表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
タバコ屋で働く学生のお話  作者: 竹子


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

23/35

二十三本目

こっぴどく叱られた後、その日のタバコ屋のバイトは、店長の温情により別の人が引き継いでくれることになった。優衣も薫も、借りた自転車の持ち主に深々と頭を下げ、夜道を二人で歩いて帰ることになった。

緊張と沈黙が、重い空気となって二人を包む。

「……俺は優衣ちゃんに、ずっと言いたいことがあってさ」

「一本だけ、吸っていい?」

薫が意を決して口を開いた瞬間、優衣がそれを遮るように言った。


優衣は立ち止まると、グッドスパークの箱を取り出した。箱を開け、一本取り出す。そして、慣れた手つきで火をつけた。

夜の街灯の下、優衣がタバコをくゆらせるその姿は、あまりにも美しく、まるで絵画のようだった。

優衣は深く一吸いした。そして、その煙をゆっくりと夜空に放つと、目を伏せて、静かにこう言った。

「……やっぱり、おいしくないや」

優衣は、まだ半分以上残るタバコを、近くにあったスタンド灰皿にそっと押し付けた。そして、グッドスパークの箱を薫に渡した。

「じゃあね、薫くん」

それだけ言い残し、優衣は踵を返し、来た道を戻っていく。薫は、その場に取り残された


優衣は少し離れたところで、ふと立ち止まり、ボソッと呟いた。その声は、雨音に消えそうに小さかった。

「……やっぱり、私は他の味はわかんないや」

優衣の姿が角を曲がり、消えた直後、夜空から雨が降り出した。

薫は立ち尽くした。傘もささずに、降りしきる雨の中で、優衣が去った方向をただ見つめていた。彼の一途な想いと、優衣の冷たい拒絶だけが、そこに残された。


すると、上からフワリと傘が被された。顔を上げると、そこには雫が目の前にいた。彼女は何も言わない。ただ、静かに傘を差し続ける。

薫は、優衣に伝えられなかった想い、雫への罪悪感、全てを言葉にしようと口を開いた。しかし、雫は優衣と同じように、言葉を遮る。

「家、送るから!」

それだけ言って、二人は相合傘で歩き出した。その間に、薫も雫も一言も話さなかった。あんなことがあったのに、二人の間に流れる時間は、決して居心地の悪いものではなかった。

そして薫の家に着く。雫は濡れた髪を払いながら言った。

「家の中、あがってもいい?」

薫は黙って頷いた。雫は律儀に靴を揃え、家の中に入った。

薫の部屋に入った瞬間、雫の視線が、部屋の隅に置かれたゴミ箱に留まった。そこには、彼女が贈ったはずの、ワンカートンのグッドスパークが、袋ごと無残に捨ててあるのが目に入った。

その光景を見て、雫は一瞬表情を曇らせたが、次の瞬間、なぜか安堵の表情を浮かべた。

雫は、リビングの床に座り込んでいた薫を抱きしめた。雨に濡れた雫の体は冷たかったが、その腕は温かかった。

「私は、薫の味方だよ……」

雫の静かな声が、薫の心を打ち砕いた。薫は、堪えきれずに涙を流した。

「薫は、やっぱり一途なんだよね」

雫も我慢していたが、ついに堪えきれず、泣き出してしまった。その涙は、優衣への一途さ故に振られた直後にもかかわらず、それでも薫を愛していることを示していた。

雫は、泣きながら、彼の耳元でこう言った。

「そんな薫が、私は……





























大好きだよ.......」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ