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タバコ屋で働く学生のお話  作者: 竹子


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2/33

二本目

翌日、また夜のバイトに入った俺は、もう『グッドスパーク』を数本吸っていた。

結局、「何も考えなくていい時間」を求めて、バイトが終わる3時にスタンド喫煙所で一本吸う、という習慣が生まれてしまった。依存というより、儀式に近い。

そんなある日、彼女は現れた。

いつものように夜のカウンターで、ぼんやりとスマホを眺めていると、スタンド灰皿の前に、一人の女子大生らしき人が立った。

髪は明るい茶色で、服装はロゴ入りパーカー。"YUI MIYAMA"と書いてある。一見、明るくて社交的な雰囲気をまとっている。だが、その笑い方の奥には、いつも少しだけ「疲れ」が沈んでいるような気がした。

彼女が吸っているタバコは、タール10・メンソールの『フラッシュリム』。まあまあ強めの銘柄だ。

タバコ屋に買いに来るわけじゃないのに、一本だけ吸いに寄る。

彼女はいつも、地面にしゃがみ込み、イヤホンをつけて、煙を吐きながら目を閉じる。まるで、一時的に"この世界から離脱したい"したいと願っているかのように。その様子は、なぜか俺の目を引いた。

彼女は、それからも毎日、決まった時間――だいたい22時過ぎ――にやってきた。

俺は、彼女の人間観察に夢中になっていた。

最初に吸っていた一本目の吸い殻は、フィルターに薄い口紅がついていた。次の日は、その口紅が少し濃くなっていた。その次は、フィルターの少し上の紙の部分が、不自然に湿っていた。きっと、何か嫌なことがあって、無意識にタバコを噛んでしまったのだろう。

ある時、彼女が吸い終わりに、灰皿の縁に吸い殻を立てて、忘れたように立ち去った。その吸い殻を見つめ、俺は初めて、吸い殻から彼女の「何か」を読み取ろうとしている自分に気づき、内心で戸惑った。

「フラッシュリム、か」

思わず、口の中で彼女の銘柄を呟く。

俺と彼女の距離は、バイト先の店員と客。近くもなく、遠くもない。だが、俺の意識の中では、彼女の存在は、日を追うごとに大きくなっていた。

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