第45話 避難所の戦い 第1作戦3
この作戦の成功は偏に田上と下田にかかっていた。第2の作戦ではかなり大きな音が出る可能性が高く、体育館の扉を閉めることが出来なければその音で他の怪獣を呼び寄せることになるのは確実であった。
田上と下田はともに24歳の男で、高校卒業と同時に警察官として就職した。元々K市の別々の地区に住んでいたため同じ学校に通っていたわけではないが、お互いに短距離走の選手であったため面識はあった。
警察学校で再開したときにはじめて言葉を交わしたが、10カ月同じ場所で苦楽を共にするうちに仲良くなっていった。
田上は兄弟が多く、社交的、下田は母子家庭で育った一人っ子であり寡黙であり、あまり性格的には合っているとは言い難かったが、逆にそれがよかったのか2人は特にトラブルを起こすようなこともなくうまくやれていた。
田上は実家があまり裕福ではなく、下の兄弟がまだ5人いるため早い就職を望み、安定した収入の見込める警察官になることを決めた。
下田は母親が仕事を二つ掛け持ちしながら自分を高校まで行かせてくれたのを見て高卒で就職することを決め、田上と同様に安定した収入を理由に警察官への就職を決めた。下田は頭がよく、勉強もよくできたため母親は大学まで進学することを望んでいたが、下田本人がそれを拒否し現在の道に進んだといういきさつがあった。
二人とも身体能力は高く、正義感もあり、この仕事は非常にあっていた。二人は別々の部署に配属されたが、市警内で2人ともかわいがられており、人間関係もよかった。
怪獣がまだ体育館にいるときに、警察官たちはオペレーターの助けも借りて作戦を詰めていた。この作戦において最も危険なのは誘導役であり、そして成功のカギを握るのもこの誘導役であった。
当初この作戦が立案されたときに最初に立候補したのは田上であった。当初は賃金のためにこの仕事を選んだのだが、生まれ持った性格、兄弟たちの面倒を見ていたことや警察官として市民と触れ合ううちに彼の心の中では人々を守ることへの強い使命感が芽生えていた。
次に志願したのは下田だった。彼は田上ほどの使命感は持っていなかったが、避難している住民の中には母がいた。自分のことを寝る間も惜しんで育ててくれた母、自分のことを考えて大学に行くことを勧めてくれた母、まだ恩返しをできていない母。そんな母を彼は大事に思っており、偏に彼女を守るため立候補をしたのだった。
警察官の中には彼らのような若い、将来がある者が危険な作戦に従事するのを反対し、役を変わろうとしたものもいた。だが、この2人以上に速く走れるものもいなく、2人が体育館の方に走った後にも誘導役は必要なため結局最初のおとりは彼らが務めることとなった。




