表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/19

降り続く、雨

 一葉くんが私を抱き締めたまま、動かない。


 

 心配をかけてしまって申し訳なかったが、これ以上はさすがに恥ずかくなってきた。



「一葉くん……あの……」


 私が声をかけると、慌てて一葉くんが手を離した。


「あ! ごめんっ!」


 一葉くんが真っ赤な顔をしている。

 いつもかわいい顔をして笑うのに見慣れていたので、こちら迄つられて顔が赤くなってしまった。



 私は何とか気まずい雰囲気を変えようと話題を探していると、先に一葉くんが切り出してくれた。




「黒い靄に取り込まれるほど、悲しい事があったの?」



 その言葉を聞いて、私は靄に取り込まれる前の事を思い出した。


 

 弦太くんは生きているが、まだ動けないでいること。

 その彼が、何故か満月さんの婚約者になったこと。

 満月さんの父親に会ったこと。

 お守りだったネックレスを取られてしまったこと。

 その直後に黒い靄に飲まれたこと……。



 思い返せば、悲しい事だらけだ。

 

 

 何から話せば良いのかわからない。

 私はギュッと口を噤んた。



「……無理はしないで。 眠れないかもしれないけど、今はしっかり休みなよ」



 私の顔を見て何かを察したのか、そう言って一葉くんは、私の頭を撫でた。



 すると、その拍子に心が少し解れたのか、口にしなくない、でも一番聞いて欲しかった言葉が零れ出た。



「……弦太くんが…………」


「弦太がどうしたの?」


「弦太くんが、満月さんの『婚約者』になったって…………」


「え……?!」

 


 やっと吐き出せた言葉に吊られて、目から涙も溢れてきた。 




 堰を切ったように泣きじゃくる私を、一葉くんは隣りで頭を寄せて宥めてくれた。




「今は泣いていいからね。 落ち着いたら、また話聞かせて?」



 そう言って、しゃくり上げる私の頬を撫でて、涙を拭ってくれた。



「でもお母さんが心配するから、程々にね」



 少し困った顔で笑う一葉くんを見て、申し訳なくなって唇をギュッと噛んだ。




 それでも涙は止まらない。

 止め方も、わからない。


 思い出がバラバラの欠片になって、心に深く突き刺さる。



 雨が止まない。


 すっかり心が冷えて、私は動けなくなってしまった。


 



 


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ