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友情の価値、裏切りの杯

氷の海を越えた《アルビレオ号》の船内には、奇妙な静寂が流れていた。 目的地である星界の入り口──《終焉の門》が近づくにつれ、船内の魔導機器が次々と原因不明の不具合を起こし始めていたからだ。


「……誰かが内部から回路を遮断している。これ、物理的な細工よ」 ソラが青い顔で報告する。キマリアたちの間に、これまでにない疑念の種が撒かれた。


そんな中、キマリアは結月が夜中に一人で通信室へ向かう姿を目撃する。 「結月ちゃん、何をしてるの……?」


「……見られたなら仕方ないわね」 結月が振り返る。その手には、アドニムーン機関の紋章が刻まれた発信機があった。


「オレは、機関から『監視役』として送り込まれたの。……この船が門を越える前に、星界の座標を奪うのが任務よ。……あんたたちのバカ正直さに付き合うのは、もう限界だわ」


冷たく言い放つ結月だったが、その指先は小さく震えていた。


その時、船内に警報が鳴り響く。結月の発信機を逆探知した機関の強襲部隊が、ついに船内へ直接転送を開始したのだ。


一方、地上のピッコロッソ。 「最悪よ……!」 神月が、これまでにないほど激しく端末を叩きつけた。 「結月の発信機がバックドアになって、ピッコロッソの防衛システムが逆ハッキングされてる! 私のミスだわ……あの子の正体を読み切れてなかった!」


店の外には、騎士団の装甲車が詰めかけていた。星月を「反逆者」として捕らえ、葉月の魔導技術を奪うための強行軍だ。


「神月、自分を責めるな。……葉月、ここは私が食い止める」 星月は未だ完治していない体を引きずり、愛銃を手に店の入り口に立った。 「……オレを誰だと思っている。この喫茶店の入り口は、世界で一番硬い門だぜ」


空の上では、キマリアが結月の前に立ちはだかっていた。 襲いかかる機関の魔導士。キマリアは結月を庇い、肩に傷を負う。


「何でよ……! オレは裏切り者なのよ!?」 「関係ない! 結月ちゃんは、一緒にスープを飲んだ仲間でしょ!……その手が震えてる理由、オレにはわかるよ!」


キマリアの叫びが、星月から預かった増幅器を介して、地上の星月と共鳴した。 「神月、ハッキングを逆利用しろ! 奴らのエネルギーをこっちの弾丸に食わせるんだ!」


地上と空、二つの場所で同時に引き金が引かれた。 「──《双星ジェミニ・ストライク》!」


空間を越えてリンクした一撃が、侵入した敵を強制排除し、ハッキングを仕掛けた機関のシステムを逆に焼き切った。


激闘が終わり、キマリアは泣きじゃくる結月を抱きしめた。 「……もういいよ。行こう、みんなで。……次は『裏切り』じゃなくて、『本気』のじゃんけんをしよう」


地上のピッコロッソ。星月が倒れ伏す騎士たちを前に銃を収めたが、店内には嫌な沈黙が流れていた。 「……防衛には成功した。でも、代償は大きかったわ」 神月の声が暗い。 「過負荷で、ピッコロッソのメイン魔導炉が焼き切れた。……再起動には、かなりの時間がかかる」


それは、地上からのリアルタイム支援が今後、一切受けられなくなることを意味していた。


「……あとは、あの子たち自身の力で、門を開くしかないわね」 葉月は暗くなった店内で、静かに最後のお茶を淹れた。

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