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第19話 夢

深い海の中を、ただひたすらに落ちていくような感覚があった。暗く、日の光の届かない、無明の闇の中を落ちていく。自分の体が四肢の先からほどけていくように溶けていく。自分がどんどんと小さくなり、考えるのに必要な部分以外はなくなっていく。そのうちに自分は頭脳だけになったかのように感じたが、それでも自分の崩壊は止まらなかった。考えをまとめることが出来なくなる。ただ感じることを感じて、それに反射で対応するしかできなくなる。自分はまるでたった一個の、原始的な細胞になってしまったかのようだった。


 ふと、今まで自分の内側に向けていた意識を外に向けてみる。すると、無明の、何も存在していないと思っていた空間に無数のうごめく何かを感じた。大きさも、動く速さも違うなにかが空間の中を無数に動き回っていた。自分の周囲から感じる膨大な数の存在に圧倒されていると急に、何か息苦しいような感覚を覚えた。苦しい。どこかに逃げなければならない。でもどこに?自分の内から湧き上がるような感覚に戸惑いながら、彼女はどこに逃れればよいのかを判断するため周囲を探る。

 その時、自分の近くをひときわ大きな何かが通るのを感じた。なぜかはわからないが、そこに飛び込んでみれば大丈夫なような気がした。決断の早い彼女はその動く何かに向かって飛び込んだ。抵抗、柔らかいが、ぴんと張られた布を押すような感覚がしたのちに、抵抗がなくなり、温かくとても快適な空間に飛び出した。先ほどの息苦しさも消え、まるで自分が大きくなっていくような感覚を感じた。もうこれで安全だ。

 そうして、いくらかの時を過ごしていると、急に周りに壁が迫ってくるように感じた。何か危ない気がする。彼女は急いで壁を押し、飛び出した。再度抵抗を感じたのち、外に飛び出したがそこは元の息苦しい空間であった。再度自分を襲い来る息苦しさを感じながら、彼女は次に飛び込むべき空間を探していた。

 

 そのようなことを何度も繰り返しているうちに、突如彼女をすさまじい熱と光が襲った。言葉にできないほどの熱と目がないはずなのにまぶしいと感じるほどの光。もし目が存在していたら、今頃光以外の何も見えなくなっていたであろうほどの光量を全身で感じていた。

 とても短いが、彼女にとっては長い時間がたったのち、彼女は自分がまだ存在しているのを感じた。先ほどの熱や光がなんだったのか、まったく理解できないがおそらく危険は去ったのであろう。しかし、そうしているとまた息苦しさを感じた。今度の息苦しさは今までのものとは違い強烈で、しかも自分の内側から湧き出てくるようであった。どうにかしないと。彼女はそう思うと再度周りを探した。今までと違い、周りに動いているものはほとんど感じられず、彼女は息苦しく、いつもよりも重く感じる体を動かし自分の求めるものを探しに行くことにした。

 

 それほど長くない時間がたった後、彼女は今まで感じていたような動く何かの存在を再度感じた。もう息苦しさは耐えられないほどに悪化している。すぐに飛び込まなくては。彼女は今まででもっとも素早く飛び込んだ。今度の抵抗は弱く、すぐに飛び込むことが出来た。そこは今まで入ってきていた空間ではあったが、今までほどには快適ではなかった。まだ息苦しいし、何か自分がどんどんおかしくなっていく予感があった。何かしなくて。彼女はそう思うと今まで気にもしていなかった空間の内側を探ってみた。何かある。もしかしたら、今の自分ならこの空間をもっといいものにできるかもしれない。漠然とした、自分の内側から湧き上がってくる感覚、自分ならそれが可能だという感覚をもとに、彼女はその空間の中を移動し始めた。

 


 突如、現実に引き戻すように電話の音が鳴った。彼女は夢から覚め、まだ重く、鉛のように感じる体を動かし電話を取った。


「はい、ブラックウェルです。プリヤ、どうしたの、こんな時間に?え、アミットが?わかった、すぐに行くわ。」


彼女はそう言うと電話を切ってから立ち上がり、顔を洗ってから服を着替え、部屋を後にした。

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