表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【毎日お昼12時更新!】万物の聴手と異世界のガラクタ〜魔力の糸で想いを繋げる再構築師(リストラクチャー)〜  作者: 境知屋


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

16/20

item3 不動の二輪(Ⅴ)

続きです。


※後半人が亡くなる描写があります。大分ぼかして書きましたがかなり辛い展開です。苦手な方はご注意ください。

アルドは自身のスキルを発動し、『二輪』に手を当てた。


「お前の『声』を聴かせてくれ――」


アルドが若草色の取っ手にそっと手を添える。だがその瞬間、指先にパチリと火花が散るような衝撃が走り、拒絶に弾き飛ばされた。

 

『触らないで……。もう、誰にも乗ってほしくない……。私を、独りにして……』

「……っ」

「おっとアルド、振られちまったか? 今なんて言ってんだ、ソイツ」

 

結界の端で周囲を警戒していたフェインが、肩をすくめて問いかける。アルドに代わって、レイが淡々とした声で状況を共有した。

 

『こちらの界外遺物(オーバーパーツ)は声のトーン及び口調から女性体と思われます。彼女は「触れられたくない」と、強い拒絶の意志を示しています』

「へぇ、頑固なもんだ。……いいかアルド。オレがアドバイスしてやる。女の子ってのはな、そうやって拒絶される時ほど、まずは相手の話を聞いて優しく包み込んで――」

『マスター、フェインによる「ナンパの極意」は、対象が機械知性である場合、論理的に効果が薄く、即座に却下されるものと推測します』

「おいレイちゃん! 俺の経験則を全否定すんのやめてくんない!?」

 

そんな軽口を背中で聞きながら、アルドは自身の右手をじっと見つめ、それから腰の工具袋へ手を伸ばした。

 

「……(わり)ぃなフェイン。俺はあいにく、優しく口説くような柄じゃねぇ」


アルドが機織蜘蛛(アラクネー)の織針をホルダーから引き抜いた。逆手に握り直し、火花を散らす二輪の接合部へと迷いなくその先端を突き立てる。

 

「嫌だって言われてもな……。理由なく拒否されちゃわかんねぇんだよ……!」

 

ガチリッ! と金属同士が噛み合う高い音が響く。

刹那、織針を通じて封印されていた「二輪の悲鳴」が、アルドの意識へと直接なだれ込んだ。


(これが……!これが『お前』の記憶……!)


 

――最初に触れたのは、意外なほど温かな記憶だった。

 

(……なんだ、これ。……暖かいな)

 

昼下がりの柔らかな日差し。

二輪の視界に映るのは、穏やかに微笑む若い女性だ。彼女は丁寧に車体を拭き上げ、頭を守るために兜のようなモノを被り、まるで恋人か友人に語りかけるように鼻歌を歌いながら、ゆっくりと、大切に風を切って走る。

 

『……いい風ね』

 

その声に、二輪もまた誇らしげに車体を鳴らしていた。

アルドはその「愛されている道具」の幸福感に、知らず知らずのうちに安堵の溜息をつく。

 

(なんだ……こんなに楽しそうじゃねぇか。これなら、すぐにでも――)

 

――だが、その希望は、濁った「酒の匂い」によって一瞬で塗り潰される。


――暗転。

 

次の瞬間、アルドの五感を襲ったのは、乱暴に取っ手を掴み足蹴にするように乗り込んできた、別の主人の記憶。

 

『あ、あああ……っ! 痛い……やめて……!』

 

夜の闇の中。ギラギラと不自然に光る建物の群れを、男は酒の瓶を片手に、兜も身に着けず無理やり速度を上げて疾走する。

二輪の悲鳴(アラート)は男の笑い声にかき消され、制御を失った車体は夜の淵へと突き進む。

 

(おい、やめろ……! 止まれ……! なんで止まらねぇんだ……ッ!?)

 

アルドの焦燥をあざ笑うように、男はさらに速度を上げた。

 

そして――


『お願い……! 止まって……!』

『どうして……!』

 

曲がり角から躍り出た巨大な「鉄の塊」。

直後、骨が砕ける音と、金属がひしゃげる不快な音が重なり、衝撃がアルドの意識を突き抜ける。 

 

『あぁ……ああああぁっ!……いやぁぁあーー!!』

「ぐっ……!!あ゙っ……がぁぁぁあ゙っ!」


主人の体は、まるで重みのない荷物のようにふわりと浮き上がり、鉄の塊に激突して別の方向へと弾け飛んだ。


ガリガリと地面を削り、火花を撒き散らしながら転がっていく自分の体。

 自慢だった若草色の塗装は無残に剥がれ、前輪はあらぬ方向を向いて折れ曲がっている。

 

暗い路上。静まり返った空気の中で、ちぎれた配線がパチパチと虚しく火花を上げる。


力なく転がる主人の指先から流れる赤い滴りは、持っていた酒と混じり合い、黒き地面の隙間を不快な匂いとともに赤黒く染めていった――

いかがでしたか?


不動の二輪はいわゆる「電動キックボード」です。ループってやつです。


『彼女』はどのように救われるのでしょうか。

明日もお楽しみに!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ