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外伝 神と勇者

勇者の成り立ちです

 帝国が隆盛を極めたある日。

 エイトブリッジに魔王が降臨する。

 詳しい事は伝わっていない。

 分かってくれるのは、街の全ての魔族が突然、暴れ出し、人間が死に絶えるまで一晩かからなかったという事。

 魔王とその一団は、そのまま南下、ワーグリ帝国、帝都を目指す。

 途中の街の人間を殺し、魔族を麾下に加えながら。

 帝都では、数千の大群に膨れ上がった軍勢を、数万の精鋭が迎え撃ったという。

 結果は、人間の壊滅。

 時の皇帝を含む、数十人が逃げのびた他は、全て死に絶えた。

 一説によれば、魔王たちか、都に辿り着く前に、皇帝と、その側近は逃げ出しており、その際、国民には脅威の接近を一切伝えなかったという。

 大陸で最大勢力である帝国の国と軍が滅んだ。

 もう、魔王を止めるものはいない。

 魔王は無軌道に大陸中を移動。

 人間を殺して回る。

 河南に生きた人間はいなくなる。

 河北には、まだ生きていた。

 ローアンの国王は、初手から交戦を拒否。

 国民と共に逃げに逃げた。

 魔王の移動速度がゆっくりなのは幸いであった。

 しかし、いつまでも逃げ続ける事も出来ない。

 食糧が尽きる。

 魔王たちは、食事を必要としない。

 睡眠もとらない。

 家族単位で逃げていた人間は、一組、また一組と数を減らす。

 魔王たちが、手分けをしても追いかけていたら、人間はとうに滅んでいただろう。

 しかし、魔王たちの前に、四人の若者が立ちはだかる。


 神・クリアムは、不機嫌だった。

 眼下には四人の人間。

 何故、これらが、ここに辿り着いたのか。

 天使たちは、何をしていたのか。

 「で?何の用?」

 四人の頭の中に直接響く声。

 しかし、男たちにその意味は、分からない。

 様々な言語で、一度に話しかけられたように感じた。

 不思議な空間だった。

 闇に満たされているのに、何処までも見通せる。

 頭上には、巨大な白い魚の様な存在が、浮かんでいる。

 彼らは、クジラを知らないので、それを魚の様なものと認識するしかない。

 その威容と威厳。

 神に違いない。

 「貴方が神さまですか?」

 「だから、何?」

 応えても、きょとんとしている。

 余計に苛立つが。

 「ああ、そうか、ごめん、ごめん。つい、普通に喋っていたよ。君たちに合わせてあげないといけなかったんだ」

 そっちが、勝手に来たのだから、言葉くらい分かれとも思うが、神の使う言葉を、ただの人間に理解しろというのも無理な話。

 「そう。僕が、クリアム。君たちの言う神様さ」

 今度こそ、明瞭な言葉が、男たちの脳裏に響く。

 「貴方にお会いすれば、願いを叶えていただけるというのは、真実でしょうか?」

 「うーん。それなんだけど、どうして、そう思ったの?」

 クリアムは、不思議だった。

 確かに、神の決まり事の中に、管理下にある生命体と面会した際、その願いを、可能な限り叶えなければならない、というものがある。

 しかし、彼らがどうやって、それを知るのか。

 「そう伝承に記されております」

 つまり、クリアムの欲しい答えは持っていない。

 「あと、君たち、どうやって、ここまで来たの?邪魔されなかった?」

 「いえ、『扉』をくぐれば、ここに直接。そういえば、『扉』は何処へ?」

 見渡しても、何もない。

 空間的に隔絶された、この場所に直接、来ることが出来る?

 そんな技術が、人間にあるはずはない。

 神であるクリアムには出来るが、天使にも出来ない。

 まず、天使たちの普段過ごしている空間を経由しないと、ここに来る事など出来ないはずなのだ。

 疑問だらけで、それに答える者はいない。

 苛立つ。

 それに、今、人間が、ここに来て、願うことといったら、一つしかない。

 魔王の排除。

 これだろう。

 せっかく、作ったのに、廃棄しないといけない、というのは業腹だ。

 「まぁ、いいや。願いがあるんでしょ?早く言いなよ」

 「では、魔王をなんとかしていただけないでしょうか?」

 何とか!

 殺せとか、排除しろではなく。

 何とかしろ?

 「ん?んー?何とかね?」

 「はい。人間が滅ばないよう…」

 「いや!分かった!何とかしよう!」

 余計な事を言われる前に話しを進めよう。

 人間が滅ばないように、魔王を何とかすればいいのなら、排除する必要はない。

 「でもね、幾ら神だからって、生き物を勝手に殺したりは出来ないんだよ。それは理解してね」

 確かに、魔王だけを狙って殺す事は出来ない。

 しかし、周りの被害を考えなければ、幾らでも方法はある。

 地割れを起こし、生き埋めにするのが、一番、早く、簡単か。

 だが、それはしたくない。

 だから、少し嘘を混ぜた。

 これで、魔王を殺せとは言わないだろう。

 「人間が滅ばないようにすればいいなら、魔王を封印するとかならどうかな?」

 「はい。それで人間が助かるのなら」

 「じゃあ、君、ちょっと目を瞑って」

 先程から話しをしている男に指示する。

 他の三人より、魔力の保有量が多いので適任だろう。

 「君に魔王を封印するための、術式を教えたよ」

 確かに、男の脳裏に知らない術式がある。

 魔法使いである男は、しかし、その術式を理解して、疑問を持つ。

 「しかし、これでは…」

 「ん?何か問題があるかい?」

 「確かに、魔王が人間を殺すことはなくなるでしょうが、それだけではありませんか。魔王が魔族に人間を殺せと命じることができるのであれば、意味が無いではないですか!」

 授けられた封印の術は、他者を害する事を禁じる効果しか無い。

 しかも、何者かに害されようとすれば、それだけで解ける脆弱な封印。

 「それに、配下の魔族に己を傷つけよと命令すれば、それだけで解けてしまうのでは意味がありません!」

 「ああ、そうか。君たちは、あれがどういうモノなのか理解していないんだね」

 クリアムは、説明する。

 「あれは、人間を殺すか、自身を護るしか出来ないモノなんだよ」

 さて、何処まで話すか。

 「まずはこれ」

 男たちの目の前に、紅く輝く宝石が現れた。

 「これは魔血魂といって、いろんな力を増幅する物なんだ」

 そう言われて、それを触ろうと手を伸ばすが、宙を切る。

 幻だ。

 「現物は、魔王の中だよ。それを、ある魔族が体内に取り込んでしまったのが、事の発端さ。

 本当は、手に持つなりして、使う物なんだけど、間違った使い方したからに暴走しているんだ。

 一番、まずいのは、感情まで強化した事だね。

 人間を怨む心がさ、強化されちゃって、心がそれでいっぱいになっちゃったんだ。

 タチが悪いのは、それが石の方にも影響した事なんだけど、それは後で説明しようか。

 もう一回目を瞑って」

 目を閉じた男の脳裏に、今度は幾つもの青い光が見える。

 「魔王を感知する力をあげたよ。本当はこの距離からでは感知出来ないんだけど、今だけ僕の力で出来るようにしてる」

 「この光、一つ一つが魔王という事ですか?」

 「その通り。魔血魂を取り込んだ魔族は、人間に復讐するにはどうするのがいいか考えたんだ。

 その結果が、魔族を束ねて、協力する事だったんだね。

 中央に、一際大きな光があるのがわかるかい?

 それが魔血魂を宿した個体だよ。

 面倒だから、本体と呼ぼうか。

 本体から線が伸びて、他の光と繋がってるだろう?

 その小さな光、一つ一つが魔族。

 魔王と繋がる事で、みんな霊的、霊ってわかる?わからない?じゃあ、魔法的に同一の存在になってるんだ。

 だから、一人が見た物は、みんなが見てるし、一人が考えた事は、みんなが考えた事になる。

 あれは、全部合わせて魔王なんだよ」

 「では、端の一人を封印すれば、全体を封印出来るのですか?」

 「いいや。そう簡単にはいかないね。

 もしも、それをしたなら、端から全体に封印が行き渡るまでに、接続を切ってしまうだろうからね。

 弱りはするだろうけど、それだけ。

 だから、封印は本体に施すべきだよ。

 それなら、接続を切られた方は、魔王ではなくなるからね」

 「では、大勢の魔族を切り抜けて、魔王を封印出来る距離まで近寄る必要があるのですね?」

 それは、不可能ではないか?

 「その通り。でも、ただ切り抜ければいいという事でもないんだ。

 今、魔王は青い光に見えるだろう?

 それは、魔王が十全な事を表しているんだ。

 それでは封印をかけようとしても弾かれてしまう。

 弱らせる必要があるんだ。

 でも、本体の戦闘力は、人間が敵わないほどに強化されている。

 じゃあ、どうするか?

 答えは簡単。

 周りの魔族を殺せばいい。

 そうすれば、無理矢理接続を切られた衝撃が、本体を弱らせるし、魔族の方に残った力が本体に帰れないから。

 光が赤く変わったら、封印可能の合図だよ。

 本体を封印すれば、封印の影響を最小限にしようとして、接続を切るから、ある程度の魔族は魔王じゃなくなるからね」

 どちらにせよ無理ではないか。

 「それでね、君にはもう『魔王感知』をあげたから、新しい力をあげる事は出来ないけど、あとの三人には、戦いの為の力をあげようと思うんだけど、どうかな?」

 実は、四人来たのなら、四人分の願いを叶えないといけないのだが、面倒なので、こちらから提案した。

 「いや、でも、俺なんかが、どんな力をもらったとしても役に立たない…」

 男の一人が、そう言った。

 その男は、背こそ四人の中では一番高いが、丸々と太っていて、鈍重そうで戦いには向いていなさそうだ。

 彼は、目端が利き、手先が器用であったので、所謂、盗賊としての役割を担っていた。

 「うーん。でも、君は、目がよさそうだから、これなんかどうかな?」

 男の目の前に、『く』の形をした、金属でできた道具が現れる。

 男がそれを手にすると、その脳裏に、それの情報が送られてきた。

 銃。

 その扱い方、威力、動作の仕組み、製造方法。

 その全てを、一瞬で理解する。

 「これなら、俺でも戦えるかも…」

 しかし、懸念が一つ。

 「でも、これでは六回打つごとに弾を込め直す時間がいる。それじゃあ、魔族の大群を相手にするのは無理なんじゃ…?」

 銃は、六連装の回転式。

 「だよね。だから、おまけで特殊能力をあげよう」

 『空の一撃』。

 空の銃倉から弾丸を撃つ。

 その銃で撃ったことのない弾は撃てない。

 撃った銃弾が着弾するまで、次は撃てないなど、制限はあるものの、銃の理を捻じ曲げる技である。

 「これなら、何とかなるんじゃない?」

 「確かに」

 自分一人では、それでも無理だろうが、仲間がいる。

 「ん、君はそれでいいね。次、君は何か希望があるかい?」

 戦士然とした男に声をかける。

 「自分は、折れない剣が欲しいです」

 どんな武器も、数を相手にすれば、刃こぼれや、歪みを起こし、その性能が落ちる。

 果ては、折れて使い物にならなくなる。

 「うん、なるほどね」

 クリアムは、男の意図を汲んで感心した。

 男は、継戦力を求めたのだ。

 それは、つまり、武器さえもてば、戦い続ける自信があるということ。

 「でもね、不滅の存在というのは、なかなかに難しいものなんだ。だから、こんなのはどうかな?」

 戦士に力が与えられる。

 『それは刃物(ザ・カッター)

 その手にしたものは、全て鋭い切れ味を持つ刃物になる。

 「その能力のいいところは、ただ、万物を武器にできるということじゃなくて、一時的にでも不壊の能力を与えることなんだ。

 だって、そうでしょう?

 例えば、豆腐、豆腐は知ってる?白くて、柔らかいヤツ。

 豆腐を刃物に変えたとして、それで切りつけたらどうなる?

 豆腐が柔らかなままだと、相手が傷付く前に壊れちゃうよね?

 でも、この力のお陰で、壊れずに相手を斬れるんだ。

 もちろん、手に持っている間だけで、手を放せば壊れるんだけどね」

 それで十分だと、戦士は満足した。

 残る一人は、一行の中で、一番、がっしりとした体格をしていた。

 武具を帯びていないので、拳士の様に見える。

 「君は、何がいい?」

 男は、迷わずに答える。

 「私は、人々を癒す力が欲しいです」

 男は、医師であった。

 「え?いや、魔王をなんとかするって話しでしょ?」

 「はい。しかし、私に戦う力は不要です。

 例えば、瞬時に怪我を治す力があれば、万一、仲間が傷付いた時に、それを治して、戦いを続けてもらう事ができます」

 失敗した。

 男は、『瞬時に怪我を治す』と具体的に指定した。

 適当な医療の知識を与えてお茶を濁す事は出来なくなってしまった。

 しかし、『空の一撃』も、『それは刃物』も、継戦力を重視した能力。

 この男の求める、治癒の力も、それと同じかもしれない。

 尽きぬ弾丸。

 折れぬ剣。

 壊れぬ肉体。

 肉体の方は、壊れても治るが、正確だが。

 そう考えると、治癒の力を与えるのも悪くないと思えてきた。

 面倒くさいが。

 「ん、うーん。分かった。君には治癒術、『ヒール』を与えよう」

 ただ、これは、世界にない力である。

 銃は、現在、発明されていないだけで、それが存在する為の理自体はあるし、『空の一撃』も『それは刃物』も、元からある理を操作するだけなので問題がない。

 しかし、『ヒール』に関しては、全く新しい理なので、色々と設定しなければならない。

 『ヒール』を導入する為には、ある一つの『ヒール』を選んで導入するのではなく、全ての『ヒール』を導入した後、発動しない『ヒール』を設定する必要があった。

 面倒なので、それはしない。

 人間の、才能のある者にだけ使えるという設定はした。

 みんながみんな使えることになると、世界が混乱する。

 「相手に触れる必要があるけど、どんな怪我も一瞬で治す術だよ。

 でも、使う時には、色々設定しなきゃだから、気を付けてね。

 じゃないと、反動で大変な目に合うからね」

 『ヒール』の説明を始めた。

 まず、一言に『ヒール』といっても様々な種類があること。

 指定せず『ヒール』を発動させると、全ての『ヒール』が発動しようとすること。

 その際、発動条件を満たさない『ヒール』は発動しないこと。

 発動に際して代償や反動がある『ヒール』があること。

 代償の必要な複数の『ヒール』が発動した場合、その全ての代償を払う必要があること。

 『ヒール』の中には、正確には、相手を完全な状態にする術というものがあり、その使用にあたっては、完全な状態を定義する必要がある、など。

 「お勧めは、日に十回しか使えないけど、相手の怪我は全部治るし、何の代償もいらないやつかな。

 相手を走査して、健全な状態まで時間を巻き戻すやつもいいかも」

 それは神だから何の問題もなく使用できる物であって、人間の脳に、相手の全ての情報が瞬間的に送り込まれれば、頭痛を誘発するのだが。

 「もし、複数の『ヒール』をかけた場合、相手に害は無いのですか?」

 「うん。基本的には大丈夫。怪我を治すものだから、無くなった怪我はそれ以上、治りようがないよね?

 ただ、設定によっては過剰な反応が起きる事もあるから気を付けて」

 「承知致しました。素晴らしい力を授けてくださり、有難う御座います」

 頭を下げる。

 感謝されるのは、気持ちがいい。

 「あのね?一度封印したら、それで終わりじゃないからね?」

 「それは、いったい、どういう…?」

 「えっとね、封印された本体は、それをどうにかしようと力を溜め始めるんだ。魔族との接続を順番に切って、本体に力を回収するんだよ。

 それでも、封印は解けないんだけど、本体の体の方が力に耐えられなくて、崩壊を始めるんだ」

 「それなら、何の問題もないのではないでしょうか?」

 魔王が死ぬということだろう。

 「問題はあるよ。

 魔王は、自分が死ぬ前に、その力を継承させようとするんだ。

 魔血魂が正常なら、問題はないかもだけど、話したよね?

 魔血魂が、怨みによって歪んでいるって。

 それによって、次の魔王も、初めの魔王と同じ様に人間に対して敵対するんだ」

 「魔血魂に染み付いた怨みに、次の魔王が支配されるということですか?」

 「その通り。

 まあ、魔王が崩壊を始めるまで、数十年はかかるけど、それでは君たちも困るでしょ?

 二代目は、もしかしたら君達が生きている間に代替わりして、君達で対処できるかもだけど、三代目以降は、無理だよね」

 そして、提案。

 「君達の力を、勇者の力として設定して、魔王の崩壊に合わせて、その力を受け継いだ人間が産まれる様にしてあげよう」

 四人の手の甲に、紋章が浮かび上がる。

 紅い炎の様な形の中に『ゆ』の文字。

 この文字は、平仮名というもので、クリアムの先輩神の世界の文字だ。

 丸っこく、可愛らしいので、彼のお気に入りの文字である。

 「その紋章を持つのが、勇者の証ってことね。

 今回は、僕が直接、授けたからみんな同じ場所にあるけど、次からは違うからね」

 そして、いくつか指示を出す。

 まず、魔王の封印が成功したら、大陸南端の山に安置すること。

 『魔王感知』を授かった者は、大陸北方に国を作り、魔王に対抗する為に軍備を整えること。

 その国の嫡子にのみ、『魔王感知』は受け継がれること。

 『魔王感知』の応用で『勇者感知』も使えるようになるから、それで残りの三人を探すこと。

 『感知』の範囲は、初め狭く、歳を取る毎に広くなっていくこと。

 生まれた時から、ハッキリと紋章があるのは、『魔王感知』の継承者だけだが、受け継いだ力は、生まれた時から使えるので、それらが使える者がいれば、国に迎え備えること。

 二代目魔王からは、できる限り、軍をもって当たること。

 その時、継承直後だと、支配する魔族が少なく、力を削ぐことが難しいので、ある程度、魔王の勢力が大きくなるまで手を出さないこと。

 実は、これらの指示は人間を思ってのことではない。

 魔王と人間の軍を戦わせることで、人間の数を減らそうという意図がある。

 魔族も減るが、こちらには生命の実がある。

 魔王の継承を邪魔するように、何処かへ幽閉してはいけないのかなど、疑問を持たれては困るので、指示を出し終わって直ぐに『扉』を開く。

 「さあ!分かったら、もう行きなよ。じゃないと今も人間は死んでいるんだから」

 幾つかの疑問は持ちつつも、言われた通り、戦いに赴く四人。

 「健闘を祈るよ」

 四人を見送った神は、はたと気付く。

 「治癒の子だけ、勇者としての特別な力をあげてないや」

 他の三人は、勇者として、次代に引き継がれる能力があるが、『ヒール』が使えるということは、その才能が必要であるとはいえ、特別なことではない。

 「『ヒール』が使えるのは、勇者だけにしてもよかったかな」

 しかし、もう設定してしまった。

 これを撤回するのは、手続きが面倒だ。

 「まあ、いいや」

 即興で噓を吐いて、自分の思うように持って行けた。

 幾らか失敗もした気もするが、まあ、満足のいく交渉だったと思う。

 天使を呼び、魔王と勇者に関して、指示を出す。

 後は、この天使が上手くやるだろう。

 果たして魔王は封印された。

 術の勇者は、ローアン王国の姫を娶り、王からその地位を禅譲される。

 その際に、国号をオグラシアンと改める。

 治癒の勇者は、エイトブリッジを拠点として、人々を癒すことに人生を費やした。

 後の二人の消息は杳として知られていない。


次も外伝です

その次から、スカーレットの過去か、キヤルの過去の話になる予定です

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