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第33話 女の話7

 2人は結婚の挨拶から1週間後には引っ越しをし、同棲を開始した。


 健太は表裏のない男で、表情から感情を読み取るのが容易かった。適当な態度をとっていると勝手に解釈をして、勝手に動いてくれる。それこそ、昨今世間を騒がせている異常な生物のニュースを見ているときに不安そうな表情をしていたら励ましながら日常の感謝を伝える。きりっとした顔つきをしていたら不安そうな表情を見せ、あなただけが頼りだということをほのめかす。それだけで驚くほどこちらにのめりこんできた。

 正直な話、健太といるのは楽しかった。人柄もよく、誠実。何よりも感情が分かりやすく操作がしやすい。こちらがちゃんと行動をすれば、思った通りに動いてくれていた。


 子供に関しては、正直妊娠してから生むまでに不安があった。子供が生まれた時に愛せるのか、愛さなければならないのか、自分があの女のようにならないかと、悩んでいる間におなかは大きくなり、いつの間にか出産まで至っていた。

 出産は本当に大変で、陣痛が来るたびに妊娠したことを後悔したが、その後悔をしっかりと反芻する暇もなく次の陣痛が来て、やがて何も考えられなくなっていた。そうしているうちに子供が生まれ、大泣きしながら喜んでいる健太や健太の両親をみてどうでもよくなってしまった。


 生まれてから今までの3か月は嵐だった。これにくらべれば激怒している亡き父などは大したことはなかったと今では思う。


 2時間おきに隼人の泣き声で叩き起こされ、眠れない夜を過ごし、いつのまにか出ている朝日を拝んだら健太を家から送り出す。2時間おきの授乳をしながら家事をしているといつの間にか夕日が見えている。そして帰ってきた健太の相手をしているとまた眠れない夜が始まる。何かを考える暇もないし、昔考えていた色んな事も今は頭の中に浮かび上がってこなくなってしまった。

 昔健太の両親が里帰りか、手伝いのための泊まり込みを提案してくれた時に断ってしまったが、今では後悔している。またあんな気持ちになりたくなくて、顔を合わせたくないと思ったのだ。健太には最初の子供だから二人で苦労しながらでも育てようなどと説得し、納得してもらった。

 でも、こんなに大変なら自分の気持ちなど二の次だ。次の機会には迷わず頼ることにしようと思いながら、なんとなくつけていたテレビを消し、食器の片づけをしに立ち上がった。


そんな時だった。けたたましいサイレンが街に鳴り響いたのは。


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