item3 不動の二輪
今日から新エピソードです!
ここで今のアルドたちの状況と直した界外遺物の振り返りです。
アルド
武器職人。機織蜘蛛の織針は現在ドライバーの形になっている
レイ
アルドのパートナーで『黒鏡の板』に搭載されているAI
『虚空の額縁』
正体はブラウン管テレビ (アナログテレビ)。
アルドが直して現在は魔法ギルドで管理している。
『マスター・アルド。そろそろ作業開始から2時間経過します。休憩を推奨』
「……るせぇ。あと少し……」
『額縁』の一件から数日後、アルドは変わらず自身のスキル「万物の聴手」で戦火の残骸の声を聴き、彼らをあるべき姿に直し、レイはアルドへ小言を放つ生活が戻ってきた。
だが、機織蜘蛛の織針は『額縁』を直したときに変化した平たい形のままである。
「……ったく、いつになったら俺の針は元に戻るんだか……。まぁ、平針も悪くはねぇんだが……」
『マスター、戦火の残骸から「ちゃっちゃと早く直さんかい!このボケナス!」と罵倒を受けていますが』
「わかってるよ……ココの接続部がな……」
アルドが今直している残骸は、かつては名うての魔獣使いが使用していた多節鞭である。スクラップ化したところをアルドが買い取り修理に至る。
以前のアルドなら鞭を直そうとしても細身の織針の性質上、多節鞭の靭やかさを上手く引き出すことは難しかったであろう。
だが、針の形状が変化したことと、変化した平針を使って界外遺物の『額縁』を再構築したことで、アルドの中に1つの確信を刻んでいた。
――あの『額縁』を繋いだのなら、この「蛇」も手懐けられるはずだ、と。
かつての自分なら、丁寧に紡ぐことだけを信条とし、剣など紡ぎやすい物を優先し鞭を選ぶのは最後の方だったと思う。
しかし今のアルドは、丁寧に紡ぐのは変わらずとも、緩め、締め、そして最適な遊びを与える術を知っている。
界外遺物との出会いは、一介の武器職人の腕を、確実に次のステージへと引き上げていた。
「……。よし、これで最後だ」
『平針』を抜き、アルドは油の馴染んだ多節鞭を握り軽く振る。
すると、多節鞭がアルドの鼓動に応えるようにヒュン……と澄んだ風切音を鳴らした。
『マスター。鞭から「お?何や、体がようけ軽なったで」とお墨付きを頂いていますが』
「あ?……ああ、関節部は少し緩めつつ、当てる部分はしっかりと重心を置くように締めたんだよ。……腰が動かねぇとか爺みてぇなこと言ってたからな」
『マスター。ご高齢の方への敬意がないかと。武具屋のオババ殿にも敬語を使うべきです』
「そういう問題なのか……?」
アルドはレイの少しズレた指摘に疑問を抱きながら鞭を丁寧に丸める。
そして、納品の準備が完了した後ホルダーに織針とレイを入れて地下工房の扉を開けた。
――――
地上へ出ると、陽光と共に街の喧騒がアルドたちを包み込んだ。
だが、その喧騒はいつもより少しトーンが高く、道行く人たちの視線もアルドたちとは真反対の方向を向いている。
『マスター、周囲の音声を分析したところ、広場の方角から「困惑」と「苛立ち」のバイアスを感じます。あぁ、それと……「驚愕」も』
「……。まずはオババの店だ。余計なことには首を突っ込まねぇぞ」
『了解。しかし音声分析は継続して行います』
アルドはレイの警告を聞き流し、いつものルートで武具屋へと足を向けた。
いやー長かったね。テレビ編
今日からは割と少なめだと思うから、読みやすくなるかなーと思います!




