第26話 死にゆく者の仮説
目を閉じて、意識が温かい無意識の海に沈み始めた時、ふと今まで疑問に思っていたことが海の底から急浮上するように意識に上ってきた。
なぜ世代が下がるごとに遺伝子変化が増加していくのだろう?これについては世界中の学者が様々な仮説を立てているが、どれもパッとしない。陰謀論として宇宙人が遺伝子を改変しているのだと主張する者がいるくらいだが、まだそう考えた方が説得力があるのも確かなのだ。世界中の様々な動物が同じ方法で遺伝子の変化を起こしている。それがしかも世代を経るごとにだんだんと変化が強くなる。これなら世界中の生物を改造している黒幕がいるといった方がまだ納得がいく。
そこまで考えるといつもなら馬鹿馬鹿しい話だと切り捨てて、考えをほかのことに考えを移すのだが、今日は違った。仮に黒幕がいるなら何が目的なのか、どこで何をしているのかを考え始めた。目的は?仮に黒幕がいるなら従来の生物を改変する理由はなんだ?人類への攻撃?まったくわからない。
また、黒幕はどこにいるのか?仮に黒幕がいるなら黒幕は世界中に遺伝子改変を行う工場や研究所でも持っているのだろうか?それとも遺伝子の改変を行えるウィルスなどを散布しているのだろうか?ウィルス仮説は現状最も有力な候補であるが、しかしそのようなウィルスの存在は現状確認されていない。確かに元々の生物には存在していない遺伝子片が見つかることは世界中で報告されているが、一つのウィルスを成り立たせるほどの遺伝子構造の報告はなく、ウィルスの存在の証拠というのにはあまりにも乏しいのだ。
またそのようなウィルスがいるとしても、どこが発生源かがわからない。大体こういうウィルスは局所的に発生し、それが世界に広がることがほとんどで、調べると何かきっかけがあるものだ。やはりありえないだろう。そう思うと再度眠りにおちようとする。だが、ふと一つ疑問が浮かび、それに対する自分の知識を組み合わせていくと一つの可能性に気がついた。
彼は鉛のように重い体を少し起こし、ソファーで眠っているプリヤに声をかけ、メリーアンをここに呼ぶように伝えた。




