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第185話 手配書

 それにしても、さっきの変な人形を抱いた少女は何だったのだろう。


 僕はギルドのある王都南へ向かう途中、王城の門前でのいざこざを目撃した。

 貧民らしき少女が門番に殺されそうだったので助けたが、冷たくあしらわれてしまった。


 僕にとっては初めて会う同世代の少女だ。これがライトノベルなら、僕のヒロイン最有力候補だ。

 最近のラノベでは奴隷ヒロインというのが流行(はや)りらしい。でも僕としては王女様系ヒロインのほうが好みだ。


 外で少女が落ち着くのを待つか迷ったが、お腹が空いているというのもあって、ギルドへ向かうことにした。

 あれが僕のヒロインならまた出会うことになるだろうし、もしかしたら真のヒロイン、シミアン王家の王女様と運命の出会いを果たすかもしれない。

 いまどきのラノベはフラグなんてお構いなしで主人公の都合のいいように物語が展開するものなのだ。


 ギルドに到着した僕は、さっそく掲示板の方へ足を向けた。

 この世界では、運搬依頼などの一部のクエストを除けば、身分を証明したり登録したりせずともクエストを受注して達成すれば報酬を受けられる。

 僕みたいな異世界召喚されたばかりの者に優しい仕様となっているのだ。


 ギルドの掲示板は大きく二つの領域に分けられていた。

 白いボードのほうは依頼書板だ。

 一般個人や企業、組合などから出される依頼で、失せ物探しからイーター討伐までさまざまである。

 もう一方の青いボードは手配書版だ。

 これは主にシミアン王家に属する組織、軍隊や警察機構から発行されるもので、イーターの討伐や犯罪者の捕縛、時には凶悪犯の殺害が貼り出されることもある。

 この手配書版のほうは受付で事前に受注せずとも、達成してから証拠とともに手配書を受付に差し出せば受領される。


 僕は白いボードと青いボードに貼り出されている依頼書と手配書にひととおり目を通した。その中で僕の気を引いたものが二つあった。

 一つは白いボードに出ているハリグマ討伐の依頼書だった。報酬は二十万モネイ。

 相場としては一モネイが一円と換算できたはずだから、あのハリグマを倒せば二十万円の報酬が得られることになる。

 そして僕はそのハリグマを先刻倒したばかりだ。

 だが残念なことに、報酬をもらうためには倒した証拠を提示しなければならない。獣型のイーターであれば頭部を提示する必要がある。

 当然ながらハリグマの死体はその場に放置してきており、僕はハリグマ討伐の報酬を得ることはできない。もしかしたら誰かがハリグマの死体を見つけて頭部を切り取って報酬をかすめ取っていくかもしれない。

 しかし僕にはそれを(とが)める権利はないのだ。ちゃんと依頼書で条件を確認してから討伐するのが筋なのだから。


 僕の気を引いたもう一つは、青いボードに貼られた手配書だった。

 そこに書かれている特徴は、先ほど僕が助けた少女そのものだった。白いブラウスと紺色のワンピースを着たブロンドヘアーで第三王女を真似た格好をしている。

 王家名(がた)り。王家の者の名前を使って王家の者に成りすまそうとすることはシミアン王国において最も重大な犯罪である。

 手配金額は五百万モネイ。つまりあの少女を捕らえて王家に引き渡せば、五百万円の報酬を得られるということだ。

 なお、末尾に生死問わずと書かれている。


 僕はあの少女を追うことにした。

 あのときは横暴な門番に(しいた)げられる弱者にしか見えなかったが、まさか王家の名前を騙る重罪犯だったとは知らなかった。(だま)された気分だ。

 事情を知らずに勝手に助けたのは僕だということは分かっている。軽率だった。彼女を僕が逃がしてしまったということは、僕が犯罪の片棒を担いだに等しい。

 僕があの少女を助けたことは彼女しか知らないはずだが、少なからず正義感のある僕には後ろめたさがまとわりついた。

 半分は責任感、半分は正義感。その隙間に少しだけ報酬への欲求を挟み、僕は犯罪少女を追うためギルドを出発した。


「行こう、アンダース。もしかしたら、まださっきの場所にいるかもしれない」

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