8月5日 淮南高校戦8
俺は、グローブを段ボールの中にしまい、一階に降りた。
ー7月29日ー
せっかくのチャンスを潰したが、湯浅の打球をとり、再び流れにのろうとしていた。この後も、お互い点が取れず8回まできたのだった。しかし、この回、淮南高校打線が繋がる。5番南がセンター前ヒットで出塁。すかさず、6番山名が送りバントでランナーを進塁させる。続けて、7番長尾も送りバントを、成功させツーアウトランナー3塁となる。8番新内がファーボールをとり、ツーアウトランナー1.3塁という状況になった。俺は、ポジションを少し下げて、ピッチャーの田中を見つめていた。このピンチを守り切れば。そんな淡い期待が俺の中にあった。
9番湯浅。打席に立つと湯浅は、とても堂々としているように見えた。俺は、盗塁が起きても動けるように、ややセカンドベースよりのポジションに立っていたのだった。マウンド上にいる田中は、とても疲れている様子だ。向こうの監督のサインを見て、バッターボックスの湯浅が頷いた。ツーアウトだから、打つ以外はないと思うからさほど気にしていなかった。問題は田中のボールがどれだけ通用するかだ。さっきの打席も、ヒットになってもおかしくなかった。セットポジションに入り、キャッチャーの橋本のサインに頷いた。俺は、足を動かしながら、田中が投げるのを見つめた。
田中は、左足を上げ、グローブを上げる。右腕から初球のボールが投げこまれた。あっ、、、、。まさかの変化球だった。さっき投げた球と同じゾーン。インコース高めだ。湯浅も思い切りバットを振り抜いた。
バットに当たったボールは、金属音とともに左中間に飛んでいく。レフト、センターともに捕れないことがわかったとともにスタンドから大きな歓声が上がる。少しあっけにとられたが、慌ててレフトとセンターを追いかけるように走り出した。
レフトとセンターは、ボールを必死に追っていく。ダメだ、これは。三塁ランナーが帰り、さらに大きな声援が聞こえてくる。へたしたら、一塁ランナーも帰ってくるんじゃないか?早く、早く!!大きな声を出して、レフトの早川、センターの侑大に圧をかける。しかし、これ以上、早川と侑大はボールを追うことはなかった。俺は、ボールの行方を見つめた。 スタンドの声がさらに大きくなり、レフトの早川が膝に手をついているのがわかった。俺も走るのをやめて、ショートの定位置に戻っていくことにした。ゆっくりと、2塁ベースを回る湯浅が誇らしかった。




