第99話 選ばれた女4
1時間ほどたったとき、外でヘリコプターの音が聞こえた。すでに軍隊が出動し、怪獣の駆除作戦を実行するらしいとは聞いていたが、思った以上に怪獣が近くにいるようだった。だが、その音を聞いていると段々とこちらに近づいており、建物のすぐ外で音がしているような感じすらした。
そして、その音がかなり近くで聞こえるようになってから数分で避難所の扉が開かれ、3人の軍人が入ってきた。その軍人は何か通信をしながら避難所にいた警官と話、その後声を張り上げてしゃべり始めた。
「ミス・ブラックウェル。ミス・メリーアン・ブラックウェルさん、いらっしゃいませんか。いらっしゃったらこちらまで来ていただけないでしょうか?」彼は見た目に反して綺麗な英語の発音で自分の名前を呼んだ。
「はい、私がブラックウェルです。どうされましたか?」メリーアンは立ち上がり、軍人達の方に歩み寄る。
「ああ、あなたが。確かにそのようですね。我々は英国怪獣対策委員会の依頼を受けあなたを保護しに来ました。今から街の反対側にいる怪獣の駆除作戦が実行されます。だが、その作戦はあなたを無事に回収してから実行されることとなっています。我々に同行していただけませんか?」その軍人は彼女に理由を告げた。その後ろの軍人は何やら通信をして、自分を確保したことを報告しているようだった。
「でも・・・わかりました。私たちのラボメンバーは連れて行ってくれませんか?」彼女は事情を理解し、ダメもとで聞いてみる。おそらくさっき行った発表を聞いた対策委員会のメンバーが自分を保護するように掛け合ったのだろう。だが、自分だけというのは気が引ける。
「申し訳ございません。我々が指令を受けたのはあなたの保護だけですので。」軍人は表情を変えずに答える。
「いいのよ、メリーアン。行ってきて。多分教授会のプレゼンテーションのことでしょ?私たちは大丈夫だから。また余裕が出来たら連絡して。」後ろからついてきていたスージーが自分を促す。
その言葉を聞いたメリーアンは心を決め、軍人についていくことを了承し、彼らについてヘリコプターに乗り込んだ。