第24話 死にゆく者の今1
そして彼は今病院のベッドの上にいる。彼をむしばんでいたのは腎癌であり、大学で診断を受けたときにはすでにステージ4、様々な臓器への転移を完了し、そのままでは余命わずかな段階であった。
そこから彼は懸命に戦った。信じられないという気持ち、信じたくないという気持ちを飲み込み、毎日眠る前にやってくる死への恐怖に耐えながら、つらい化学療法に耐え、手術にも耐え、放射線療法にも耐えた。眠れぬ夜には狂乱し、プリヤを心配させ、彼女に慰められながら朝日が昇るまで過ごした日もあった。この年になって涙が止まらなくなり、彼女の膝にうずもれながら眠った日もあった。彼女は常に自分を励まし、いつもと変わらぬ笑顔で接してくれた。ずいぶん彼女を苦労させてしまったことが今では恥ずかしいくらいだ。本当に感謝している。
そして治療が進むにつれ、元々小柄な体はみるみるやせ細り、階段を上るのも一苦労となった。主治医からは骨折のリスクがあるため杖を突けと言われ、杖に頼って歩いていた。自分に死が迫っているという事実を受け入れるのはつらく、弱っていく自分を毎日鏡で見るものつらく、そして何よりまだまだ研究したいことがあるということもつらかった。
ある程度抗癌剤を使用したころだろうか、主治医から抗癌剤が効果を表し、腫瘍が小さくなっていることを聞いた。とても嬉しかった。本当に嬉しかった。主治医にも感謝の言葉を伝え、家に帰り、プリヤとともに泣いて喜んだ。だが、病魔は彼をとらえて離さなかった。
体調がよくなった気がして、杖を使わずに歩くようになってしまっていた。そしてある時に転び、歩けなくなり大学病院に運び込まれた。結局のところ、元の腫瘍は小さくはなっていたが、新たに癌が大腿骨に転移、転んだ際に骨折してしまったのだ。手術を受けねば二度と歩けないと聞き、手術を決意。運び込まれてから3時間後に行われた手術は無事に成功し、今こうしてベッドの上で寝ているのだった。




