アストラル・コアの守護者
浮遊要塞が星界の塵と消えた後、アルビレオ号の前に現れたのは、巨大なクリスタルで形成された神殿──《アストラル・コア》だった。そこは、地上の魔力の源であり、世界の「心臓」でもある場所。
「……ついに、来たんだ」 キマリアは震える足で、クリスタルの床を踏みしめた。しかし、神殿の入り口で彼女たちを待っていたのは、かつての星界探査隊の成れの果て──自我を失い、機械と魔導回路に繋がれた「守護者」たちだった。
「……あれは、私の父さんの……仲間たち……?」 ソラが息を呑む。彼らは星界の魔力を安定させるための「生体部品」として、アドニムーン機関に利用され続けていた。彼らの瞳は虚ろだが、その体からは、星界に渦巻く人々の「未練」や「絶望」を凝縮した、どす黒い魔力が溢れ出している。
一方、地上のピッコロッソ。激闘を終え、ボロボロになった星月は、カウンターで項垂れる葉月の異変に気づいた。 「……葉月? 血液の色が……青い?」
葉月の指先から漏れ出していたのは、輝く魔導液だった。 「……驚かせちゃったわね。オレも、あの神殿で作られた『生体部品』の生き残り……いわば、コアの外付け端末なのよ」
神月が血相を変えて、激しく端末を叩く。 「大変よ……! 守護者たちが抱えている『星界の負のエネルギー』が、逆流を始めてる。彼らを救おうとしてキマリアが回路を開くたび、その毒が全て、地上にいる同一規格の端末──葉月の中に流れ込む仕組みになってるの!」
「何だと……!?」 星月は絶句した。キマリアが守護者たちを救えば救うほど、葉月の体は地上の魔力を吸い尽くし、やがて過負荷で自壊する。
空の上。キマリアはまだ、その残酷な事実に気づいていない。 「やめて……戦いたくないよ!」 キマリアの叫びに、守護者の一人が一瞬だけ動きを止めた。その面影は、キマリアが古い写真で見た「母の同僚」に似ていた。
その時、通信機から葉月の、震えながらも穏やかな声が響いた。 『キマリア、聞こえる?……迷わないで、彼らを解放してあげて。それは戦いじゃない。彼らの魂を、あるべき場所へ還す「最後の注文」よ』
「葉月さん……? でも、様子が変だよ!」 『いいから! ……星月、オレの手を、握ってて。……キマリア、あんたの光なら、この毒さえも、最高のスパイスに変えられるわ』
星月は、透け始めた葉月の手を、骨がきしむほど強く握りしめた。 「……やるぞ、キマリア。お前の信じる『救い』を、オレたちが中継してやる」
キマリアは涙を拭い、杖を構えた。 「……みんな、いくよ。これは、お母さんたちが残した悲しみを、私たちが受け止めるための戦い!」
キマリアが放つ浄化の光が神殿を包み込み、守護者たちの束縛を解いていく。だが、その光の粒子が地上の葉月の心臓へと流れ込み、彼女の青い血液をさらに激しく輝かせる。
守護者たちの呪縛が解けるたび、葉月の体は粒子となって欠けていく。それでも彼女は、星月の腕の中で、誇らしげに笑っていた。




