第37話 崩壊
中央監視部はおおよそ4都道府県を1か所で監視しており、全国に約15か所設置されている。自衛隊、および予備自衛官の志願者などで運用されており、少ない人数ではあるが24時間の全国の監視を実現していた。
これら中央監視部では自動検知されたアラームを確認、目視にて出現した怪獣を確認。それが誤報でないかを判断したのちに怪獣の総数、分類などを最寄りの警察、基地に送信。その後監視部は通常の監視業務に移行し、警察、自衛隊が作戦行動に移行するプロトコルで運用を行っていた。しかし、今回はアラームがひっきりなしに鳴り続いており、その時監視部にいた人員は大慌てで確認を行っていた。すべてのアラームはK市のもので、ほとんどが同じ山岳を監視しているカメラからのものだった。先ほどK市で出現したカマキリ型の怪獣と同系の怪獣が1匹1匹と山岳から進行してきていた。その数はどんどんと増え、目視では数えるのが難しいほどとなっていた。
解散しかけていた司令部がその報告を聞き、唖然としているところ、部隊はすでに撤収の準備を開始していた。武器をトラックに積み込み、部隊員を2台のトラックに分乗、その他の装備も収納し終わりあとはトラックを発進させるだけとなっていた。その時、まるで地面が揺れるような轟音が遠くから鳴り響いてきた。
「おい、何の音だ?地面がゆれてるみたいだぞ?」前のトラックの助手席に乗り込んでいた隊長がいぶかしむ?
「わかりません。いや、隊長、あれを見てください。何かが、何かが迫ってきています!!!」
すでに日は沈んでおり、おりしも今日は新月であったため遠目では何かの影が遠く山岳の方向に見えるだけであった。だが、その影が思ったよりも自分たちに近く、さらに想定以上の速度でこちらに進んできているのを理解するのにそれほど時間は必要ではなかった。
それを認識し、隊員がトラックを発射させる段階になって司令部から何が起きているかの報告があった。先ほど倒した怪獣が数百体出現し、人口が多い地域に向かって進行し始めていると。それを聞いた隊員は急いでトラックを発進させ、住宅地を自分たちの出せる最高速度で走りぬけようとした。
「くそ、早くしろ!!追いつかれるぞ!」
「わかっています。あと二つ曲がれば大通りです。つかまっていてください!」
もとより入り組み、走りにくい住宅街であったうえに、市街地の中心部から遠い山岳地帯に近い部分で作戦を実行していたため、大きな道路に出るのには時間が必要であった。それに対し怪獣の群れは自分たちに対してまっすぐと進んできており、追い付かれるのは時間の問題であった。
角を曲がり次の道、角を曲がりさらに次の道へと進み、あと少しで大通りに出る直前、後ろについていたトラックが角を曲がり切れず塀にぶつかってしまった。
「おい、止めろ、助けるぞ!」隊長は助手席のドアを開けようとした。
「何を言っているんですか!!つかまっていてください!」
前のトラックに乗っていた隊員たちは思わず助けに行くことを考えたが、運転手は独断で撤退を継続した。彼はアクセルを踏み込み、車が一台も走っていない大通りを駆け抜けていった。
そして、この判断のおかげで彼らだけは助かることが出来た。
停止したトラックの人員は全員無事であった。全員がトラックから降り、逃走を開始しようとした。だが、その時にはすでに遅く、目の前に怪獣の群れが波打つように迫ってきていた。虫虫虫、先ほど駆除した怪獣が数えきれないほどいる。比較的小さいもの、先ほどと同じ大きさのもの、鎌が片方かけているもの、頭部が一部欠損しているもの、様々な大きさの怪獣が自分たちに向かって進行してきていた。塀をなぎ倒し、家の壁を砕き、最終的に家を倒壊させ、そのがれきにつぶされながらも下から這い出し先へ先へと進行してきていた。
その光景を見た隊員たちは狂乱し、腰に備えていた小銃でやたらめったらに怪獣たちを打ち始めた。しかし、このタイプの怪獣には小銃は全く無効であり、怪獣たちの進行速度もまったく下げることが出来ない。サブマシンガンやアサルトライフルはトラック内に収納されており、取り出せば使用できたが、冷静さを失った隊員たちにはどうしようもなかった。そして、仮にこれらの武装が使用できてたとしても、それは焼け石に水であっただろう。
トラックの衝突から数分、隊員たちは狂乱し、各々思う方向に走り始めた。だが、すべてが遅すぎたのだ。怪獣の鎌で突き刺される隊員。全身に熱した金属を流されたかのような、鋭い痛みが走り何も考えられなくなる。刺された部位から走る神経の悲鳴に脳がショートする。ただただ痛みを超えたなにかで目の前が真っ白になる。かろうじて見えるのは何かとがったもの。それが近づいてくる光景だけ。この痛みを終わらせてくれ、そう願う彼らに近づくのは怪獣の鋭い顎だった。
こうして、彼らの命はついえたのだった。




