二十二本目
雫を振り、自分の想いに筋を通した翌日。薫は優衣にブロックされているのは知っていたが、感情に突き動かされるまま、メッセージを送った。もちろん、ブロックしているので向こうが気づくはずがないことも理解していた。
そうこうしている間にバイトの時間になったので、重い足取りで家を出る。帰りに吸う用のタバコを探す。
「ああ、雫からもらったグッドスパークがあったか!」
と思い、ワンカートンの袋から一箱取り出す。それをポケットに入れようとした時、薫はつぶやいた。
「……あいつに、悪いか」
このタバコは、もう雫との夜の象徴だ。優衣への一途な想いを貫くと決めた以上、セーフティネットの痕跡は残したくなかった。薫はワンカートンのタバコの、普段吸っているグッドスパークを全てゴミ箱に捨てた。
そしてタバコ屋へ向かう。店に着くと、自分の財布から小銭を取り出し、レジに入れ、新しいグッドスパークを購入した。
いつものカウンターに座り、ぼーっとする。昨日の出来事が走馬灯のように思い出されるが、薫は必死に感情を入れないようにした。
(優衣には嫌われたんだろうか。ブロックされているし、最近タバコ屋にも来なくなったし……)
そう思い詰めてしまう。
(雫からしたら、俺は捨てたと思っているのだろうか。いけない、雫のことは考えるな)
自分の中で、雫のことを思い出してしまう未練と、考えてはいけないと思う決意が交差する。
(上手くいかなくてもいい。優衣に想いを伝えたい)
何もなかった日常に色をつけてくれたこと。これからも一緒に現実からミュートして、二人だけの空間を作りたいこと。
そう思っていたら、店のカウンター越しに、優衣が歩いている姿が見えた。久しぶりの再会に、薫の心臓は激しく高鳴る。
「優衣!!」
そう言いながら、薫は反射的にカウンターに登り、ガラスを乗り越えるようにして外にジャンプした!
優衣は、薫の姿を認めた途端、近くに停めてあった自転車に飛び乗り、猛スピードで逃げ始めた。
「待てよ!」
薫も近くを見渡し、通りかかったリープ(シェアサイクル)に乗っている人に、「緊急事態だから!」と言い放ち、強引に借りた。
薫はリープで自転車に乗っている優衣を追いかけたが、全く追いつかない。
(ていうかなんでリープなんだ!)
使い慣れない電動アシスト自転車に悪戦苦闘し、薫はリープを乗り捨て、優衣と同じように近くに停めてあった別の自転車に乗って追いかける。
少しでもスピードを落とさせるために、さっき買ったばかりのタバコの箱を、優衣に向かって全力で投げる!
すると奇跡的に、タバコの箱は優衣の自転車のカゴにIN!
「よっしゃ!」
薫がそう叫んだ瞬間、後ろからサイレンと共にパトカーがついてきた。
「そこの自転車に乗ってる二人、止まりなさい!」
結局、二人は警察の方にこっぴどく叱られた。幸い、自転車の持ち主は二人とも優しい方で、事情を話すと許してくれ、厳重注意で済んだ。




