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第73話 つかの間の安心1

由美はマンションの階段から下をのぞき込む。建物の周りは家屋が倒壊し、がれきだらけだった。所々で出火し始めており、襲撃直後と比べると多少見えやすい光景となっていた。いくつか高い建物は未だに倒れることなく立っていたが、その光景は数年前にテレビで見た大地震の跡のようであった。

 だが、何よりも彼女の眼を引いたのは瓦礫の山を闊歩する3mほどの高さの巨大な昆虫の姿であった。さっきの群れからはぐれた怪獣が数頭、瓦礫の山の中を歩き回っているのだ。ほとんどの怪獣はかなり遠くにいるようだったが、一頭だけはこのマンションのかなり近くにいた。見る限り何かを探しているような様子はないが、うろうろと動き回っている。


 彼女はさっき電話した健太の言葉を思い出す。どうにかして迎えに来ると言っていたが、健太がいた繁華街とこことはかなり離れている。いつもはバスだと20分くらいはかかるし、この瓦礫だらけの街中を歩けば2時間以上はかかるだろう。ここで待つことは非常に恐ろしいが、外で待つよりもはるかにマシではあった。そう考えると、彼女は階段に腰かけ、隼人をあやしながらすやすやと眠ってしまった。


 どれくらい時間がたっただろうか?ふと由美は目を覚ます。隼人を見るとすやすやと眠っている。もう何時だろうか?携帯を取り出し画面を見てみる。するとすでに午前3時と表示されていた。通話履歴を見ると健太とは午前2時に最後の通話をしている。もうすでに1時間たっていたようだ。

 すこし眠ったことで体力が多少回復していたが、それでも体の奥底に拭いきれないほどの疲れを感じていた。健太はいまどこにいるのだろう?彼女はそう考え、彼に電話をしようとした。だが、画面を見ると圏外となっていた。いつの間に通信が断絶していたのだろう?通信局が破壊されてしまったのか?わからない。だが、これでここからは移動できなくなってしまった。

 そう考えながら携帯電話をしまい、隼人を見つめる。春が近づいているとはいえ、まだ肌寒い時期。ある程度厚着をさせてから家を出たが、それでも顔が紅潮していた。寒いのだろう。早く健太と合流して暖を取れる場所まで移動しなければ。そう思っていると、ふと隼人が目を開けた。可愛い目と視線があう。


 そして、隼人は大声で泣き始めた。


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