第83話 連鎖する災厄1
スージーたちは休憩室のテレビにかじりつき、日本で起こっている未曽有の大災害の様子を見逃すまいと目に焼き付けていた。日本の街並みが瓦礫の山と化し、ところどころから火の手が上がっている。火災の明かりに照らされ、おぞましい怪獣の姿が遠景からではあるが確認できる。
彼らラボメンバーはここ数カ月行っていた研究で、人類に忍び寄る極小の脅威を見つけ、それに対する対策を探していた。目の前に迫りつつある怪獣は恐ろしいが軍隊が十分に対応できるものであり、それ以上にこの小さな感染する生物が人類すべてを脅かす脅威に見えていたのだ。
だが、どうだろうか。実際のところ、日本に存在する未明の領域で群れを作った怪獣は、いともたやすく日本の都市を蹂躙し、信じられない数の被害を出している。そしてこれは日本だけではなく、どの国でも起こりえる現象なのだ。
「大変なことになったわね。」スージーは唾をのみ、乾く喉を潤してから言葉を絞り出すように話した。
「この怪獣、カマキリみたいな形をしていますけど、カマキリって群れを作りませんよね?」エリザベスがテレビから目を離さずに疑問を発した。誰に言ったのかもわからないし、誰かが答えるだろうと思った発言だったのだろう。それをジャックが拾った。
「すまん、正確なことは知らない。でも交尾中の雄を食べちゃうような虫だからね。多分群れは作らないんじゃないか?」ジャックの横にいたジェニーが無言でうなづいているのが見える。自分もそう思うし、群れているカマキリなんてテレビでも見たことはなかった。
「じゃあ、これって起きていることとしてはだいぶ異常だと考えていいんじゃないか?単純に食事が足りないとか、そんな話じゃなくて変なことが起きてるような気がするぞ。」クリスがそう会話を続ける。唖然としていて気付かなかったが、確かに群れを作らない生物が同じタイミングで大量に発生し、同じ方向に進んでいるのは不自然ではある。
このような感じにテレビを見ながら議論をしていたところ、メリーアンが急ぎ足で教室に入ってきた。振り返って表情を見たが、おそらく彼女もこの映像を見たのだろう。真っ青な顔をしていた。
「おかえり、教授会は大丈夫だった?」スージーはメリーアンをいつものような感じで出迎えた。冷静な彼女がこのような表情をしているのはおそらく教授会の緊張が解けた後、いきなり今映っているような地獄を見たせいだろう。自分だけでもいつものように振舞った方が彼女にとってはうれしいだろうと思ってのことであった。
「ええ、順調に行ったし、多分理解してもらえたわ。それよりも日本のこと。すごいことになったわね。」彼女は少しだけ表情を柔らかくして答えた。
「そうね。いつイギリスでも同じようなことがあるか・・・両親がだいぶ田舎の方に住んでるから心配よ。」スージーはそう返答する。さっきの態度がよかったのか、メリーアンの表情も和らぎ、通常の状態に近づいていた。
「ええ、そうね・・・さあ、みんな。大変なことになっているけど、私たちは私たちにできることをしましょう。自分の仕事に戻ってちょうだい。私たちはこの襲撃の根本的な原因を退治する方法を見つけましょう。」そうメリーアンは手を叩きながらメンバーを促し、仕事場に戻らせた。




