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パソコンが届いた

作者: 夜叉

学校終わり、今日は部活に寄らずに足早に駅へと向かう。

定時過ぎの駅は混んでおり僕の帰宅を阻止するかのように前から人の波が押し寄せてくる。

それでも僕は歩幅を変えずに前へと進む。

いつもは帰る理由など考えずにただ、電車に揺られ当たり前に帰宅するだけだが、今日は帰る理由がある。

今日は二日目に注文したパソコンが届く日だ。

念願の夢がついに叶うのかと心底喜んだ。

なぜパソコンを注文したかというと理由は一つしかない。

「小説」を書くためだ。

私は普段から小説を読んでいるわけではない、ただレム睡眠とノンレム睡眠のように小説を読みたいという欲望に駆られる時が周期的にやってくる。

おかげで部屋の本棚には少しだが小説が並んでいる。

そんなことを振り返っていると駅に着いた。

この駅は改札と階段が隣り合わせになっており乗り換える人間と改札を出る人間の波がXのように交差する。それに負けじと私も人をかき分け歩いていく。

あと四分後に来る快速急行に乗れば最速で家に着くことが出来る。

改札が近くなってきたので、スマホケースと一緒に入れているICOCAを取り出し改札にかざす。

私は満員であろう電車に備えてリュックサックを前に抱える。

駅メロが鳴り始めた。

到着した電車は体の周りに少しばかりの空間ができる程度の人口密度だった。

私はパソコンを買った時のことを振り返る。

今思えば、衝動的な買い物だった。

このご時世ネットでポチッとすれば物が買えてしまうのだから恐ろしい。

四万というパソコンにしては高額ではないものの、高校生からすれば十分大きな買い物でも

衝動買いが出来てしまうこのご時世。

買ってやったぞという達成感とお金が消えた不安が入り混じりなんとも形容し難い心情になっている自分に辟易する。

おや、もう最寄り駅の一つ前だ。

降りる準備をしなくては。|

駅から家は近い。パソコンがすぐそこで僕の帰りを待っている。

高揚しながら家に帰るとさっそく荷物を確認する。

思ったよりも軽い。

包装の指示に従ってガムテープをはがす。

少しずつパソコンの全容が現れていくその様はまるで生き物が誕生する瞬間のようだった。

最後の包装をはがし、パソコンと対面した瞬間、なんともいえない心地よさに包まれた。

僕は今パソコンを持っている。早速電源ケーブルを出し、充電を始める。

電源を点け初期設定を猛スピードで終わらせ小説になろうを開く。

ああ、小説を書く。なんてすばらしいのだろうか。

僕の人生が始まったような気がした。


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