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第55話 幸せの終わり2

 通話が終わってから数分、意を決して隼人を抱っこ紐で体に括り付け、リュックを背負って外に出ると、外の状況は混沌としていた。警報が出たのは丁度食事時だったため、多くの家には家族がそろっていた。彼らはみな警報を聞き、慌てふためいて避難をしていた。

 ここ数カ月で各都道府県では複数の襲撃が起きており、日本全体では避難や自衛隊の出動はスムーズに行われるようになっていた。だが、それは山岳地帯に近い部分での話だった。平野に存在する大都市などでは住民が襲撃を受けていないため避難行動に慣れておらず、大混乱が起きていた。


 まず、使用しないこととなっていた車だが、N市では多くの人が使用し車道は大渋滞となっていた。また、それに伴い警察の出動も阻害され、避難経路の案内、起こりえるトラブルへの対処、避難先の開設と運営などがすべて円滑に行えなくなっていた。

 また、避難している住民の中には自分の避難先をよく理解していないものも一定数存在していた。怪獣の群れが出現してから約30分、その短い時間でN市は未曽有の混乱に陥っていた。

 

 由美は他の住民に交じって小学校まで走る。振動、騒音、周りを囲む異様な雰囲気に隼人すでに起きて大泣きしていた。ただ、由美も隼人を気にしている余裕はなく、ただただ走り続けていた。元々体力のない由美には非常につらい行軍であり、今すぐにでも足を止めてしまいたかった。それでもなんとか休みながらでも目的の小学校にたどり着くことが出来た。

 だが、その小学校も混沌の最中であった。まだ警官が到着できていないため体育館が解放されておらず、避難してきた住民は運動場に待機していた。また、避難してきた住民を統制し、落ち着ける役割を担える人材もおらず、すでに住民同士でトラブルも起き始めていた。


 周りの喧騒を聞きながら、由美は不安感で胸がいっぱいになった。由美は今までの人生で心理的な安全を最優先に生きてきた。争いを避け、決断を他人に任せ、その結果起きたことの責任はその人に背負わせ、チャレンジすることなく決められたことをこなしてきただけであった。それこそ就職し、自由も金もあるはずなのに実家を出ようとしなかったのはその表れであった。そのため、今回のようなどうしようもない不安には彼女は非常に弱く、精神がショートする寸前であった。


 そうしていると、隣にいた中年女性から話しかけられた。


「ねえ、その子、あんたの子でしょ。さっきからうるさいんだけど。」彼女はそういうと自分の胸元を指さした。


「す、すみません。」彼女はそういうとさっきから泣き続けていた隼人を紐から外し、抱きかかえてあやし始めた。まだ生後3か月にも満たない隼人。やっと首が座ってきたところだ。この子のことをすっかり忘れていた。彼女は少しばかり慣れた手つきで隼人をあやし、女性から距離を取った。隼人は今まで振り回されるように扱われてたことがつらかっただけなのか、比較的すぐに落ち着いた。彼女はホッとすると同時に再度不安で心がいっぱいになった。


 自分はどうしたらいいだろうか?彼女は今ほど健太にそばにいてほしいと思ったことはなかった。


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