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第1話 異世界の冒険

あのシャーロック・ホームズが異世界に!

「ワトソン君、見なよこの生き物を!実に奇怪な見た目をしているぞ!」


「ホームズ、君の適応力には驚かされるが私の気持ちにもなってくれ。」


私の友人、著名な探偵であるシャーロック・ホームズは、個体とも液体とも判別のつかない謎の青い生物に夢中になっていた。

しかし、私にそのような余裕はなかった。

知らない場所、知らない生き物、そしてなぜか若返ったホームズ。


「いや、すまないワトソン君。少しはしゃぎすぎたようだ。だが許してくれよ。」


ホームズは例の生き物を観察しながら返事をした。


「私は養蜂家として余生を送ると思っていたのだ。しかしどうだ!いま私はなぜか若返りかつての頭脳を取り戻しているのだよ!!君もねワトソン君。」


そう、我々は共に若返っていたのだ。

今まで不思議なことは随分と体験したものと思っていたが、どうやら未体験の不思議はまだ残っているようだ。

相変わらずホームズは生き物の観察を行っている。

観察は彼の特徴といっても過言ではない。

その観察眼は、今までありとあらゆる事件を見透かしてきた。

実際、彼は一目見て初対面の人の職や行動、趣味などありとあらゆる情報を見て取る。

しかし、その結果に至るまでのプロセスを聞くとなんてことはない、簡単なことなのだ。

だが、私が「なんだ、そんなことだったのか。」なんて言った時、彼はひどく不機嫌になったものだからもう彼にそのことは伝えないが。


「ホームズ、まずは村か町でも探さないか?」


我々は野原の真ん中に立っていたのだ。

周りは赤や黄色の明るい色をした花々に囲まれ、草は足首くらいまで伸びていた。

朝露がないのと日の傾き具合からおそらく正午近くだと思われる。

気温は高くもなく低くもない。


「たしかにそうだな。この生き物についてはまた観察を行うとして、まずは周辺の探索を行うことにしようか。」


私はホームズが立ち上がったのを見てほっとしながら彼のあとを付いていくことにした。


「ところでワトソン君、君はなぜ僕がこの方角に歩いているか分かるか?」


ホームズにはこのような質問をするクセみたいなものがあった。


「さあ、私はてっきり適当に進んでいるものだと思っていたよ。」


「まったくワトソン君。君は本当に若くなったのか?見た目だけだったりしないだろうね?」


ホームズは少し嘲笑しながら僕をちらりと見た。

こんな嫌味も久しぶりだ。

もうずっと聞いていなかったからか、少し懐かしいとさえ感じる。


「わからないなホームズ。ぜひ教えてくれないか?」


「さっきの草むら、僕たちより5m先くらいに轍(車輪の跡)があったんだよ。溝の深さと車輪の太さから荷物運びの馬車であることが分かった。そして、さっき僕が観察していた生き物。あの特徴からしておそらく水分を大量に必要とする生き物のはずだ。」


「確かにそうかもな。それで?」


「つまり、さっきあの生き物が移動した先。そこには水場があるはずなんだよ。この野原は多少の傾斜があるから池ではなく川だと考えられる。さらに太陽の位置から東に向かったことがわかるね。」


「なるほど。だが、それと轍に何の関係があるんだ?」


「まったく、少しは頭を働かせたまえ。つまり、僕たちの方向から東に川があり、傾斜から考えると南に流れていると考えられる。さらにこの轍は南北に伸びている。以上の理由から、南東方向に港町があると考えられる。」


「ようやく理解したよ。確かに港町は川を下った先の海で発展するものだ。」


「その通り。そして、轍はいつ直角に曲がるか分からない。ゆえに我々は最短距離であると思われる南東に向かうのだよ。」


まったく、聞いてみると実に単純な推理だ。

だが、これこそが彼の特殊な能力。

私は改めて、彼の頭脳に敬意を表さずにはいられないでいたのだ。

シャーロキアンに送る異世界冒険譚である

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