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目が覚めたら魔王だった。  作者: 川蝉 良和
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「魔王様、我ら愛しの魔王様。御気分は如何でしょうか」

「………」


片膝を付いた褐色の青年は真生に伺う。


「まお、では無くまおう・・・?」


美しい声はどこぞの声優養成所から派遣されました?と問いたくなる程の美声だ。

すらりと伸びた四肢は膝をついていてもどこか凜とした空気が漂い洗練されている。

真生は現状を把握する為、身を乗り出し青年に声をかけた。


「あの、ここ…って…どこ、ひぃっ!?」


質問しようと恐る恐る声をかけた刹那、褐色の青年は目をカッ!と開き真生を見上げたのだ。

眼力が強すぎて思わず小さな悲鳴が出てしまったのは致し方ない。


「なんと、なんと美しい我が君の御声……、しかと…しかと!心の録音機に記録させて頂きました!!っあぁ!!申し遅れました愛しき我が君、私はダークエルフのアーベント・フィア・エンデと申します。どうぞ、どうぞ下僕とお呼び下さい・・・っ!」

「見た目と行動のギャップが凄い」


見た目は通りすがりの人100人中余波で300人は振り向くだろう美しく涼し気な青年の、何か耐えるように発する言葉の半分も真生は理解が出来なかった。否、したくなかったのだ。

この人見た目に反してやばいと、瞬時に判断を下した。

とりあえず、と小さく溜息を落とす。


「これ、夢?」


1番有り得るだろう事を呟きながら頬をつねった。

その刹那。


「夢ではありません、魔王様」


1人の青年が片膝を付き発した。

艶やかな黒髪に意志の強そうな深い青の瞳が真生を見上げる。

どちゃくそのイケメンだった。


「顔面国宝……」


あわわと口元を抑える真生に青年は気にせず言葉を続けた。


「お初にお目に掛かります魔王様。俺の事はエルガーとお呼び下さい」

「エルガーさん」

「敬称は結構です。魔王様は魂の無い状態で深い眠りにつかれておりました」


その言葉に真生は疑問を持つ。

何故なら先程目を開けるまで自身はポストを開け一通の手紙を見ていたのだから。

眠りも何も無いのだ。


「エルガーさん、あの」

「敬称は結構です。敬語もお止め下さい」

「・・・すみません、慣れてきたらそうします」


初対面の相手に対し、急に友達口調と呼び捨てが出来るわけが無い。

ましてや相手は敬語で話しているのだ。真生は呼びタメ歓迎派では無かった。


「私、先程まで地球・・・っていう星があるんですけど、そこの日本という国にいたんです・・・が・・・」


言いながら真生は思う。物心が付いた時からあった違和感。その今までの違和感が無く足りない部分が補われた感覚。そして何よりも帰ってこれたという安堵。

彼等が人とは異なる姿で〝まおうさま〟と発するのは恐らく〝魔王様〟である事。

その言葉を理解でき、それらを不快に思わず、受け入れているこの状況から導かれる答えは一つだった。


「チキュウ・・・その様な星は御座いません。勿論ニホンと仰る国も。魔王様は約100年の間、異界の狭間に魂を囚われていたのです」

「囚われていた?」

「はい、異界の狭間は様々な事象が起こると言われています。そして囚われていた魔王様の魂をこちらに呼び戻すべく、俺が術を施しました」

「じゃあ私が過ごした小学校・・・は流石にうろ覚えですけど、中学や高校、大学に会社・・・この記憶は?」

「それについては僕がお答えしましょう」


ふわりと音もなく降り立ち、片膝付く男性。

漂う色香にお前は無限フェロモン製造器か?と問いたくなる程だ。


「愛しの我が君、お初にお目に掛かります、吸血族のテネス・イェン・タークンと申します。どうぞ、テネスとお呼び下さい我が君」


手を胸に添え少し垂気味の瞳で真生を見上げる。

蜜のような甘い声とパチンと音がしそな完璧なウィンクを贈った。


「顔が強い」

「我が君は魂の休息、をご存じでしょうか」

「いえ、知りません」


初めて聞く単語に真生は素直に首を横に振るった。

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