食指 五人の境目
結構だよと俺は言ったんだ
聞いてないだろう 要らねぇって言ったんだけど
何でお前は粘るんだろうなと思ったんだ
ええとさ あんたは俺が欲しいんだな
何で俺が良いんだろうな
ガンジャいる? 要らない ああそう じゃ、俺だけ
何だったかな
あれか 何か誰か倒してどうとかいう話か
そもそも分からないんだよ どうしてここ来たんだ
なんか飲むか
ウォッカとラムしかねえよ
俺はね 金もねえんだ
あんたの話だと 金なんかどうでも良さそうだよな
まぁ飲んで良いよ
ラムはコーラが良いけどな ウォッカは熱いコーヒーでも酔えるんだ
コーヒーならあるから・・・お前さん 骨だけど飲めるの?
話を聞いて理解する
俺の部屋のオレンジ色の電球の下で
俺は 動物染みた骨がローブを被ってる奴と 話している
そいつの用件は 一緒に来いってよ
何で俺なの と聞いたんだ
俺は無職みたいなもんでさ
流行りの病で仕事は全滅
市役所に言い訳して税金逃れるようなちっぽけな塵みたいな存在だよ
なのにね
この骨の奴は『世界を取ってみるか』ってな
本気で言うんだ
ああ結構ですよと 俺は扉を閉めたかった
俺は右手にガンジャ 左手に酒のマグカップ
頭はモウロウ・・・でもないけれど 通常じゃないとは自覚した
でもそいつは粘るんだよ
だって俺の目の前でさ 俺のカウチに座ってんだよ
俺が出したマグに入った 湯気立つコーヒーにウォッカ入れてな
それを骨の顔で飲んでるんだ
どうやって飲むのって思うけど 飲んでる
骨の指は器用に変な擦れる音を立てて マグカップを掴んでいて
『どうする。今しか聞かないぞ』
だってさ・・・・・
無理だろって薄ら笑いのこっちを 影しかない骨が見ている
「あのね。世界はどこだよ。ここ取る気かよ」
『世界が一つしかないと思っているのか。馬鹿なやつだ。お前はここじゃないんだよ、他に居場所があるのに』
ただ
俺は『バカじゃない』と言いたかった
俺がバカで 仕事も出来ないと思われるのは 嫌だった
今は仕方ないだけで・・・が言えない人生の底辺
俺は
俺は違うんだ 情けねえ見栄を張りたかったのかも
骨は笑ったんだよね
『ここ?お前はこんな場所で終わりたい』それはそれで って
マグカップはその後
台所の流しに戻らなかった
俺とそいつのカップは カウチ横の小さい椅子に並んだ
俺は明かりを消す暇がなかったかも
だから
誰に別れも言えなかったよ
俺の体は立ち上がり炎に巻かれ 骨の奴は唸った
「おいおい。世界を牛耳るんだろ。正邪半々はよせよ」
俺の体は その後も真紫の炎に包まれて――
『良いだろう。それでも』
だそうだ
俺は
こいつの切り札に