item4 純白の律動機
今日から新エピソードです!
定時投稿できたよ!
――戦斧の件から数日後。
アルドは自身のスキル「万物の聴手」の強すぎる能力を中和するピアスの調子が悪いことに気づいた。
声は確かに聞こえるのだが、音がクリアに聞こえず、ところどころにノイズが混じってしまい聞き返すことが多くなったのである。
「調整の時期はまだ先なんだが……酷使しすぎたか?」
『マスター・アルド。本日3度目の聞き返しです。戦禍の残骸からも不安の声が聞かれます』
「だよな……。よし、魔法ギルドに行って調整してもらうか」
アルドは身支度を済ませ地下工房から地上へ出る。
途中、ヒソヒソと声が聞こえた。
「見て……『愛の伝道師』よ……」
「斧に『ラブパワー』って名付けたんでしょ……」
周りから先日のオババの店で起きた一件が噂になり広まっていた。よくよく聞くと話に尾ひれがついている。
『マスター。あのときは「愛を運ぶ者」として認識をされていましたが』
「……るせぇ。耳を傾けるなよ」
アルドは深くフードを被り直し、早足で『仕立て屋街』を通り過ぎようとする。
道すがら、立ち並ぶ店のショーウィンドウに目が向いた。
(……装飾なら、こういう専門の奴らに任せりゃ良かったんだ)
完璧に左右対称に結ばれたシルクのリボンを見て、ふとそんな後悔が漏れる。
その視線の先。1軒の老舗仕立て屋の前に、1台の豪奢な『律動機』が展示されていた。おそらくは動かない無害な界外遺物なのだろう。
見た目は多少違えど、この国と殆ど一緒の物もあるのだなとアルドは関心していた。
『律動機』は動く様子はないため看板のような役割を持っているのか、1人の少女が夢中になってそれを見つめている。
微笑ましいな、と思った瞬間。
――ガリッ
「……、……あ?」
耳元で、砂を噛んだような鋭いノイズが走った。
ピアスの不調か、それとも――。
『マスター、今のは……。いえ、まずは魔法ギルドへ。ルビィ殿にこの「違和感」を調整してもらうのが最優先ですね』
レイの静かな、だがどこか警戒を孕んだ声を背に、アルドはギルドの塔を目指した。
明日もお楽しみに!




