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乙女ゲームのヒロインに転生したけど、恋愛なしで普通に生きようと思ったら阻止されてました?!

作者: 高梨なしこ

初めての作品投稿です。

文章が拙いところもあるかもしれませんが

頑張って執筆しましたので最後までよろしくお願いします。


「やったわ!ついにアカデミー卒業だわ!」


アシュリーは翌日のアカデミー卒業式を心待ちにしていた。


5年前、平民として過ごしていたアシュリーの元に本当の父親だと名乗る“テレンス男爵“がアシュリーのことを男爵家に引き取りたいと自宅にやってきた。

母は既に病気で亡くなっているためテレンス男爵が本当の父親というのに確証はなかったが玄関に立つ“父親”の姿を見て既視感を覚えた。

馬車でテレンス男爵邸を見た時も(まるでオープニングのようね)と思ったり案内されたアシュリーの部屋を見た時も(ステータスの確認はよくここでしていたわね)と思った。


「(ん?オープニング?…ステータス?)」


この時初めてアシュリーは日本に生まれ育ち、そして死に、転生したことを思い出した。


「私、死んだの?!しかもアシュリーって…

『イケメン貴族と恋がしたい!〜初恋の君と〜』のヒロインじゃない!」


初めは男爵が実は父親とか引き取りたいとか戸惑っていたアシュリーだが今思えば納得のいく展開だった。

そう、これはゲームにもある内容だからだ。


「そうなると私は今14歳だから…

2年後の16歳になる年にはアカデミーに入学することになるわね…」


よく考えたらヒロインだけど恋愛する必要あるのかとアシュリーは思った。

確かにゲーム通りに攻略を進めていけばハーレムエンドも不可能ではないし、一番好きなキャラを攻略するのも容易だ。

が、しかしこういうのは大抵失敗する。

転生漫画を前世で読み尽くしたアシュリーにとっては失敗することなど目に見えていた。

それにアシュリーは相手の感情を手にとるようにするのは向かないし、出来ない性格だ。

隠し事も向いてない。

そこでアシュリーは恋愛せずに自由に生きればいいじゃないかと考えた。


「そうと決まればアカデミーに入るのは…ゲームの強制力で避けられない気がするから、

攻略対象が私のことを好きにならないように言動を(つつし)めばいいのよ!」


アシュリーの記憶通りでいくと攻略対象にも婚約者がいる。

その仲を壊すようなことはアシュリーには到底できるはずもなかった。


こうして2年間自由に男爵邸で過ごしていたが遂に男爵からアカデミーへ通わないかと打診された。

打診というが入学1ヶ月前に言われているので手続きは済んでいるだろうし、

断ればあの手この手で結局入学することになるのだ、諦めるしかない。

内心、この話がなければアカデミーに通いたいなどとアシュリーから言うつもりはなかったが言われてしまった手前は仕方がない。

分かってはいたが実は行かなくても良くなるのではと少しは期待していたアシュリーはがっくりした。


「やっぱり行かないとダメよね。本当は対象キャラと関わりたくなかったんだけど…」


アシュリーが心配しているのはゲームの強制力。

関わらないようにしていても強制的にイベントが発生してしまうのではないかと心配していた。

しかし入学してからアシュリーはそれが杞憂(きゆう)であることを知った。

対象キャラは高位貴族が多く、男爵身分の自分がおいそれと会ったり話したりすることはなかった。

アカデミー内では平等ではあるが知らないものが軽々しく高位貴族に話しかけるのは常識がないというものだ。

そう考える本当のゲームのヒロインって相当おかしいのかもとアシュリーは思った。


アカデミーでのアシュリーはそこそこに過ごしていた。

男爵が教えてくれたことだが母はその昔男爵邸で働いており、一時(いっとき)恋人のような関係になったのだが身分差から別れることになったと聞いた。

その後まもなく男爵は子爵令嬢と結婚し、こちらではアシュリーが産まれた。

しかし男爵は母が妊娠していたことを知らなかったし、母も連絡しなかったという。

その後噂で母が死に、1人娘がいると聞いた男爵が引き取りに来たという。

そういう訳でアシュリーは庶子という貴族では()み嫌われやすい立場なのだが、男爵は教育や作法などを(ほどこ)してくれたし、義母にあたる男爵夫人もアシュリーによくしてくれた。

だからアシュリーはアカデミーに通う以上、恩を仇で返すような適当なことはしないと決めていた。

成績は中の上辺りまでしかいけなかったがキープしていたし、先生からの評判も良かった。


そんなこんなであっという間に三年間は過ぎ、アシュリーは明日アカデミーを卒業する。


「すっごく綺麗…ドレスに顔負けしちゃいそうね…」


翌日ドレスに着替えて化粧やらヘアセットやら終わって自分を見たアシュリーの第一声だった。

淡い黄色のドレスに夫人に押し負けて着けたサファイアのネックレスとイヤリングを(まと)った姿は立派な令嬢に見えた。

しかしアシュリーは綺麗な自分の姿を見て少しモヤモヤした。

ぼちぼち時間だというので会場へ向かったが、そのモヤモヤが消えることはなかった。


今日は国王陛下、王妃殿下もいらっしゃるし、来賓(らいひん)の高位貴族も多数いる大きなパーティーだ。

もちろん男爵と夫人も出席して貴族席にいる。


「それでは卒業パーティーを始めさせていただきます。ルクセン・ウィル・トリアード殿下、ご挨拶をいただけますでしょうか。」


司会の言葉の後、第一王子であるルクセンが中央に現れた。

アシュリーはアカデミーの中でルクセンとすれ違うことはあっても話すことはなかった。

しかし前世ではゲームの中でルクセンが一番の推しだったため、すれ違い様にチラチラ見ては他のドキドキしていた。

何より今日の装いはより一層キラキラしている。


「(うぅ、殿下…かっこいい)」


ルクセンに少しうっとりしているとルクセンがアシュリーを見て微笑んだ気がした。

しかしアシュリーの周りの令嬢がうっとりしているのを見て恐らく周りへのファンサービスといった所だろうと思った。


「(ルクセン殿下って結構サービス旺盛なのね。)」


その後ルクセンは華麗に挨拶をし、パーティーは始まった。


パーティーといえばダンス。

しかも一番最初に踊るダンスはもちろんルクセンであろう。

自分へのお誘いはまだかまだかと令嬢達がドキドキしている中、ルクセンは人混みをかき分けてアシュリーの元へまっすぐ向かってきた。


「(え?!え?!なんでこっち来るの?!)」


アシュリーが動揺している間にルクセンはアシュリーの目の前に立ち、美しい所作でエスコートの手を差し出した。


「アシュリー・テレンス男爵令嬢、私と最初のダンスを踊っていただけませんか?」


どういうことか全く分からず硬直しているアシュリーにルクセンはこそっと耳打ちをした。


「テレンス男爵にお誘いの許可はいただいております。」


その言葉を聞いた瞬間に貴族席を見たアシュリーは男爵と目があったがぱちんとウインクをした。

しかも夫人も「素敵〜!」と言わんばかりの目をしてこちらを見ていた。

許可を頂いてる上、お誘いの相手は王子だ、男爵の身分のものが断れるわけがない。

ふ〜っと息を吐いてアシュリーはルクセンの手を取った。


「喜んで。」


中央にエスコートされている時に“なんであんな子が“、“庶子のくせに“とヒソヒソ声が聞こえた。

流石のアシュリーでもそういう話は気分が良くない。

少し憂鬱(ゆううつ)な気持ちになりながらも曲がかかり、ダンスが始まった。


しかしダンスが始まれば今度はアシュリーに緊張が走った。

足を踏んだり、ダンスを間違えたたりしたらルクセンに恥をかかせてしまう、そんな気持ちでいっぱいだった。

ましてやダンスをしているのは自分たちだけ、全員が自分たちに注目している。

とてもじゃないがルクセンの顔をきちんと見ることはできなかった。


アシュリーたちのダンスが終われば次は他の貴族もダンスをすることができる。

ようやく解放されたと安堵(あんど)したアシュリーにまだまだ試練は続く。


「テレンス令嬢、休憩がてら少し外でお話ししませんか?」


ルクセンはダンスが終わったばかりのアシュリーをすかさず誘ってきた。

アシュリーも自分が選ばれるなんて思いもしなかったためその真相が知りたかった。

男爵に許可を取るほど何故自分とダンスをしたかったのか。


「ええ、そうですね。いきましょう。」


アシュリーはルクセンにエスコートされ、会場の外にあるちょっとした庭園に着いた。

学園内ではあるがこんなところがあっただろうかとアシュリーが少しキョロキョロしていると

こちらへどうぞとベンチに座るよう、ルクセンが身振りをした。

アシュリーは指示された通りにベンチに座り、根掘り葉掘り聞いてやるという姿勢でルクセンと向き合った。


「こほん、それではトリアード殿下。どうしてこのようなことになったのでしょうか。」


「ドレス、思った通りいいね。綺麗だよ。」


“ドレス思った通りいいね“?

質問を無視するルクセンの回答にアシュリーは少し苛立ちを感じたがはっとした。


「(ルクセンルートのエンディングのドレスだわ…)」


黄色のドレスはルクセンの金髪の髪色を、サファイアのネックレスとイヤリングは瞳の色を連想させるものだった。

どうりでドレスを着た自分を見てモヤモヤするはずだとアシュリーは今更気づいた。

だとしたら全部最初から仕組まれていたことになる。

たくさんの卒業生がドレスを新しく仕立てているはずなので、仕立て屋は取り合いになるはずだ。

なのに夫人は全く焦る姿がなかった。

それもルクセンが仕立てるからと連絡を受け取っていたのであれば理解できる。


「あの、殿下。こちらのドレスや装飾は殿下が贈ってくださったのですか?」


「そうだよ。今気づいたの?その色の組み合わせを纏える女性はアシュリーしかいないよ。」


なんてこった。

アシュリーはアカデミー3年間でイベントも何もなかったから大丈夫だと完全に油断していた。

まさか後手に回っていたとは。


「ところでアシュリー、ようやく僕の顔、見てくれたね?」


アシュリーはドキっとした。

確かに先程のダンスは緊張して見る余裕がなかったのは事実だがあえて見ないようにもしていた。


「な、なんのことでしょう?

(だって推しですよ?!イケメンすぎるしダンスしている姿もとっても素敵だったわ!)」


「僕のこと見ないようにしてたでしょ、分かってるからね。でもそうだな、これから僕のことはウィルって呼んでくれたら許してあげるよ。この意味、分かるよね?」


ルクセン・ウィル・トリアード

ルクセンの二つ目の名であり婚約者や家族にしか呼ぶことが許されない名前。

つまりはそういうことだ。


「恐れながら殿下、私は殿下と接点は全くなかったと存じますが、どうして私なのでしょうか。」


「どうしてって、5年前のあの日にもプロポーズしたじゃないか。ずっと一緒にいようって。忘れちゃった?」


アシュリーは混乱した。

5年前、確かに“ずっと一緒にいよう”と言ってくれた男の子がいた記憶はある。

だけどそれはルクセンではなかったはずだ。


「殿下、確かにその男の子のことは覚えております。しかしそれは殿下ではなかったはずです!」


「うん、その時はルクセンではなかったからね。王族の証である金髪は目立つからカツラをかぶった国王陛下の秘書って立場だったんだよ。まぁそれは建前だし、男爵は気づいていたけどね。」


うん、衝撃の事実すぎる。

つまりルクセン曰く、男爵が娘を引き取ったため貴族登録などの申請をするためにルクセンが男爵邸まで来たという話だった。

本来であれば男爵が王城へ向かうのが筋だが、娘の様子も見てくるようにとルクセンは陛下に依頼されて(おもむ)いたという。

しかしどんな話をしたかは全く覚えていないアシュリーだったが、“ずっと一緒にいよう”という言葉は覚えていた。


「あれが、殿下だったのですね…」


攻略対象と関わるのは学園に入ってから、その前は何もないと油断していた結果がこれだ。

しかもルクセンは第一王子。このままいけば立太子はもちろん、未来の国王陛下だ。

その妻というのは非常に重く苦しい立場であるだろう。

アシュリーは自由が無くなった消失感とは裏腹に、ルクセンの隣にいるというのは嫌な気持ちにならなかった。

しかしアシュリーは大事なことを思い出す。

そう、ルクセンの婚約者のことだ。


「殿下!」


「なんだいアシュリー?」


「婚約者、アリウェル公爵令嬢とはどうするおつもりですか!」


「あぁ、そのことか。」


ルクセンはなんともあっけらかんとした表情で語り始めた。


「アリウェル公爵令嬢とは婚約破棄したんだ。もちろん円満だよ。ただ円満になるまでにはものすごく時間がかかってね、正式に破棄出来たのは先週のことなんだ。」


先週といえば確かにルクセンとアリウェルが婚約破棄したと、そのような噂を聞いたような気がする。

その時は気にも止めなかったがまさか自分に飛び火するとは思いもしないだろう。

ただルクセンが言ったように円満な破棄だったとも噂で聞いた。

なんでもアリウェルと隣国の王太子がお互いに一目惚れしたとかなんとか。


「アリウェル様と隣国の王太子様が互いに一目惚れしたという噂は聞きました。

それにしても偶然にも程がありませんか?」


「もちろん偶然なんかじゃないさ。僕がセッティングしたんだよ。あの日から父を説得し、公爵を説得して、ようやく叶ったことなんだ。」


つまり“ずっと一緒にいよう”と約束したあの日からルクセンはアシュリー以外とは結婚する気が無くなってしまった。

ただ更に5年前からアリウェル公爵令嬢とは婚約していて、更には王族からの婚約依頼ということもあって今更なかったことにはできないというのが本音だった。

ルクセンは一時の感情だと思われないように1年間ずっと父を説得し続け、ようやく許可を得た後は公爵に対しても2年は説得し続けた。


「それで今から1年半ほど前に令嬢からこう言われたんだ。

『わたくしと婚約破棄するのであれば新しい婚約者を連れてきてもらわないと困る、たとえば隣国の王太子とかね。』と。彼女は冗談半分だったらしいけど、言い換えれば新しい婚約者をこちらで用意すれば問題ないという話だと思ったんだ。」


その後のルクセンの行動は早かった。

そしてルクセンは知っていた。

アリウェルが側近のメイドに隣国の王太子の隠れファンでかっこいいと言っていたことを。

ただアリウェルもルクセンの婚約者の立場である以上は当然表に出すことは無かった。


「それから隣国に連絡をとったらあちらもそういう話ならば歓迎だと言ってくれたんだよ。

学業と政務の合間にやってたから進みが遅くてね。結構僕、頑張ったんだよ?」


ルクセンはアカデミー在学中にも関わらずある程度の政務をこなし、また学業では常にトップに君臨し続けた。

おまけにアリウェルとはまだ婚約者で、無下にすることはできないから交流などは欠かさなかった。

そのため学園でアシュリーとすれ違った時は横目で見るのが精一杯だった。


「さて、アシュリー?これでアシュリーの不安要素はなくなったと思うけどどうかな?」


バレていた。

アシュリーは何かと問題を言いつけて逃れられるのではないかと思ったが、ルクセンは思った以上の人だった。

もう、拒む理由はない。

アシュリーは攻略対象とは関わらないとは決めたものの、やっぱり推しでもあったルクセンのことだけはずっと気にしていた。

アシュリーも学業を頑張れたのだって“ルクセンも頑張っているから自分も頑張ろう”と言い聞かせていたからこそ頑張れたこともあった。

結局はルクセンのことが好きだったのだ。


「もう、ない、と思います。」


「そう、それなら」


ルクセンはベンチに座るアシュリーの前で(ひざまず)き、綺麗なダイヤモンドをあしらえた指輪を出した。


「僕と結婚してくれる?アシュリー、ずっと一緒にいよう。」


「…はい。」


ルクセンは指輪をアシュリーの左手薬指にはめた。

サイズがぴったりであることはもう驚かない。

ルクセンならば知っていて当然だろうし、アシュリーのために元々あった婚約を破棄にするくらい愛してやまないのだ。


「今思えばずっと、お慕いしておりました。…ウェル様。」


アシュリーがルクセンの愛称を呼んだことには流石に驚き、そのあとは今まで見たことのない顔でルクセンは笑った。




そして、2人は今までの思いを確かめるかのように、そっとキスをした。



End.


最後まで読んでいただきありがとうございました。

当初はアシュリーとルクセンのイチャイチャをたくさん書くつもりだったのにアシュリーばっかでルクセン全然出せませんでした(汗)

このままじゃ消化不良になりそうなので新婚編的な続編を書いてみようかな?(笑)

それでは次回作でお会いしましょう!




-----2024/9/18

コメントで誤字私的してくださった方ありがとうございます。

誤字チェックしてたんですけどなんで気づかなかったのか…ハズカシイ

きちんと言語を調べて相応しい内容に変更いたしました。


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