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星界の博打打ち、三すくみの理(ことわり)

ロベルトの洋館を突破したアルビレオ号の前に、星界の門番である巨大な自動防衛システム《トリニティ・ゲート》が立ちはだかった。 それは「力」による攻撃をすべて無効化し、侵入者の「思考パターン」を読み取って100%の確率でカウンターを放つ、絶望的な守護者だった。


「……物理攻撃も魔導砲も効かない。相手がこちらの動きを予知しているみたいだわ!」 操舵輪を握るソラが悲鳴を上げる。


キマリアは、かつてピッコロッソで葉月に教わった、ある「遊び」を思い出していた。 『キマリア、じゃんけんはね、ただの運じゃないのよ。相手が何を出し、何を恐れているか……その心を覗く「最小の対話」なの』


「……みんな、私の合図に合わせて。これまでの戦術を全部捨てて、一番単純な『選択』をぶつけるんだ!」


キマリアは船の外部スピーカーを最大出力にし、星界の静寂を切り裂くように叫んだ。 「──最初はグー! じゃん、けん……ぽん!!」


キマリアは杖を掲げ、純粋な「打撃グー」の魔力を放つ。 ゲートは即座に「包み込む(パー)」の障壁を展開し、キマリアの魔力を霧散させた。


「やっぱり……! このゲートは『後出し』で最適解を選んでるんだ。……だったら、選択肢を重ねればいい!」


地上のピッコロッソ。 「……始まったわね。神月、ゲートの解析パターンを『三すくみ』に固定して。あの子たちのリズムに、世界の理を無理やり合わせるのよ!」 葉月の指示で、神月が焼き切れそうな端末を叩く。 「了解! じゃんけんの概念を星界の物理法則に強制上書き(オーバーライト)するわ!」


空の上。 「ソラは『鋭利な一点突破チョキ』、結月は『広域防御パー』! 私は『重厚な一撃グー』! 三つ同時に、バラバラのリズムで叩き込むよ!」


三人が放つ、属性の異なる魔力。 ゲートの演算装置は、三つの「三すくみ」が同時に迫る矛盾にフリーズを起こした。 「グー」を潰そうとすれば「パー」が無防備になり、「パー」を消そうとすれば「チョキ」に切り裂かれる。


「……今だ、メグちゃん! 何も考えないで、一番『強い』のを!」 最後にメグが、無垢な魔力の奔流を「あいこ」の状態になったゲートの核へ叩き込んだ。


均衡が崩れ、無敵を誇った《トリニティ・ゲート》が内側から弾け飛ぶ。


「……勝った。じゃんけんで、勝ったんだ……!」 結月が信じられないという表情で自分の手を見つめる。


地上の星月は、砕けたコーヒーカップの破片を片付けながら、静かに笑った。 「……フン。理屈をこねる奴ほど、単純な三すくみに弱いものだ。……葉月、いい教え方だったな」


「あら、オレはただ『勝つまでやれば負けない』って教えただけよ」


星界の霧が晴れ、その先に母・報瀬が目指した《アストラル・コア》の輝きが、かつてないほど近くに見え始めていた。

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