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タバコ屋で働く学生のお話  作者: 竹子


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10/33

十本目

いつものように夜のシフトに入っている薫だが、前回優衣に酔っ払ってダル絡みをしてしまったこともあり、何となく気まずく感じていた。あの後、店長からは何も言われていないが、優衣が来たらどう話そう、と頭を抱えている。

まるで修学旅行後の通常授業のような気恥ずかしさがある。旅行の中でさらに仲良くなったけれど、その後に同じテンションで話していいのか、と戸惑う感覚だ。

そして、22時になった。普段だったら優衣が来る時間だ。何となくソワソワする。

「17番ください」

「かしこまりました」

薫は銘柄番号17番を手に取り、お客さんに渡した。

会計を終えたその女の子が、ふと顔を上げた。

「あの、昨日公園にいなかったですか?」

白いモコモコのコートを着た、見覚えのない顔だった。

「え? 昨日ですか?」

薫は全く記憶がない。昨日はいつものように飲み歩きをしたことしか覚えていない。

「覚えてないですか」

その女の子は少し寂しそうに言い、目の前のスタンド灰皿で電子タバコを吸い始めた。白いモコモコのコートに、タバコの白い煙(水蒸気)を吐き出す彼女は、夜の街灯の下でとても絵になっていた。

彼女はタバコを吸い終わり、もう一度、薫のいるカウンターの中をじっと見てから、言葉もなく帰っていく。

薫が首を傾げていると、その少し後、優衣がいつものようにやって来た。

優衣は今日もしゃがみ込み、イヤホンを外す。タバコに火をつけながら、カウンターにいる薫に、笑顔で話しかけた。

「さっきの子、煙山くんの知り合い? すごく見てたけど」

「いや、知り合いではないな。向こうは昨日会ったとか言ってたんだけど、俺、まったく記憶がないんだよな」

「へえー。飲んでて記憶なくしたとかじゃない?」

優衣は煙を吐き出しながら、軽く尋ねた。

薫は苦笑いして返した。

「ええ、そんな感じには見えないけどな」

「煙山くんの話ね」

優衣がツッコミを入れた瞬間、薫は心底驚いた。

「えっ、俺のこと!?」

そうか、昨夜の俺はよほど酔っていたから、その女の子に何かしらのダル絡みでもしたと思われたのだろう。

(最悪だ……)

恥ずかしさで顔が熱くなるが、優衣はクスッと笑っているだけだ。

そして薫は気づく。

(あれ? 普通に話せてるな)

昨夜の店長からの逃亡と、酔ってダル絡みをした気まずさは、優衣の笑い声で、いつの間にか霧散していた。彼らの間の距離は、雨の夜の一言や、逃亡劇さえも乗り越えて、また少し縮まっていた。

優衣は「フラッシュリム」を吸い終える。今日は人通りが多い時間帯だったため、薫は勤務中にタバコを吸うのを控えた。タバコ屋の店員が吸っているのは、客から見てあまりいい光景ではないと、彼は考えている。

立ち上がった優衣は、カウンターに軽く手を置き、明るく声をかけた。

「じゃあね。頑張ってね、薫くん! 今日も3時までだよね」

「今日もクローズまでだよ。頑張るわ。ありがとう!」

薫の顔は、さっきの恥ずかしさとはまた違う、少し締まった表情になっていた。優衣の言葉が、夜勤の終わりまで自分を繋ぎ止める、かすかな灯りのように感じられた。

優衣は、夜の闇へと溶けていった。薫は、また一人、深夜のタバコ屋に取り残された。

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