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タバコ屋で働く学生のお話  作者: 竹子


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18/33

十八本目

雫と解散したのは正午を回る頃だった。重い体を横たえるべく、12時に自宅に辿り着く。何となく、昨夜のアルコールと煙の匂いを洗い流したくてシャワーを浴びた。

昼食は、一人で近くの牛丼屋へ。いつもは大盛りを頼むが、二日酔いとタバコの吸い過ぎが響き、食欲は湧かなかった。目の前の普通盛りでさえ、胃に入れるのがギリギリだった。

ご飯を食べ終え、家に帰る。今日も21時からタバコ屋のバイトがある。それまで、この疲労を振り払うべく、昼寝をしようと思った。

ベッドに横たわり、意識が沈み始める寸前、雫との昨日の出来事が頭の中で反芻される。

(俺って今までまともに恋愛したことないからな。好きっていう感情がわからない)

恋愛に対する感情の「薄さ」が、昨日の行動の後に、より鮮明に浮き彫りになった。

振り返れば、中高の時代、誰かを「タイプだな」と思い、席が近くなることを願ったり、会話できることを喜んだり、微かな感情の揺れはあった。むしろ昔の方が、まだ生の感情に触れられていたかもしれない。

しかし、今は常に無である。何か嬉しいことがあっても対して喜びを感じないし、お酒を飲んでいる時にいい音楽をたまたま発掘した瞬間が、最もテンションが上がるという状態だ。

これは、時代的な要因もあるのかもしれない。お酒やSNSの発達、多様な娯楽が増えたことによって、自分の幸福の基準が、前よりもずっと高い位置に設定されてしまったのだ。

かつては、テストでいい点を取ることや、スポーツで結果を残すこと、タイプな子とお近づきになることに対し、一喜一憂していた。

けれど、努力は当たり前のように行うことができる自分を知ってしまった。努力は苦ではなく、むしろ努力していない時の方が苦痛だった。

「けど、そんなことを言ってる今の俺は、何かを頑張っているか?」

自問自答する。答えは、「実は何も頑張っていないんじゃないか」という痛烈な自己批判だった。

定量的な結果、つまり受験の成功や単位という「成果」に支えられて、それさえあればいいと妥協し、その結果、前までは必死に手を伸ばしてまで掴もうとしていた感情や希望ですら、色がなくなってしまっている。

「やりたいことなんてそんなにない。それは見つかっていないから、ではない」

そうではない。何かを頑張ることに対してのハードルが、勝手に上がってしまっているのだ。前までは全てを完璧にすることが当たり前で、努力は苦ではなかった。

しかし、今ではどうか。単位を取るために勉強をすること、生活をしていくためにバイトをすること。それらに対して、当たり前じゃなくて、頑張ってやってきたと思ってしまっている。

そんな状態の自分が、誰かを「好き」だとか言っている次元ではないのだ。

自分が自分じゃないのだから。

自分がどういう感情を持っていたか。何に喜んでいたか。小さな希望でも全力で捉えて何かをするとか、そういうものは、もう無くなってしまった。ていうか、感情の機微を忘れてしまった。

だめだ。だめだ。暗い気持ちになる一方だ。何も考えずにバイトまで寝よう。


薫は、この重く、一貫性のない自己分析で頭の中をぐるぐる回りながらも、逃げるように意識を落とし、19時まで眠ることができた。

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