第60話 男の責務
健太は荒れ果てた道を走っていた。避難所の壁には小さいドアが裏口として設置されている。怪獣のサイズを考えれば侵入されることはなく、遅れた避難者を受け入れるための最後の救済措置としてすべての学校で設置されていた。彼はそこから一人脱出し、由美のいる避難所の方向に走っていた。
彼女のいる避難所はここからおよそ20分の距離だが、それはバスを使用した場合の距離である。歩きなら少なく見積もっても1時間はかかるだろう。どうにかして彼女を助けなければならない。
過去に彼は由美のいる避難所を見に行ったことがある。場所もちょうど怪獣たちの進行ルート上で、しかも最悪なことに校門が進行方向を向いている。もし警察が間に合わなかったら間違いなく敷地内に怪獣が侵入し、大惨事となる。健太はそれを予想し、彼女に避難所からの脱出を伝えていたのだ。
健太は走りながらボロボロになった街並みをみる。廃墟のようになった家屋や商店が点在している一方、4,5階建てのマンションなどは比較的軽微な損傷で済んでいた。やはり、怪獣たちの多くが迂回することにしたのだろう。彼は避難所の校舎からその光景をみており、おそらくビルの高層や屋上なら避難場所として使用できるのではないかと考えていたのだ。しかし、このままでは永遠にも思えるような時間がかかってしまう。だが、現状はどうしようもない。彼は肩で息をしながら走り続けるのだった。




