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6月26日 聖淮戦8

 俺は、あの日の侑大がなぜ、あの発想を思いついたのか気になっていた。カバンに、グローブとユニフォームを入れながら考えていた。


 ー6月19日ー


 試合は、7回裏、1死1.2塁の終盤場面。打席には、侑大が入った。俺は、ネクストバッターサークルから、侑大を見守った。

 そういえば、侑大のバットがいつもと違うことに気がついた。先ほどの打席までは、金色のバットを使っていたが、この打席は、銀色。なぜだろう?俺は、よくわからないでいた。初球インコースにきたボールを見送った。ストライク。

 俺は、ベンチを見ながら、サインを確認した後、いつも侑大が使っていたバットがどこにあるか見渡した。侑大のバットは、ビールケースに他のバットと一緒に入っていた。

 2球目は、再びインコース低めにきて、ボールとなった。侑大は、サインを見た後、ちらっと俺の方を見た様な気がした。マウンド上の淮南口の湯浅の背景には、青い空に綺麗な雲が見えていた。俺が侑大のバットを見つめる中、迎えた3球目。外角低めのストレート。侑大は、バットを振らず、キャチャーの方を見た。審判は、手をあげ、ストライクを示した。

 侑大が、なぜバットを変えたのかはわからなかったので、考えることを諦め、どういう形で俺に打席が、回ってくるのか?を考えた。このまま2死1.2塁で回ってくるか、ランナーを進めた2死2.3塁で回ってくるか、あるいは、1死満塁で回ってくるか。どちらもチャンスで回ってくる可能性が高い。俺は、バットをより強く握りしめた。

 俺があれこれ考えている中、4球目が投げられた。あっ!思わず声が漏れた。俺は、侑大が持っていたバットが示す意味に気がついた。侑大が、あのバットを持っていたのは、4月頃のティーバッティングだ。「俺だったら、この銀色のバットは使わないな」。そう言っていたことを思い出した。それと今の状況を照らし合わせると、"俺は、バットを振らない"ということか?

 俺が、再び、グラウンドを見ると、侑大は、バットを振っていなかった。しかし、湯浅が放ったボールは、ストライクゾーンに入っていた。審判は、3球目と同じポーズをとり、侑大は、バッターボックスから戻ってきた。

 俺と侑大がすれ違う際、「頼んだぞ」。さらっと話してきた。なぜ、侑大は、全くボールを振らなかったのだろう?バッターボックスに立つと、監督のサインを見た。その時、ベンチ最前線に、ヘルメットを被り、バットを握った永谷が立っていた。俺の後は、3番橋本、4番川中、5番佐伯の3人だ。この3人の中で代打で出される様な人はいないはずだった。

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