な結合。
(悪くはないが……違う……)
修復を終えた鉄塊は、前回直した剣とは明らかに形が変わっていた。
粗削りな姿、切るというよりは押し当てるような刀身、ベテランの冒険者が長年愛用していたと思われてもおかしくない見た目となっていたのだ。
「俺の美学とは違うが……声の主はこう望んでいたしな」
『やはりマスター・アルドは意外と繊細なのですね。興味深いです』
「……愛好家に売れば良かったな……」
アルドは剣を丁寧に布に包み、『異形』の織針と『黒い鏡』のレイをホルダーに入れて地上へ出た。
『……コレが地上……。目新しいモノがたくさんあり非常に興味深いです。マスターは今からどこへ出かけるのですか』
「剣が完成したからな。納品しに行くんだよ」
『ノウヒン……。成る程。マスターは戦禍の残骸を修復し在るべきところへ納品することで生計を立てているのですね』
「……生計なんてもんじゃねぇがな」
アルドはレイの小難しい言い回しを鼻で笑いながら、石畳の道を歩く。
数日ぶりの外界は、相変わらず騒々しい。馬車の車輪が軋む音、露店の呼び込み、行き交う人々の活気。そのすべてが、懐で淡く明滅するレイにとっては未知のデータの山なのだろう。
『人流、気温、色彩……。地下よりも情報の密度が高いです。マスター、あの角にある色鮮やかな物体は何ですか?』
「……ただの果実だ。いちいちうるせぇぞ。もう少し静かにしていろ」
『了解。……ああ、とても楽しいです』
レイは嬉しそうに駆動音を鳴らしながら、アルドの心拍の変化を記録している。
(……元の持ち主の性格から来るんだろうか……)
アルドはレイを修復する前に夢に出た病弱そうな女性の姿を思い出しながら歩を進めていた。彼女がきっと見たかった世界なのだろう。
やがて、見慣れた武具屋の看板が見えてきた。
武器作りはアルドの収入源です。
金にならないものを金にするアルドはめちゃくちゃ金持ちなはずです。
反応次第で次回以降の更新頻度を変更する予定です!




