幕間 愛の戦斧(前編)
今日から新エピソードです!
更新時間をお昼12:00に変更しました!
「クッソ……固ぇな……。どれだけ放置されてたんだ……」
『マスター・アルド。戦禍の残骸から「あ゙あ゙ー……気持ぢい゙い゙〜」とお墨付きを頂いていますが』
「この前の鞭みてぇなこと言ってやがるな……」
『不動の二輪』の一件から数週間が経った。広場の二輪は皆の『足』となりアルドが決めたルールに従って大切に乗り回されている。
物の声を聞く武器職人アルドと、アルドが声を聞いて再構築した界外遺物レイの日常もまた戻ってきた。
今は『六角の杭』の形状となった機織蜘蛛の織針を使い、戦禍の残骸を直している最中である。
「これで……よし。ガチガチに締めたから、もう刃が取れるこたぁねぇだろうよ」
『マスターの手の感覚から接合部の締まり具合を確認。……恐らくですが問題ないかと』
「……あ?『もう少し可愛く』だ?……新しい主に頼めよ」
『マスター。「彼」はリボンやビーズによる装飾を希望されていますね』
今回アルドが直した戦禍の残骸は戦斧である。
本来、戦斧とは文字通り戦うための武器であり、可愛さとは真逆の存在だ。しかし、この戦斧は戦いの中に可愛さを求めているようだった。
「ハッ、可愛さを求めるのもいいが、お前らは本来魔物を倒す存在だろうが……。そこを履き違えるんじゃねぇよ」
『マスター、流石に言い過ぎかと。ワタシがいた世界では、モノに装飾をする文化がありました。ソレは実用的なモノへの装飾も含まれます。せめてリボンを結ぶのは如何かと』
レイが得意げに以前いた世界での文化を解説する。アルドは内容に頭が痛くなってきたのかこめかみを抑え始めた。
「リボンだぁ? 刃に絡まったらどうすんだ。……っつーか、戦斧にリボン結んで戦場に出るバカがどこにいる」
『ですから、リボンが絡まらないように持ち手部分への装飾を行うのです。モノの個性を尊重するのも重要ではありませんか?』
「『個性を尊重』だ? 斧の個性は『よく斬れること』だろうが。それ以外に何が必要なんだよ」
『マスター、それはあまりに即物主義的です。持ち手に目印があれば、乱戦時に自分の獲物を見失うリスクも低減します』
レイが珍しく反論する。『鏡』の駆動音もいつもより音が大きくなっていた。
『……それに、何より「強くて可愛い」というのは、ワタシのいた世界では1つの強力なステータスでした。それはモノに限らず人物にも当てはまります』
「……、……あーっ!わかったよ!やりゃいいんだろ!やりゃあ!」
アルドは根負けし、作業台に置いてあった革の端切れを乱雑に掴み、持ち手部分へ結ぶ。
そうして出来上がった装飾は、おおよそ可愛さの欠片もないが個性的な結び目の革装飾となった。
『…………マスター、ソレは「リボン」というよりは、どちらかと言えば「補強材」に見えますが』
「……うるせぇ。あとは買ったやつのセンスに任せる……。ほら、オババの店に行くぞ。これ以上こいつのワガママに付き合ってられるか」
明日は後編です!




