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タバコ屋で働く学生のお話  作者: 竹子


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8/32

八本目

「……お酒、好きなんだね。煙山くん」

「まあねー、飲まないとやってられないよ」

薫はそう言いながら、ポケットから「グッドスパーク」を取り出し、優衣の隣で火をつけた。酔いのせいで吸い込みが荒くなり、少しむせる。

「ちょっとやさぐれすぎでしょ」

優衣は笑いながらツッコミを入れた。その笑いは、いつものサークルの時のような、張り付けた笑いではなかった。

「やさぐれてないって。ただの……現実ミュート」

薫は優衣の言葉を借りてそう言った。二人の間に、ほんの少しの笑いが起こる。

「私、今日サークルの飲み会、最後まで付き合わされて、疲れたんだ。だから、いつもより遅くなっちゃった」優衣はそう言って、また煙を吐き出す。

「お疲れ様。パリピの相手は大変だなあ」

「パリピいうなー」

薫は笑いながら空いた缶を地面に置いた。

何となく会話も弾み、二人の間には、雨の夜とは違う、少しリラックスした、いい雰囲気が漂い始めた。

その時だった。

「おい、煙山ー!」

背後から、低い声が響いた。

薫と優衣は同時に声のした方を振り返る。

そこに立っていたのは、店長だった。

「今日お前、シフトバツにしてただろ。こんなとこでぶらぶら飲み歩いて、何やってるんだ?」

店長の目は、完全に怒っていた。薫の顔は、その声を聞いた瞬間、一気にシラフになった。勤務外とはいえ、バイト先の店で泥酔してだらしなくいる姿を見られたこと、そして、優衣との時間が遮られたことへの怒りが、一気に押し寄せる。

「あ、いや、これは……」

言い訳をする前に、薫の体は反射的に動いていた。

逃げろ。

薫は空き缶を掴み上げ、店長に一言も言わず、その場から走って逃げた。

優衣は、あっけにとられたように、その場に立ち尽くしていた。

「あ……煙山くん……!」

優衣は走り去る薫に向かって、思わず手を伸ばした。彼女の指先が掴んだのは、空振りした夜の空気だけだった。

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