表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【毎日お昼12時更新!】万物の聴手と異世界のガラクタ〜魔力の糸で想いを繋げる再構築師(リストラクチャー)〜  作者: 境知屋


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

18/20

item3 不動の二輪(Ⅶ)

続きです。

修理パートです。

「う、うわぁっ!? 形が変わった!? おいアルド、お前それ……何したんだよ!」

 

フェインが目を見開いて叫ぶ。アルド自身も、右手に残るズシリとした重みと、その奇妙な形状に目を剥いた。

 

「…… なんだこれ……。杭、か? 針ですらなくなっちまったぞ……」

『レンチ……イエ、「六角の杭」と呼びましょうか。マスターの強い願いにより、形状が変化したと考えられます。この形ですと「彼女」を固着から救えるかと』

 

呆然とするアルドの耳元で、レイの電子音がどこか誇らしげに響く。

 

『使い方は単純です。マスター。その杭の先端を、彼女の魔力回路の接合部――すなわち、彼女が自ら閉ざした「心のネジ穴」を思い切り締め上げます』

「……ネジ穴……?」

『肯定。締めるため「平針」と使い方は似ていますが、コチラは面で撫でるのではなく、多角的な圧力でその身を「支配(ホールド)」することに特化しています。1度地面との固着を外した後、一気に締め上げれば彼女の暴走した魔力回路(エーテルパス)は物理的、および魔力的に上書きされ、沈黙すると考えられます』

 

アルドは手の中の「杭」を強く握り直した。

無機質な金属のはずなのに、不思議と手の馴染みはいい。まるで、最初からこうなる運命だったかのように。

 

「……支配、か。……はっ、ガラじゃねぇが……やってやるよ」


アルドは手の中の『六角の杭』を逆手に握り直し、若草色の車体へと踏み込んだ。

拒絶の火花がパチパチとアルドの頬を焼くが、その目はもう逸らさない。

 

「ちょっと痛むが……許せよな!!」

 

アルドは杭の先端を、石畳と車輪が癒着した「呪いの支点」に深々と突き立てた。『六角の杭』は地面に吸い込まれるように深く突き刺さる。

テコの原理を利用し、全身のバネを爆発させて一気に引き上げる。

 

「っ、らあぁぁぁあ!!」


ガリガリと火花が散り、嫌な金属音が広場に響く。

地面に縛り付けていた過去――事故のトラウマが、アルドの力によって強引に剥ぎ取られた。

 

『嫌! 離して! 私を、ここに置いていって……!』

 

なおも拒絶し、暴れようとする二輪。

ブォンッ!と暴れた鉄板がアルドに襲いかかる。


「アルド!危ねぇ!」


横から飛び込んできたフェインが、剥き出しのフレームに組み付いた。フェインの腕が、猛る二輪を地面にねじ伏せる。

 

「ぐっ……!マジでヤバいな……!おいアルド! さっさとしろよ! こいつ、見た目より力が強ぇ……骨折れる!!」

「フェイン……! 悪ぃ、助かる!」

 

暴れる「恐怖」をフェインが力で抑え込み、その隙間にアルドが「救済(ルール)」を叩き込む。

 

「 オマエが縛られているモノは、地面(ここ)じゃねぇ……ッ!」

 

アルドは左手を浮かび上がった魔力回路(エーテルパス)の中枢へ突き立て、黄金の魔力で「法」を殴り書く。

そして、フェインが押さえる車体の中心――最も深く、固く閉ざされた「心のネジ穴」に、『六角の杭』をガチリと噛み合わせる。

 

「オマエが従うルールはコイツだぁあ!!」

 

【――テメェの許可なく、暴れさせねぇ!!】

 

アルドの腕は血管が浮き出て、一気に限界まで杭を締め上げた。


――ガチリ。

 

世界が静止したような錯覚。

 

アルドが『六角の杭』を締め切った瞬間、荒ぶっていた車体からふっと力が抜けた。

荒れ狂っていた火花は黄金の粒子へと姿を変え、広場を優しく照らし出す。

 

「……ふぅ、う……。終わった、か……?」

 

フェインが恐る恐る腕を解き、地面に座り込む。

そこには、かつての禍々しい赤黒い飛沫を失い、月の光を浴びてしっとりと艶めく若草色のキックボードが静かに佇んでいた。

 

『……あ……』

 

アルドの頭の中に、小さく、震えるような声が響く。

それは拒絶ではなく、長い悪夢から目覚めたばかりのような、澄んだ声だった。

 

『身体が……軽い……?私、縛られているのに……守られてる……?』

「ああ……。もう身勝手なヤツは乗せねぇよ……。あんな思いは……もうごめんだからな」

『……そう……なの……。嬉しいわ……!』


アルドが『六角の杭』をゆっくりと引き抜く。それと同時に張り詰めていた結界――『夜の帳』が、ガラスが割れるような音を立てて霧散した。



待たせたなぁ!


今日も遅刻だよコノヤロー!

次回二輪編最終回です。


「氷の令嬢〜」完結しました!

こちらもぜひどうぞ

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ