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星界の切符と隠された航路

魔導都市フィレンツェの港、そこは星界へと続く唯一の玄関口だった。 潮風に混じり、魔導エンジンの重厚な駆動音が響いている。


キマリアとソラは、西の港町クレアの埠頭に立っていた。目の前にそびえ立つのは、巨大な星舟《アルビレオ号》。空の果てを目指すためだけに造られた、鉄の巨鳥だ。


「……大きい。これが、星界へ行く船」 キマリアはその威容に圧倒され、思わず息を呑んだ。


だが、その船に乗るための「切符」を手に入れるのは容易ではなかった。 乗船資格を得るための試練──それは、魔導センサーが仕掛けられた迷宮を突破し、指定された座標へ到達すること。多くの志願者が落選し、肩を落として去っていく。


「ソラ、私たちにできるかな……」 不安がるキマリアの手を、ソラは強く握りしめた。 「大丈夫。私たちには、行かなきゃいけない理由があるんだから」


試練が始まった。迷宮内は複雑な魔力の乱気流に覆われ、キマリアたちの魔導コンパスは狂い始めていた。 「ダメ……。このままじゃ座標が見つけられない!」


その時だった。キマリアの耳元で、昨日ピッコロッソで葉月から渡された「お守り」のチャームが微かに光を放った。


実はその頃、地上の喫茶店ピッコロッソでは、グランデロッソが魔導端末を叩いていた。 「……よし、暗号チップの解析完了。フィレンツェ全体の魔導網を少しだけ書き換えるわ。あの子たちが使ってるお守りに、正しい航路データを送信してあげた。これなら乱気流を抜けられるはずよ」


星月は窓の外、遠くに見える港の灯を見つめていた。 「……過保護だな」 「いいじゃない。夢を追いかける女の子には、少しの幸運が必要でしょ?」 葉月が笑いながら紅茶を淹れる。


迷宮の中で、キマリアは不思議な感覚に包まれていた。 狂っていたコンパスが、ある一点を指して静止したのだ。 「こっち……! こっちに道がある!」


キマリアの直感を信じ、二人は全力で駆け抜けた。 ゴール地点である展望デッキに飛び出した瞬間、視界が開け、眼下には雲海が広がっていた。


「……合格よ、あなたたち」 試験官が差し出したのは、銀色に輝く乗船許可証──星界の切符だった。


「やった……やったよ、ソラ!」 キマリアは許可証を胸に抱きしめ、涙を流した。ついに、本当の旅が始まる。


その夜、キマリアは出発前の最後の挨拶をするために、一人でピッコロッソへと向かった。 扉を開けると、そこにはいつも通りの穏やかな時間が流れていた。


「葉月さん、星月さん! 私、受かりました! 明日、船に乗ります!」


葉月は優しく微笑み、特製の「旅立ちの紅茶」を差し出した。 「おめでとう、キマリア。……空は広くて厳しいけれど、道を見失わないで。あなたの後ろには、いつも私たちがついているわ」


星月は無言で、自分の魔導銃の予備パーツを一つ、キマリアの手に握らせた。 「……護身用だ。それを使う機会がないことを祈る」


「ありがとうございます!」


キマリアが去った後、店内に静寂が戻る。 しかし、神月の魔導端末が不穏な警告音を鳴らした。 「……始まったわ。アドニムーン機関が動いてる。あの子たちが乗る船を、狙っている奴らがいる」


葉月の瞳から、穏やかさが消えた。 「……そう。なら、地上のゴミ掃除はオレたちの役目ね」


空へ飛び立つ少女と、それを影で支える騎士たち。 物語は、いよいよ加速し始める。


次章『模擬戦と失われた居場所』 地上では、星月が騎士団の闇と対峙する。

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