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タバコ屋で働く学生のお話  作者: 竹子


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十二本目

恋愛というものは、努力したからといって報われる類のものじゃない――薫はそう思っている。


中学も高校も、彼はそれなりに頑張ってきた。勉強なら毎日の積み重ねで成績を上げ、順位表に自分の名前が貼り出されるのが当たり前になった。運動も、家で一人黙々と練習すれば、ある程度までは上達した。友人はいなかったが、部活でもレギュラーに入ることができていた。


彼の人生における「勝敗」は、常に定量的な数字として目に見えてきた。

「けど、いつも戦いは一人だ。みんなが馴れ合いをしながら和気あいあいとやってるところ、俺はいつも一人で戦っていた。そして、成果は人一倍毎回出してる。」


けれど、どれだけ努力しても“モテる”ようにだけはどうにもならなかった。

高校三年間で五回告白して、五回とも振られた。理由は、どれも腑に落ちない。「ごめんね」と笑われるたび、何が悪いのか分からないまま、薫だけが置いていかれる気がした。努力の成果が目に見えない世界は、彼にとって理不尽そのものだった。

大学に入ると、環境はさらに変わった。高校までの友人たちは恋愛の話ばかりして、恋愛経験のない薫は次第に輪に入りづらくなった。最初に入った軽音サークルでも友達はできず、人間関係に疲れ果てて、ついには誰とも連絡を取らなくなった。


「彼女がいる人は余裕があって、モテやすいって、そんなループ入れたことねえよ。なんなの?この世界のバグなの?」

薫の心の中で、やさぐれた独白が響く。


――勝手に表面だけ見て、勝手に誤解して、勝手に失望する。

そんな人たちに、「もっと変わったほうがいいよ」「恋愛くらいしなきゃ」と正論めいた助言をされるたび、薫は胸の奥に、どうしようもなく苦い怒りを感じる。

そんなに自分を捨てなきゃ好かれないのなら、そんなこと、最初からやらないほうがマシだろ。

それでも世の中は言うのだ。「諦めたやつは生きている意味がない」と。薫は自分が嫌いじゃなかった。むしろ、自分なりに楽しんで生きてきたつもりだ。


彼女ができる人はずっとできて、できない人はずっとできない。そんな理不尽が平然とまかり通る。中には二股だって平気でするようなやつもいる。

――一人くらい分けてくれよ。

心のどこかで、そんな情けない言葉が浮かぶ。

俺は選ぶ立場じゃない。

そのことを、ずっと痛いほど感じ続けてきた。

「いい人に恵まれない」と嘆くやつほど、簡単に恋人ができる。自分だって優衣のように、偽りの笑顔で疲れるくらい頑張って社交的になれば、状況は変わるのかもしれない。でも、それができない。

――一回でいいから、俺の立場になってみろ。


薫は誰にも届かない思いを胸に、ポケットから「グッドスパーク」を取り出し、火をつけた。

「何も考えなくていい時間」を求めて始めたタバコだが、今日ばかりは、彼のどうしようもない憤りを、煙が余計に際立たせるようだった。タール6の煙を深く吸い込み、ただ静かに息を吐いた。夜勤のタバコ屋は、彼の感情を、黙って受け止めてくれているようだった。

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