第58話 幸せの終わり4
健太の到着は最後の方であった。彼は4階の教室に案内され、そこで待機していた。すでに体が地鳴りのような振動を感じている。外からも何かが大挙してやってきているのがわかるような音が聞こえてきている。
彼が避難した数分後には警官が校門を閉め、学校そのものを閉鎖した。避難していた人たちは口々に不安を吐露していたが、誰もが騒ぐことなく事の推移を見守っていた。
そうしていると、繁華街のビル群の大通りに黒い波のようなものが押し寄せてきているのが見えた。街灯が、停車していた車が、民家が黒い波に飲み込まれ、明かりが順番に消えていくのが見えた。ビルが倒れていく様子はなかったが、その明かりも波が通り過ぎる時にはすべて消えていた。
影が近づいてくる。波打つ影は今やその一つ一つが昆虫のシルエットをしているのがわかった。カマキリのような怪獣が数千、いや数万体集まって一心不乱に進行している。
数分もしないうちに、波は中学校の塀に衝突した。すさまじい音と衝撃が走り、塀が揺れる。今にも決壊してしまいそうだ。だが、怪獣たちは無理にその塀を破壊しようとはせず、迂回を開始した。ほっと胸をなでおろす避難民たち。そうして数分もすると怪獣たちは中学校を通りすぎ、あとには廃墟となった住宅や倒れた電信柱、横転した車などが残されているだけとなった。
健太も同じく胸をなでおろしたが、すぐに由美のことを思い出した。避難民たちは段々とざわめき始めており、電話をかけ始める人もいた。彼も彼らに習い、由美に電話をかけた。




