item3 不動の二輪(Ⅳ)
続きです!
久々にあのキャラが登場するかも!
アルドは人混みを避けながら二輪が鎮座している広場の中央まで来た。
「おお!『変人』アルドじゃないか!お前さんならコイツを何とかしてくれるんじゃないのか?」
市場のオヤジがガハハと笑いながらアルドの肩を叩く。周りからは期待と不安が入り混じった目で見られていた。
「よせよ、オヤジ。……今はそれどころじゃねぇんだ」
アルドは短く応えると肩に置かれた手を無造作に振り払う。
普段なら適当な皮肉で返しているところだが今は余裕がない。耳の奥で鳴り続けるピアスの音が、脳を直接かき回すような不快な不協和音を奏でている。
(……うるせぇ。周りの声も、このピアスの音も……。これじゃ、『声』は何となく聞こえるかもしれねぇが……探りようがねぇぞ)
眉間に深い皺を寄せ、若草色の鉄板を睨みつける。
その時だった。
「――おいおい。ウチの相棒をあんまり困らせないでやってくれよ。繊細なんだ、コイツは」
野次馬たちの後ろから、場違いなほど軽やかな声が響いた。
「フェイン……!?お前いつからいた……?」
「ん?……あぁ最初からだよ。オレのスキル知ってんだろ?」
アルドの後ろから現れたのは悪友のフェインだった。彼は自身のスキル「気配遮断」を使い、この騒動を最初から見ていたのである。
「最近、冒険者ギルドの依頼がしょっぺえ報酬ばっかだから途方にくれてて。空から金が降ってこねーかなーと思ってたら金になりそうなモンが降ってきたじゃん。……周りの様子伺って良さそうなら持っていこうかなーと待ってたら、コイツ全然ビクともしねぇのよ。どうしようかなーと思ってたらお前らが来たってワケ」
フェインはケラケラと笑いながら事の始終を話した。アルドは頭を抱え、レイは『やはりコソ泥ですね』と冷ややかな声で批評する。
「んで?この界外遺物、レイのときみたいに直せるのか?」
「直せるかはわかんねぇ……。だが、ピアスから不快な音が鳴り続けているのは確かだな」
アルドは吐き捨てるように言い、二輪の方へ歩み寄る。
「……フェイン。少しの間、誰も近づけさせないようにできるか?」
「了解。野次馬どもの相手は得意だ。ついでにコイツの『防音』もしてやるよ……『夜の帳』!」
フェインが数枚の魔石を放り投げると、アルドを中心に半径数メートルの空間がうっすらと黒い霧のような膜で覆われた。外側の喧騒が嘘のように遠のき、水中へ潜ったような静寂が訪れる。
「暗殺用か何かの、物騒な魔導具だろ、それ」
「あーひっでぇな! そういう風には使わねーわ!オレはコイツを使って声かけた女の子とだなぁ……、2人っきりで甘い時間を過ごすための――」
『マスター、コソ泥フェインの口をどうすれば物理的に防げるのか、現在使用可能な道具を利用した案をいくつか提示できます。1、織針を使用し物理的に口を縫い合わせる。2、――』
「おいレイちゃん!? 俺、これでもアルドを助けてる最中なんだけど!?」
軽口を叩き合う1人と1台。だがアルドには理解していた。
フェインがわざわざこんな上等な魔導具を使ったのは、アルドに周囲の罵声を一切聞かせず、あの「血に汚れた二輪」の声だけに集中させるためだということを。
「……これで『声』に集中できる」
久々登場フェインさん。軽薄なのに暗殺業もやれます。
明るいキャラが暗い仕事やるってギャップが好きなんですよねー
明日もお楽しみに!




