第110話 残された者たち2
ロンドンについた後、討論した結果、実際の論文が発表される前に英国怪獣対策委員会の名で世界中に彼と私の仮説を発表したのだ。反響はすさまじく、そこから1か月はメールが山のように飛んできて処理ができないほどだった。
そしてその1か月の間に、世界中で追試となる実験が行われ、私たちの仮説がおそらく正しいということが確認されてしまったのだ。
私たちが今直面している事件は、ほんの小さな微生物によって引き起こされていたのだ。先月の国際怪獣対策会議において、怪獣達を「Gigantus」という用語をつけて命名することに決まった。それに伴い、この微生物はG細菌と呼称されるようになっている。このG細菌は生物の内側に潜み、その生物を改造して怪獣にする。しかも、まだ人間に対して感染したことはないが、いつ感染できるようになるかがわからない。そして、もし感染したら、その時私たちがどうなるのかもわからない。私たちも怪獣になってしまうのか?それとも適応できずに死んでしまうのか?
今は何とか対抗策がないか、この微生物を絶滅させる方法がないかを探しているが、どれほどの時間がかかるかもわからない。この3か月で世界中の都市が襲撃を受けていて、大学や調査機関がいくつも被害を受けている。研究力の低下は間違いなくあるし、各国の予算を軍に回さざるをえないことになっている。今世界は怪獣の攻撃を防ぎつつ、ミクロの世界から進行してくるG細菌にも手を回さないといけないのだ。
彼女はそう思いながら、プリヤに挨拶をしてから離れ、一人窓から外を眺めていた。自分で大丈夫だろうか?本当に人類を救う助けになれるのだろうか?彼女はそう思いながら、振り続ける雨を見続けた。