9月7日 まさか(感覚)
予行演習までに、完全に仕上げないとな。俺は、楽しみながら、今日も走っていた。
ー9月5日ー
気がつけば、俺はクラウチングスタートをしていた。俺は、何をしているのだろうか?ふと我にかえってしまう。斜め前にいる片山は、綺麗なスタートクラウチングスタートの姿勢だった。俺とは、全然違う。本当に大丈夫だろえか?"位置について"。スタートの合図をおくるのは、陸上部の生徒だった。響く生徒の声に、俺は、さらに深く沈み込んだ。"用意"。俺は、息を吐く。地面を掴む指に力をこめ、静寂を打ち破る瞬間を待った。"スタート"。張り詰めた空気を一気に変わった。俺は力強く走り出した。足が地面を捉えた瞬間、このグラウンドを歩くかのように動き出している。俺の心臓は、太鼓のように胸を叩きつけていた。なんだろうか、この感覚は。これまでの練習では味わえなかった感覚だった。耳には自分の呼吸音しかない。俺の視界には、片山しか見えない。それなのに、橘や橋本の声は聞こえてくる。なんとも不思議な気持ちだ。前を走る片山の走るフォームは綺麗としか言いようがなかった。さすが、陸上部。てか、速く追いつきたい。俺は、片山の背中を見ながらそう感じていた。第1コーナーを曲がり、俺は第2コーナーへとさしかかっていた。片山との距離は縮まらない。このままじゃダメだ。俺は、自分に言い聞かせるように必死に速く走るように体に指令をおくる。こんなことで、変わるわけがない。力を入れすぎたのか、片山との距離が少し離れていくのが自分でもわかってしまう。第二走者の橋本は、既に準備をしているのだろうか?"もっといけ!!"。俺の耳には、橘の声が入ってきた。懐かしいな、この感じ。以前も聞いたような感じだ。俺は、遠くなる片山の背中を見ながら、追いかけていく。第3コーナー付近に来た俺は、第二走者の橋本が準備しているのが目に入った。おそらく、この距離だと追いつけない。俺は、少し諦めかけていた。ただ、次の橋本に少しでも短い距離を縮めるに走らないと。陸上部は、片山から、二宮へと渡る。バトンを待つ橋本は、精一杯俺の方に腕を差し出してくる。俺は、橋本にバトンを渡す瞬間、掌に伝わるバトンの冷たさを感じていた。脳内は、片山から遅れをとっていたこともあり焦っていたが、体はその焦りを感じず走っているような感覚だった。




