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日常で世界を変える(八幡編)  作者: mei


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7月20日 練習試合(群馬北高校戦)7

 部室に入ってみると、長野県予選のトーナメント表が貼られていた。おそらく、これをしたのは橘か橋本だろう。


 ー7月14日ー


 人生で初めての3打席連続三振。俺は、ショートのポジションから退いた。あまりの不調の打線に、監督は苛立ちを見せ始めた。ショートには、田中。サードには、早川。キャッチャーには向井が入る展開に。

 ベンチからみんなの姿を見るのは、すごく久しぶりだった。なぜ、打てなかったのか。たしかに、いいピッチャーだったけど、手も足も出ないということはなかった。しかし、結果はこのザマだ。

 俺は、ベンチに退いた橋本ともに応援をしていた。聖徳高校のピッチャーは、田中から葛西へと変わっていた。葛西は、高校から野球を始めたこともあり、なかなか試合に出ることはなかった。野球やサッカーを高校から始めるという選択肢はなかなかない。それなのに堂々と練習をして試合に出ようとしているなんてスゴイとしか言いようがなかった。

 葛西は、180cmを超える身長でパワーが持ち味の選手だった。もともとは打者としてファーストを希望していたが、打者としての成功は難しいと判断をされて、ピッチャーへと転向を示唆されたのだった。当時、葛西と監督が話をしているのをみたことがあった。普段は物静かな葛西だったが、あの日ばかりは、頑なにピッチャーの打診を断っていたのが印象的だった。

 試合に出場できる確率が上がるならどっちでもいいのにと勝手に思っていた。でも、葛西はそうじゃなかった。監督は、話をするもなかなか聞き入れてもらえない状況を見て、言ってはいけない一言を放ってしまったのだ。"お前を打者としての戦力とは見ていない"。葛西は、かたまって何も言えないでいた。

 職員室の近くで聞いていた俺は、今すぐ声をかけたくなっていたことを覚えていた。しかし、いつも、試合に出ている俺の言葉を聞いた葛西はどう思うのだろうか?そう思うと一歩が踏み出せなかった。

 俺は、両手をギュっと握りしめて葛西の様子を見守った。そして、最後に"ピッチャーやります"。そう告げて、職員室を後にしたのだった。俺は、葛西が通り過ぎるのを見てから、監督の方を目にやった。監督は、どこか重荷がとれたような表情をしていた。

 それはそうだろう。いくら生徒とは言え、できないものはできないし、できないことをできると言ってしまったら生徒のためにならない。そんなことをしないといけない監督は意外と残酷なんだなと初めて気づいたのだった。

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