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第59話 危機からの脱出

 由美のいる避難所は未だに混沌とした状況だった。警官は未だたどり着けず、住民同士の小競り合いも増す一方だった。校舎の窓を割り体育館のカギを探しに行こうとする人たちや、意味もなく体育館の扉を蹴りつける人たちなどがいたが、大多数の人たちはそこでおろおろとしているだけであった。

 由美も後者であり、隼人をあやしながら所在なさげにふらふらと歩くだけであった。その時、再度健太からの着信が入る。


「健太、なんでいきなり切っちゃうのよ。こっちは警察の人がいなくてめちゃくちゃだし、体育館も空いてないし、さっきまで走ってたから足も棒みたいで・・・」彼女は電話を取ると健太を責める言葉をぶつけたが、軽くスルーされた。だが、その後に続く言葉を聞いて電話口から大きく息を呑むような音が聞こえた。


「だから私隼人と二人でずっと立ちっぱなしで?え、なに?校門?開けっ放しだよ?もう誰も来てないけど。閉め方もわかんないし。普通の門を閉めた後になんか操作しないと防護壁?とかいうのは作動しないってさっき誰かが言ってたけど・・・」彼女は正門の方を見ながら健太の質問に答える。


 現在各地の学校は緊急避難所として使用できるように周りの塀を改造され、要塞のような見た目になっている。過去に出現したイノシシ型の怪獣の被害を想定した構造となっており、かなりの衝撃に耐えることが出来ると想定されている。そして、最も強度が低くなる校門の部分は従来の校門に加え、スライドしてくる鉄製の防護壁を備えていた。

 この防護壁は稼働してから閉まりきるまでに約5分時間が必要であり、毎日の業務終了で閉めたり開けたりするのは手間であった。なので、通常時は使用せず、緊急時のみ使用できることになっていた。また、その稼働についても警察でカギを管理しており、現地に到着した警官が操作を行うこととなっていた。

 K市のような襲撃が起こったことがある場所ではトラブルシューティングがなされており、緊急時に使用できるカギが学校内にも保管されていた。だが警察署間での申し送りが不足していたのか、N市ではそのような運用が行われておらず、この避難所も警察が到着するまでは防護壁が使用できない状態だった。


「え、何?逃げろってどういうこと?今逃げてきたばっかりだし、疲れてるし?え、ビル?何言ってるの?え、ちょっと、そんなに怒鳴らないで。怖いよ。」彼女は電話口から聞こえる絶叫にも近い健太の声を聞き、すこし引いた。だが、その声には真剣さがこもっており、彼女はしぶしぶそれに従うことにした。


「わかった。適当な大きさのビルを探してそこのできるだけ高いところに逃げればいいんだね。わかった。ねえ、このまま電話したままでもいい?」彼女はいま一つ事態の深刻さを理解できていないのか、自分の不安を軽くすることを優先しようとした。


「あ、ちょっと。健太。ちょっと。」そして健太に電話を切られてしまった。最後にまた連絡するとは言っていたが、いつもと違ってかなり強引で正直引いてしまう。


だが、やはりいつも優しい健太があそこまで怒鳴っているのは気になる。そう思った彼女はゆっくりと校門の方に向かった。


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