item3 不動の二輪(Ⅵ)
続きです
「……っ、はぁ、はぁ……ッ、げほっ!……クソっ……!クソが……っ!!」
アルドが現実の地面に膝をつき、激しく咽せ返る。
指先が触れている若草色のフレームからは、なおもパチパチと拒絶の火花が散り、アルドの肌を焼いていた。
『……これで……わかったでしょう……?』
頭の中に泣きじゃくるような、掠れた女の声が響く。
『私は……人を殺すための道具なの。……もう……私を放っておいて……! これ以上、私を汚さないで……!!』
バチンッ! と激しい衝撃が走り、アルドの手が強制的に引き剥がされた。
彼女の記憶を通じて伝わってきたのは、修復への希望ではなく、底なしの自己嫌悪だった。
「おい、アルド! 一体何が起きた……!? 急に真っ青な顔して……!」
結界の端で様子を伺っていたフェインがたまらず駆け寄ろうとする。その足をレイの淡々とした声が止めた。
『フェイン、不用意に近づかないでください。マスターは今、界外遺物の記憶と高レベルで同期しています。……外部からのショックは精神汚染を招く恐れがあります』
「レイちゃん、そんなこと言ってる場合かよ! アイツ、今にも倒れそうじゃねぇか!」
『……状況を共有。彼女の記憶には、極めて悪質な運用による衝突事故の記録が残されていました。飲酒による暴走、防具の未着用、そして――巨大な鉄塊との正面衝突です』
レイの鏡が、アルドの背中を黒く、冷たく見つめる。
『彼女は、自分自身が「主人の死の原因」であると定義しています。その罪悪感により、駆動系、制御系、全ての深層回路を内外から「封印」しています。……現在のマスターの技術、及び機織蜘蛛の織針の形状による出力では、干渉不可能な領域と推測します』
「……干渉、不可能だと……?つまり……直せないってことか……!?」
フェインの顔から余裕が消える。だが、アルドは血の滲むような声で激昂する。
「……あんなもん見せられて、気持ちいいワケねぇだろうが……っ!!」
膝をついたまま震える右手を若草色の車体へと突きつける。
「アンタは……! あんなに楽しそうだったじゃねぇか……! あの風を、あの陽の光を、全部知ってるじゃねぇか……ッ! なのに、あんな……あんなクソ野郎のせいで……っ!」
『……マスター、落ち着いて聞いてください』
レイの声が、アルドの激情を冷静に貫く。
『彼女の拒絶は「面」による干渉では突破できません。今の織針の形状では、彼女が自ら締め上げた罪悪感の強さに負けてしまいます』
「……だったら、どうすりゃいい……」
『必要なのは、均一な圧力、および一点に集中させた「固定」の力と推測。……彼女が「2度と暴走しない」と信じられるほどに、強固にその身を縛り上げる「杭」が必要です』
「……『杭』だと?」
『今のマスターの「怒り」と「願い」なら、以前ルビィ殿が仰っていた「想いの力」で織針の形状変化を促せるかと』
アルドの掌の中で、織針が爆発的な輝きを放った。
「……そうか。……だったら、俺の願い届かせねぇとなぁ……ッ!!」
掌の中でドロリと溶けた針は『彼女』を救う形へと姿を変え、再結晶化する。
現れたのは、針でも剣でもない。六つの角を持ち、ずっしりと重い、見たこともない無骨な「鋼の杭」だった。
毎日投稿と言っておかながら、やらなかったおバカです
申し訳ない。
色々複数やってる手前ね?お仕事もね?(言い訳です)
明日からはちゃんとやります。




